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引き続き、マツオ氏とドハマりしております。
八咫烏が支配する世界〈山内〉を揺るがす危険な薬と人喰い大猿。
故郷の危機に敢然と立ち向かう世継ぎの若宮と元近習・雪哉は危険を顧みず――。
人気シリーズ第3弾!
大猿登場が三巻。正直、一巻と二巻を読んでいる頃は、まさか外敵が現れるとは思いませんでした。
位置: 528
「雪哉の、大切なものを守りたいという気持ちに噓はない。その気持ちを無下にしてしまっては、あまりにあの子が可哀想だ」
雪哉殿は馬鹿ではない、それは貴方が一番よくお分かりだろうと、慰めるように墨丸は言う。
「私は、本人の意思に任せるのが一番だと思う。雪哉殿は聡明であると同時に、とても頑固でもあるから、きっと、他人に何を言われようが気にしないだろう。その代わり、本当に護りたいもの、やり遂げたい目標が見つかれば、君が今まで心配していたのが馬鹿らしくなるくらい、自由に羽ばたいて行くのではないかな」
兄の思いやりを描く、いいシーン。兄は見抜いていたのだ、ぼんくら次男の本質を。
当たり前だといえばそうだけど、ちょっとほっこりするよね。
位置: 1,605
火熨斗
恥ずかしながら、火熨斗を知りませんでした。
https://iwaki-museum.com/commentary/9
今で言うアイロンなんですって。
位置: 1,672
「それが、 綻びだ。綻びは、山の端と同じで、そこから外へ出てしまえば、八咫烏は二度と山内へ戻って来られなくなる」
危険なので、綻びのある場所には山寺を設置し、誰も入り込めないようにしているのだと若宮は説明した。
「……そんな事、十五年間この山内で生きて来て、初めて知りました」
力なく言った雪哉に対し「無理も無い」と若宮は軽い調子で答えた。
「皆が皆、お前のように故郷を愛している者ばかりではないからな。かつては外界に憧れて、綻びへ自ら飛び込んで行く八咫烏もいたのだ」
しかし、正式な手順を踏まずに外へ出たところで、八咫烏は八咫烏ではいられない。ただのちっぽけな二本足の烏になり、外界で、一生をそのままの姿で生きなければならなくなるのだ。
この設定、そのうち生きてくるんだろうなぁと思っていましたが、最後までそれほど生かされず。こういうところ、ちょっと勿体ないなぁと感じる貧乏性。
位置: 1,701
「朝廷でのいざこざは、そもそも金烏の本分ではない。勿論、八咫烏の安寧を守るという意味で必要な部分ではあるだろうが、もともと金烏の本分は、 八咫烏を守る事 だ」
権力争いは、厳密に言えば専門外だと言う。
「では、金烏とは、真の金烏とは、何なのですか」
雪哉は狼狽していた。今まで、曲りなりにも慣れ親しんでいたはずの若宮が、突然、全く知らない人物になってしまったような気分だった。
「金烏とは、八咫烏全ての父であり、母でもある」
とても大切な設定、「金烏とは父であり母である」
位置: 1,988
蘇芳 に染められた 袙 に 下襲 と、一枚一枚に袖を通して行くにつれて、自分が自分ではなくなってしまうような、不思議な感覚に雪哉は陥った。
豪奢な袍を着て、最後に、 雉 と唐花が刺繡された 平緒 を巻き、若宮から預かって来たという飾り太刀を 佩いた。
袙(あこめ)だの下襲(したがさね)だの、言うことがマニアックだ。ルビなしじゃ普通に読めない。本作を格調高くしているけど、ちょっと衒学的とも思えます。
位置: 2,726
だとすれば、山内は外界を模して作られた箱庭であり、 人形 の八咫烏は、外界における人間の代わりである。
どうして八咫烏が人形をとれるか、のアンサー。意外と簡単な理由だという印象。
位置: 3,495
「あの子は、確かに正しい事をしなかったかもしれません。けれども、自ら進んで八咫烏を害そうとしたわけでもないでしょう。ここで見捨てなければ、まだ、まっとうに生きる道はあります。罰とは、しかるべき方法で罪を 償う事であって、ここであの子を突き放すのは、単に 私怨 を晴らす事にしかなりませんよ」
大切な視点だよね。罪を憎んで人を憎まず、じゃないけどさ。
位置: 3,954
「当然だ。お前に賛同を得るまでもなく、それは明らかなのだ」 思い違いなどしていない、と自分の言った言葉を何度も 反芻 しながら、長束はぎろりと路近を睨みつけた。 「だから──そのしたり顔を、今すぐ止めろ!」 不愉快だと吐き捨てても、路近は表情を変えなかったし、長束の気持ちは一向に晴れなかった。
ちょっとお兄ちゃんのキャラが柔和になってきています。やられ役。
兄も相当な人物のはずなんだけどね、ちょっと危機対応能力に難あり。
しかし路近はそんな兄貴を支持する。なんだろうか。彼の真意とは。
位置: 4,008
だが実際は、その逆なのだ。
「逆……?」
「うん。真の金烏が生まれたから、災厄が起こるのではない。災厄が起こる時、それに対処するために生まれるのが、真の金烏なのだ」
日照りや大雨などは、ただの八咫烏では対処出来ない 禍 である。
天災、あるいは病の 蔓延 などによって、八咫烏という種が存続の危機に立たされた事が、山内の歴史では何度かあった。そんな時に決まって現れるのが、その時々の危機を打開するための力を持った能力者──すなわち、真の金烏なのである。
そういう大事なことは積極的に広報するべきだと思うけど。『逆なんだ』ってね。
位置: 4,103
束の間の沈黙の後、不意に顔を上げた浜木綿は、鋭い眼光で雪哉を射抜いた。 「あいつ自身がそれを自覚出来ないからといって、あいつは、何も感じないわけではない」
それを肝に 銘じておけと厳しく言われ、雪哉は姿勢をただし、真面目な面持ちで頷いたのだった。
浜木綿のいい女っぷり。
位置: 909
「山内衆は時に、文官に代わって力を行使する権限を持つ。君達は、ただの兵になるのではない。『礼楽』において君達が学ぶのは、力の付け方ではなく、身に付けた力をどう行使するか──つまりは、力の使い方だ」
まあ、それはこの授業に限らず、学問全般に言えると思うがと感慨深げに呟いた時の顔つきは思慮深く、若者達の侮りを一切寄せ付けないものだった。 「君たち自身が力になってはいけない。それでは、まるで意味がない」
よき暴力装置、というやつですね。これが警察と反社を分ける最たる理由だと、あたくしも思っています。
位置: 3,385
「俺にとって、南橘家は敵だ。だが── お前は、 そうじゃない」
ふわあ、うおお、と雪哉と茂丸から素っ頓狂な歓声が上がった。
「ただ、けじめだ。金は返す」
「……お前の稼ぎでは、何年かかるか分からないぞ」
泣き笑いを浮かべる明留に、千早は頷いた。
「ああ。坊ちゃんにとってははした金だろうが、俺にとっては大金だ」
これから、長い付き合いになるな、と。
千早が言った瞬間、今度は三人が揃って悲鳴を上げた。
エモいシーン。ツンデレですね。精一杯デレている千早の可愛さたるや。
『「……だが、お前は特別だ」構文』は人類の急所かもしれません。
位置: 3,802
「君は、『化け物を倒すためには、己も化け物になるしかない』と思っている。違うかい?」
咄嗟に何かを言い返そうとした雪哉は、結局、何も言えないままその場に立ち尽くした。それを、どこか悲しそうに清賢は見つめる。
「化け物でも構わない、と君は言うかもしれない。だが、化け物ではない君も、確かに存在するのだということを、決して忘れないでほしい」
じっと清賢を見つめ返した雪哉は、不意に、途方に暮れたような 表情 になった。
「……だったとしても、それを僕が言うのは、許されないでしょう」
国を担う者としての、強烈な自負と責任感。これはシビレます。
エモい展開が続きますが、果たしてここまで広げた風呂敷、どうたたむの?
引き続き、マツオ氏とドハマりしております。
八咫烏が支配する世界〈山内〉を揺るがす危険な薬と人喰い大猿。
故郷の危機に敢然と立ち向かう世継ぎの若宮と元近習・雪哉は危険を顧みず――。
人気シリーズ第3弾!
大猿登場が三巻。正直、一巻と二巻を読んでいる頃は、まさか外敵が現れるとは思いませんでした。
位置: 528
「雪哉の、大切なものを守りたいという気持ちに噓はない。その気持ちを無下にしてしまっては、あまりにあの子が可哀想だ」
雪哉殿は馬鹿ではない、それは貴方が一番よくお分かりだろうと、慰めるように墨丸は言う。
「私は、本人の意思に任せるのが一番だと思う。雪哉殿は聡明であると同時に、とても頑固でもあるから、きっと、他人に何を言われようが気にしないだろう。その代わり、本当に護りたいもの、やり遂げたい目標が見つかれば、君が今まで心配していたのが馬鹿らしくなるくらい、自由に羽ばたいて行くのではないかな」
兄の思いやりを描く、いいシーン。兄は見抜いていたのだ、ぼんくら次男の本質を。
当たり前だといえばそうだけど、ちょっとほっこりするよね。
位置: 1,605
火熨斗
恥ずかしながら、火熨斗を知りませんでした。
https://iwaki-museum.com/commentary/9
今で言うアイロンなんですって。
位置: 1,672
「それが、 綻びだ。綻びは、山の端と同じで、そこから外へ出てしまえば、八咫烏は二度と山内へ戻って来られなくなる」
危険なので、綻びのある場所には山寺を設置し、誰も入り込めないようにしているのだと若宮は説明した。
「……そんな事、十五年間この山内で生きて来て、初めて知りました」
力なく言った雪哉に対し「無理も無い」と若宮は軽い調子で答えた。
「皆が皆、お前のように故郷を愛している者ばかりではないからな。かつては外界に憧れて、綻びへ自ら飛び込んで行く八咫烏もいたのだ」
しかし、正式な手順を踏まずに外へ出たところで、八咫烏は八咫烏ではいられない。ただのちっぽけな二本足の烏になり、外界で、一生をそのままの姿で生きなければならなくなるのだ。
この設定、そのうち生きてくるんだろうなぁと思っていましたが、最後までそれほど生かされず。こういうところ、ちょっと勿体ないなぁと感じる貧乏性。
位置: 1,701
「朝廷でのいざこざは、そもそも金烏の本分ではない。勿論、八咫烏の安寧を守るという意味で必要な部分ではあるだろうが、もともと金烏の本分は、 八咫烏を守る事 だ」
権力争いは、厳密に言えば専門外だと言う。
「では、金烏とは、真の金烏とは、何なのですか」
雪哉は狼狽していた。今まで、曲りなりにも慣れ親しんでいたはずの若宮が、突然、全く知らない人物になってしまったような気分だった。
「金烏とは、八咫烏全ての父であり、母でもある」
とても大切な設定、「金烏とは父であり母である」
位置: 1,988
蘇芳 に染められた 袙 に 下襲 と、一枚一枚に袖を通して行くにつれて、自分が自分ではなくなってしまうような、不思議な感覚に雪哉は陥った。
豪奢な袍を着て、最後に、 雉 と唐花が刺繡された 平緒 を巻き、若宮から預かって来たという飾り太刀を 佩いた。
袙(あこめ)だの下襲(したがさね)だの、言うことがマニアックだ。ルビなしじゃ普通に読めない。本作を格調高くしているけど、ちょっと衒学的とも思えます。
位置: 2,726
だとすれば、山内は外界を模して作られた箱庭であり、 人形 の八咫烏は、外界における人間の代わりである。
どうして八咫烏が人形をとれるか、のアンサー。意外と簡単な理由だという印象。
位置: 3,495
「あの子は、確かに正しい事をしなかったかもしれません。けれども、自ら進んで八咫烏を害そうとしたわけでもないでしょう。ここで見捨てなければ、まだ、まっとうに生きる道はあります。罰とは、しかるべき方法で罪を 償う事であって、ここであの子を突き放すのは、単に 私怨 を晴らす事にしかなりませんよ」
大切な視点だよね。罪を憎んで人を憎まず、じゃないけどさ。
位置: 3,954
「当然だ。お前に賛同を得るまでもなく、それは明らかなのだ」 思い違いなどしていない、と自分の言った言葉を何度も 反芻 しながら、長束はぎろりと路近を睨みつけた。 「だから──そのしたり顔を、今すぐ止めろ!」 不愉快だと吐き捨てても、路近は表情を変えなかったし、長束の気持ちは一向に晴れなかった。
ちょっとお兄ちゃんのキャラが柔和になってきています。やられ役。
兄も相当な人物のはずなんだけどね、ちょっと危機対応能力に難あり。
しかし路近はそんな兄貴を支持する。なんだろうか。彼の真意とは。
位置: 4,008
だが実際は、その逆なのだ。
「逆……?」
「うん。真の金烏が生まれたから、災厄が起こるのではない。災厄が起こる時、それに対処するために生まれるのが、真の金烏なのだ」
日照りや大雨などは、ただの八咫烏では対処出来ない 禍 である。
天災、あるいは病の 蔓延 などによって、八咫烏という種が存続の危機に立たされた事が、山内の歴史では何度かあった。そんな時に決まって現れるのが、その時々の危機を打開するための力を持った能力者──すなわち、真の金烏なのである。
そういう大事なことは積極的に広報するべきだと思うけど。『逆なんだ』ってね。
位置: 4,103
束の間の沈黙の後、不意に顔を上げた浜木綿は、鋭い眼光で雪哉を射抜いた。 「あいつ自身がそれを自覚出来ないからといって、あいつは、何も感じないわけではない」
それを肝に 銘じておけと厳しく言われ、雪哉は姿勢をただし、真面目な面持ちで頷いたのだった。
浜木綿のいい女っぷり。
位置: 909
「山内衆は時に、文官に代わって力を行使する権限を持つ。君達は、ただの兵になるのではない。『礼楽』において君達が学ぶのは、力の付け方ではなく、身に付けた力をどう行使するか──つまりは、力の使い方だ」
まあ、それはこの授業に限らず、学問全般に言えると思うがと感慨深げに呟いた時の顔つきは思慮深く、若者達の侮りを一切寄せ付けないものだった。 「君たち自身が力になってはいけない。それでは、まるで意味がない」
よき暴力装置、というやつですね。これが警察と反社を分ける最たる理由だと、あたくしも思っています。
位置: 3,385
「俺にとって、南橘家は敵だ。だが── お前は、 そうじゃない」
ふわあ、うおお、と雪哉と茂丸から素っ頓狂な歓声が上がった。
「ただ、けじめだ。金は返す」
「……お前の稼ぎでは、何年かかるか分からないぞ」
泣き笑いを浮かべる明留に、千早は頷いた。
「ああ。坊ちゃんにとってははした金だろうが、俺にとっては大金だ」
これから、長い付き合いになるな、と。
千早が言った瞬間、今度は三人が揃って悲鳴を上げた。
エモいシーン。ツンデレですね。精一杯デレている千早の可愛さたるや。
『「……だが、お前は特別だ」構文』は人類の急所かもしれません。
位置: 3,802
「君は、『化け物を倒すためには、己も化け物になるしかない』と思っている。違うかい?」
咄嗟に何かを言い返そうとした雪哉は、結局、何も言えないままその場に立ち尽くした。それを、どこか悲しそうに清賢は見つめる。
「化け物でも構わない、と君は言うかもしれない。だが、化け物ではない君も、確かに存在するのだということを、決して忘れないでほしい」
じっと清賢を見つめ返した雪哉は、不意に、途方に暮れたような 表情 になった。
「……だったとしても、それを僕が言うのは、許されないでしょう」
国を担う者としての、強烈な自負と責任感。これはシビレます。
エモい展開が続きますが、果たしてここまで広げた風呂敷、どうたたむの?