腰の据わった女が振り向きざまに言う。「ふん、だらしないねぇ。あんたそれでも男かい?」(cv.一城みゆ希)
そう言いながらいつも彼女は、疲れて俯く僕を待ってくれた。
昔好んで彼女と山を登っていたのは、少しでも多くの事を彼女から学び取りたかったからだった。
山のような女とはよく言ったものだ。彼女ほど泰然自若とした人間にはこの先も僕は出会うことは無いだろう。
あの鷹のように鋭い双眸に、はたして僕はちゃんと映っていたのだろうか。
「ヤマノススメ」。
彼女が残したその言葉だけが今も僕を山へと向かわせる。
完。
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