10.28.2022 - By 笹川日仏財団
ドビュッシーが『海』の作曲を始めてから初演に至るまでには、三年という長い時間が費やされました。 海からは遠く離れた、ブルゴーニュ地方の妻リリーの実家で作曲を開始。直後、パリに戻ったところで裕福な銀行家夫人と出逢い、たちまち恋に落ちて、ジャージー島、ノルマンディと、海の近くに旅立ちます。 パリに戻ったところで、リリーの知るところとなり、彼女はなんとコンコルド広場でピストル自殺を計ります。未遂に終わったものの、親しい友人たちの多くはドビュッシーのもとを去って行った、と。 第二曲の水面を吹き抜ける風を思わせる流麗な音の流れに比べて、第三曲目の荒々しい海を思わせる曲想は、そんな周りの状況が微妙に影響しているかもしれません。
【出演】中田昌樹(指揮者)
【演奏】クロード・ドビュッシー作曲『海』第3曲「風と海の対話」 準・メルクル/指揮、フランス国立リヨン管弦楽団/演奏
イントロ&エンディング ドビュッシー『小さな黒人』 江澤隆行
【提供】笹川日仏財団