最終話は、聖徳太子の晩年の伝説と、静かな最期についてのお話です。
613年、太子が片岡山を通った際、道端で飢えと寒さに倒れている旅人を見つけました。太子は深く哀れみ、自分の食べ物と着ていた紫の衣を与え、歌を詠み交わしました。旅人は翌日亡くなり手厚く埋葬されましたが、数日後に太子が墓を確認させると、死体は消え、畳まれた衣服だけが残されていました。「あの者は聖人に違いない。聖人を知るのは聖人である」と人々は太子をいっそう敬いました(のちにこの旅人は達磨大師の化身であったと伝えられます)。
そして622年、太子は49歳で病に倒れます。死を悟った太子は「世間虚仮、唯仏是真(せけんこけ、ゆいぶつぜしん=この世のあらゆるものは虚しく仮のものであり、ただ仏の教えだけが真実である)」という深い言葉を残し、愛する妃とともに静かに息を引き取りました。
数々の伝説と理想を遺し、駆け抜けた49年の生涯。聖徳太子の志は、今も日本の歴史の中に生き続けています。