田舎坊主の読み聞かせ法話

「ある親子 ー安心できる社会をー」田舎坊主のぶつぶつ説法


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50歳という若さで旅立った息子さんのお葬式の翌日にお参りさせていただき、ハンサムな遺影を見ながら、「よくがんばりましたね」と心で静かに話しかけた。

般若心経をお唱えしたあと、少し背が丸くなったお母さんに「よく看てあげられましたね、ご苦労さまでした」と、ねぎらいの言葉をかけた。

お母さんは、

「考えようでは、息子とずっと一緒にいられたのだから、私は幸せ者かも知れません。ときには長期入院患者や難病患者がおかれている現状をもっと理解してほしいと思うこともありましたが、経済的には医療費は公費負担してくれていたので、ここまでやって来れたのだと思います。」

と、悲しみをおさえながら話してくれた。

私は、この母子を見て、あらためてこの国に何か足りないものがあるような気がした。

それは、一生涯にわたり闘病治療が必要で、長期入院や全介助が必要な患者にとって、安心して一定期間、療養を任せられる施設やシステムがないことである。そして多くの難病患者は精神的・身体的不安に加え、働けないし、働く場がないのだ。家族も、看病や通院介助のため思うように安定した仕事に就くことができず、常に経済的不安をかかえている現状が、社会に理解されていないことだ。

1972年からはじまった特定疾患治療研究事業と呼ばれる難病対策は、病気の原因究明や治療法の確立のため、患者が研究対象となる代わり医療費を免除するという、福祉的側面を大きく担ってきた事業だ。お母さんが話したように、多くの患者が、この制度で大いに救われてきたのだ。

しかし、1998年、この難病対策は大きく方向転換し、国の財政危機を背景に、重症患者を除いて公費負担が廃止され、一部自己負担が導入された。

もし、もう少し早く公費負担が廃止されていたら、この母と子の闘いは、また違ったものになっていたかも知れない。

最近の政治を見ていると、常に経済効率が優先され、難病患者や社会的弱者が安心して生きていける社会がますます遠のいているように思えてならない。

合掌


4月からのシーズン2の読み聞かせ法話の本は

私の初版本で、2002年に出版した「田舎坊主のぶつぶつ説法」です。

後に「田舎坊主シリーズ」とつながる第1弾です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒