オーディオドラマ「五の線」

33,12月20日 日曜日 17時12分 金沢駅


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はくたか13号が金沢駅に進入してきた。時刻は17時12分。到着時刻は17時13分であるから定刻通りだ。
東京から北陸までの電車での道程は一般的に新潟周りの路線が選択される。
東京から越後湯沢までは上越新幹線。その後特急はくたかに乗り換える。
はくたかに乗り換えてしばらくして、雪のため運行ダイヤが乱れるかもしれないとの車内アナウンスがあったが、日本の交通インフラは世界に冠たるものだ。
電車は金沢駅のホームに滑り込む。最終的には一分の狂いも無く金沢に到着することができた。
学生風の若者は携帯音楽プレーヤーのイヤホンからシャカシャカと音を漏れさせながら、窓からホームの様子をのぞき込んでいる。
ビジネスマン風の男はおもむろに携帯電話を取り出しどちらかにメールを送っている。この車両乗降口に直江はいた。
彼が立つ3両目と4両目の連結部の乗降口には彼を含めて三人の男が立っていた。
ひとりは疲れたスーツを着たサラリーマン風の男。もうひとりは直江とともに金沢にやってきた高山であった。
電車が止まり、ドアが開いた。人気のないホームにアナウンスが響く。
「終点金沢、金沢です。お忘れ物のないようにご注意ください。ご乗車ありがとうございました」
直江と高山はサラリーマン風の男の後に続いた。二人は無言のまま改札口まで向かった。金沢駅の改札口は有人であった。
改札を抜けると目の前に駅ナカのコンビニが見えた。
「直江さん、腹減りませんか。」
「そうだな、あそこで何か買ってホテルで食うか。」
そう言うと二人は駅の構内の隅に陣取ったコンビニに入り、弁当とお茶をもってレジに並んだ。直江が先に会計を済まし高山が続く。
二人は駅の外に出ると身を屈めた。12月の金沢の夕風が二人の体を冷たく包んでいた。
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オーディオドラマ「五の線」By 闇と鮒