米国公認会計士で、日本を拠点に翻訳・通訳を提供する安田 奈々さんに、帰国子女から見た日本の英語教育、上達を実感した経験、AIや機械翻訳、“刺さる”英語、日本で英語力を保つ方法などについてうかがいました。 安田 奈々 Nana Yasuda iProfess翻訳事務所代表。米国公認会計士。8歳までイギリス在住の帰国子女。 最初に就職した日本のベンチャーキャピタルで、高い専門性や語学力を持つことの重要性に気づく。その後15年にわたり日米の監査法人で会計監査、海外M&A、国際会計基準IFRSの導入支援に従事し、英語×会計のニッチなスキルを磨く。未来の働き方の一つとしてフリーランスに着目。2014年に独立してiProfess翻訳事務所を立ち上げ、会計監査に特化した翻訳・通訳を一部上場企業や監査法人に提供。モットーは「刺さる書き言葉・話し言葉」。 一男一女の母。趣味は、英語プレゼンTEDの視聴と、学校ボランティアで絵本の読み聞かせをすること。夢は、人生の英知を子どもたちに伝える学校を作ること。 iProfess翻訳事務所 Emi 自己紹介をお願いできますか? Nana はい。私はiProfess翻訳事務所という会計財務に特化した翻訳・通訳の会社をやっています。会計財務に特化している理由は、私がアメリカで5年、日本で10年、あわせて15年ほど監査法人でずっと会計や監査の仕事をやっていたためです。その間に、「英語と会計の両方を使える人というのはなかなかいないんだ」とわかり、3年前に独立しました。 Emi 翻訳事務所をやっていて、アメリカの公認会計士でもいらっしゃる。ご専門の会計の知識を生かした翻訳を提供している? Nana はい。もともとは翻訳からスタートしたんですけど、最近は通訳の依頼もすごく多いです。会社ならCFO*のような会計のトップや監査法人などから、「会計を知っていて通訳ができる」ということへの需要が増えています。 *Chief Financial Officer:最高財務責任者 Emi 会計をベースに翻訳をスタートして、現在はさらに通訳も。「日本語から英語に」「英語から日本語に」の両方向とも担当する? Nana 基本的に「日本語から英語」です。英語に訳す方を得意としているというか、それに特化するようにしています。 Emi 比較的少ない「日本語から英語」で、さらに会計の専門知識がある。二重に希少な翻訳・通訳者ですね。 Nana 「英語×会計」ができる人は少ないけれど、それでもやっぱりできる人はいる。「本当に自分にしかできないことは何だろう?」ということを特に意識するようにしています。 Emi プロフィールにも「ニッチなスキル」とありますが(笑)、そのニッチさがどんどん増していってる感じですね。 Nana そうそう(笑)。考え方はいろいろあると思います。「広くいろんなことを知っている」というのも、もちろんすごく素晴らしいこと。勝負の仕方もいろいろある。でも、私の場合は、自分にしかできないエリアを突き詰めていくスタイル。どんどんニッチな方に行くように意識してます。 最初は日本語がしゃべれませんでした。 Emi ではそうやって現在、翻訳・通訳者として英語を使っている奈々さんが、いちばん最初に英語と出会ったのはいつどこでですか? Nana たぶん最初の私の母語が英語だと思います。3歳から8歳まで、親の仕事の関係でイギリスのロンドンにいたので、「いちばん最初に言葉として覚えたのが、英語じゃないかな」という感覚があります。 Emi 本人としては「日本語より先に、英語を使い始めた」という印象を持っている? Nana まさにそんな感じです。8歳のとき、小学校2年生で日本に帰ってきたんですけれど、そのときは日本語がしゃべれませんでした。相手に言われていることはわかるんですけど、日本語で答えられないから英語で答える。イギリスにいたときから、親に日本語でしゃべりかけられても全部英語で返していたので、その状態がわりと長く続いていたように思います。 Emi ご両親から日本語で話しかけられても、奈々さんは英語で返していた。「3歳から8歳」というと幼稚園や小学校に行く年代ですが、そこには日本語を使う環境がなかった? Nana ないですね。イギリスと日本では学年の進み方が違うので、帰国したとき、日本では2年生ですがイギリスでは4年生だったんです。イギリスに行った3歳のときには、もしかして1年くらいは幼稚園に行ったかもしれないけど、たぶん4歳ぐらいからもう普通に小学校での勉強が始まりました。ローカルの学校だったので、その中で日本語の環境というのは親と接するときぐらいしかありませんでした。 あと、そうだ。土曜日に日本人学校に行ってたのを覚えています。 Emi 小学校は、現地校といわれるイギリス人の子どもたちが行く学校。それと週末の日本語補習校に通っていた。補習校で、ある程度日本語には慣れていた? Nana 慣れていたし、言われていることはわかるんですけど、使えないという感じでした。補習校では、「自分がクラスの中で、本当にできない子だった」というのをすごく覚えています。だから行くのがすごく嫌いでした。 Emi ロンドンにいる他の日本人の子たちと比べると、日本語が苦手だった。 …
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