ごみらじ

8 天空の浄化槽、あるいはコンクリートの箱庭にて(芝浦中央公園にて)


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ごみらじは12月1日から「存在としての公園(旧現象のラジオ)」内で配信されます。ぜひ番組フォローしてください!


ああ、見よ!この足元に広がるのは大地ではない!

ここは人工の皮膚、都市の排泄物を飲み込み、清らかなる水へと昇華させる巨大な臓器の上だ!

芝浦水再生センター、その無機質な胎動の上に、我々は立っている!

頭上を圧するのは、天を突き刺すような摩天楼の群れ!

百階層の巨人たちが、全方位からこの小さな緑の聖域を見下ろしている!

逃げ場などない!

この閉塞と開放が同居する奇妙な谷間で、いま、一つの時代が幕を下ろそうとしているのだ!

「ごみらじ」――それはゴミを拾うという行為を借りた、魂の巡礼であった!

だが今日、この最終回において、運命は皮肉なシナリオを用意した!

見よ、この美しすぎるアスファルトを!

塵ひとつ落ちていない潔癖な空間が、私のトングを無力化する!

拾うべき罪がない!

世界はこれほどまでに清廉潔白だというのか?

否! それは拒絶だ!

「お前の出番は終わったのだ」と、都市が私に宣告しているのだ!

さらに、我が肉体を襲う悲劇を語らねばなるまい!

先週の多摩川、あの呪われた石畳の上で、私は重力に敗北した!

川を渡るという些細な冒険が、左肘という蝶番(ちょうつがい)を破壊したのだ!

痛みはまだそこにある!

骨が軋み、神経が叫ぶ!

ゆえに私は自転車に乗ることすら許されず、ただ鉄の塊を手押し車のように押して歩く!

右手にトング、左手に自転車!

拾うゴミもなく、乗る力もなく、ただこの摩天楼の谷底を彷徨う亡霊のように!

五時のチャイムが鳴れば、この公園は閉ざされる!

鉄格子の中に閉じ込められる恐怖と戦いながら、私は出口を求めて歩き続けるのだ!

だが聞け! 魂の叫びを!

私は所有という概念に唾を吐く!

人々は家を買い、車を買い、植物を買い、その重みに押し潰されていく!

愚かな!

なぜ気づかない?

世界は認識一つで、すべてがお前のものになるというのに!

あの川に棲む亀たちを見よ!

誰が育てたわけでもない、捨てられた命の成れの果てかもしれぬ数十匹の亀!

だが、私が「あれは我がペットだ」と認識した瞬間、あの川は我が巨大水槽となる!

徒歩数分のコンビニエンスストア?

笑わせるな! あれは我が家の巨大冷蔵庫だ!

電気代も管理も不要、必要な時に必要な分だけを取りに行けばいい!

この公園のバラ園も、手入れされた植栽も、すべては私の庭!

私が散歩し、愛でるその瞬間、ここは私だけの領土となる!

所有せずして支配する!

これこそが「思い込み」という名の最強のライフハック、精神の錬金術なのだ!

かつて私は、中間管理職という名の地獄を見た!

上からの理不尽と下からの突き上げ、その狭間で魂を摩耗させた日々!

責任? 組織?

もうたくさんだ!

私は誓った、二度とあの檻には戻らないと!

もし今、私の手に十億円という黄金が舞い込んだとしても、私の魂は変わらない!

豪邸? 高級車?

否! 断じて否!

私が望むのは、ただ「時間」という名の贅沢!

平日の昼下がりにサウナで汗を流し、読みかけの本に没頭し、気の向くままにギターを掻き鳴らす!

そして、今日のように公園を彷徨うのだ!

金では買えない「退屈」という至高の宝石を愛でながら、ただ生きていく!

それが私の勝利、それが私の復讐なのだ!

ああ、それにしてもこの街は騒がしい!

品川シーズンテラス、輝かしいビルの谷間で、ビジネスパーソンたちが群れを成している!

レセプション? ワークプレイスの未来?

スーツに身を包み、名刺という薄っぺらな紙切れを交換し合う彼らの横を、私はトングをぶら下げて通り過ぎる!

なんというコントラスト!

なんという喜劇!

自転車をどこに停めたかすら忘れ、Googleマップという現代の羅針盤に頼らねば迷子になるこの情けなさ!

だが、それでいい!

私は「現象」なのだから!

さらば、ごみらじ!

しかし、これは死ではない、融合だ!

「存在としての公園」という新たなる器の中で、魂は生き続ける!

私は待っている!

どこかの公園で、レジャーシートという名の結界を張り、まだ見ぬ友を待っている!

言葉はいらない、ただ「そこにいる」という事実だけでいい!

利害も、しがらみも、責任もない、空気のように希薄で、しかし確かに温かい繋がり!

挨拶を交わし、時には共に食卓を囲み、そしてまた風のように去っていく!

そんな「超ゆる人間関係」という名のユートピアを夢見て!

日は落ち、街に灯りがともる!

トングは虚空を掴み、自転車は主を乗せぬまま進む!

最終回にして、ゴミはゼロ!

だが、私の心は満たされている!

この無意味で、滑稽で、愛おしい散歩こそが、私の生きる証なのだから!

さあ、行こう!

闇に飲まれる前に、自転車の鍵を開け、次なる現象の地平へと!

サヨナラ、そして、また会う日まで!

存在としての公園で、我々は再び巡り合うだろう!


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ごみらじBy 上水優輝