ボイスドラマ〜Interior Dream

ボイスドラマ「ノルディックベンチ」前編


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インテリアデザインの世界に生きる若き二人─建築士の彼と、インテリアコーディネーターの彼女。
最悪の出会いから始まる二人の関係が、1年という時間の中でどのように変わっていくのか。北欧家具のデザインと、伝説のベンチがどんな意味を持つのか。「インテリア」とは、単なる家具や空間の話ではなく、「人の暮らしと記憶を紡ぐもの」でもあります。その本質が、この物語を通じて少しでも伝われば嬉しいです。

そして、この物語は Spotify・Amazon・Apple などのPodcastプラットフォーム、服部家具センター「インテリアドリーム」公式サイト でもお聴きいただけます。

【登場人物のペルソナ】

・男性(25歳)=大手の建設設計会社で働くエンジニア。働きながら将来的にはインテリアデザイナーを目指して勉強している。12月の声を聞いた頃、本社東京への転勤の話が持ち上がる(CV:日比野正裕)

・女性(26歳)=ハウスメーカーで自社物件のインテリアコーディネーターをしている。海外研修をしたくて入社した当初から人事部に志望を出していた。来春のLA支社開設に伴い、支社専属コーディネーターの候補として自分の名前があがっていた(CV:桑木栄美里)


【Story〜「ノルディックベンチ/前編」】

※今回は試験的にモノローグがシーンごとに変わります

<シーン1/最悪の出会い(1年前)>

(SE〜展示会の環境音/BGMはクリスマスソング)

女性:「正直に言わせてもらいますけど、この家具。

北欧風のダイニングってテーマに全然合ってないですよね。

まず、シルエットが重すぎる。

北欧家具の魅力って、シンプルで軽やかなラインと、

視覚的にも空間的にも“抜け感”を生むデザインにあるんです。

これじゃ、空間全体が圧迫されてしまう」

男性: インテリアショップのワークショップ。

出品者同士で語り合うオフ会で

いきなりの先制パンチ。

彼女、確か、ハウスメーカーのインテリアコーディネーターだったよな。

女性:「素材のチョイスも疑問ね。

北欧スタイルは、オークやアッシュみたいに明るい色味の天然木材が主流でしょ。

でもあなたのベンチは色味が暗くて、まるで重厚な和風家具みたい」

男性:「な・・」

女性:「あと、プロポーションがアンバランスだわ。

チェア自体が大きい割に、座面の高さが低すぎる。

北欧のダイニングセットは、家族や友人が集まる“ソーシャルスペース”。

座り心地やテーブルとの相性をもっと考えるべきじゃないですか?」

男性:「この・・言わせておけば・・」

しかし、確かに言われることには筋が通っている。

そもそも僕はまだプロのインテリアデザイナーじゃない。

今回、プロアマ問わずに作品を募っていたワークショップに出品したんだ。

僕は大手の建設コンサルタント会社で働く建築設計士。

まだ4年目だけど、二級建築士の資格を持って建築図面を引いている。

でも今日のワークショップは仕事じゃない。

実はいま、インテリアデザインの勉強をしているんだ。

それで、『北欧デザイン』をテーマにしたこのワークショップに

作品を作って応募したってわけ。

撃沈。

苛立って睨みつける僕に、彼女は余裕の笑みを返してきた。

<シーン2/会長宅リフォームのプレゼン>※最悪の場合、会長は湯淺・・

(SE〜プレゼンルームの環境音)

女性:「今回の会長宅のリフォームでは、北欧スタイルを取り入れたいと思います。

自然素材の家具と柔らかな間接照明を活かした温かみのある空間。

リビングには、明るいオーク材のフローリングと、

シンプルなラインのソファを中心に、家族が集まりやすい配置を考えました。

壁面は自然光を反射するためのライトグレーのペイント。

昼間でも柔らかな光が部屋全体に広がるようにしています・・」

会長:「北欧スタイルねえ。

良さはわかるんだけど、ちょっと軽くないかね」

女性:「もちろん、会長のおっしゃる重厚感も大切だと考えています。

ダイニングにはウォールナットのテーブルを配置して、

高級感と重厚感を演出しました」

会長:「ウォールナットも悪くないんだけどなあ。

なんかピンとこないんだよ」

女性:「そうですか・・」

男性:「会長」

会長:「ん?きみは?」

男性:「建築士の設計コンサルタントです」

女性:「え?あなた・・・」

プレゼンルームの隅っこから声をあげたのは

この前ワークショップにいた青年。

男性:「会長、お孫さんはいらっしゃいますか?」

会長:「ああ、いるよ。まだ小学生だけど」

男性:「さきほど彼女、”家族が集まる場所”って言いましたよね。

ウォールナットは見た目の重厚感だけでなく、

すごく耐久性が高い素材なんです。

例えば、お孫さんがテーブルの上で宿題をしたり、絵を描いたりしても、

傷がつきにくい。

汚れにも強いから、食べこぼしても簡単に拭き取れます」

会長:「ほう」

男性:「それにオーガニックで環境にも優しい。

化学処理が少なく、天然のままの風合いを生かしているので、

お孫さんが触れても安全です」

会長:「なるほど」

男性:「何より、長年使い込むほどに味わいが増します。

家族が集まるたびに、このテーブルに思い出が刻まれていく。

ウォールナットと一緒に家族の年輪を刻んでいってはどうですか?」

会長:「うむ」

女性: 言い終えたあと、彼は一瞬私の方へ視線を送り、ウィンクした。

あのとき私、あんなに厳しいこと言っちゃったのに。

でも、居心地の悪さより、救ってくれた嬉しさの方が勝(まさ)った。

施主も私たちも英顔でプレゼンルームをあとにする。

この一件以来、私と彼の距離は急速に縮まった。

彼は25歳。私よりひとつ年下。

設計コンサルタントとして働きながら、

インテリアデザイナーを目指している。

私たちは食事を共にする仲となり、

コーディネーターとデザイナーとしてリスペクトし合いながら

季節が巡っていった。

<シーン3/1年後のクリスマス>※TMスタート後「え?」が多くてすみません

(SE〜街角の環境音/クリスマスソング)

女性:「あのベンチ、なあに?」

男性: 彼女と一緒に過ごすようになってから最初のクリスマス。

インテリアコーディネーターとインテリアデザイナーの

デートスポットは・・・

そう、インテリアショップ。

最近の家具屋さんはオシャレなところが多いし、

僕たちはここにいれば、何時間でも過ごすことができた。

女性:「昨日まであんなんなかったよね?」

男性: リビングとダイニングの真ん中。

ベンチは部屋と部屋の間に置かれていた。

女性:「なんか、書いてある・・・

ノルディックベンチ?」

男性:「君の好きな北欧スタイルだね」

女性:「ノルウェーのアルタ。

『北極の町』の教会に置かれていたベンチだって」

男性:「へえ〜。なにか謂れがあるのかな」

女性:「悲恋伝説らしいわ。

その代償として、このベンチに座るカップルは結ばれる・・」

男性: ドキっとした。

実は僕のカバンには、辞令が入っている。

東京支社への転勤の辞令。

僕は今日、それを彼女に告げなければならない。

女性:「どうする?」

男性:「いいじゃん。座ろうよ」

女性:「うん」

男性: 僕がベンチに腰掛けると、

彼女もゆっくりと腰をおろした。

女性:「実はね、話したいことがあるの」

男性:「え・・」

女性:「私、いまの会社、ハウスメーカーに入ってから

ずうっと海外勤務希望申請をだしてたの、知ってるでしょ」

男性:「うん・・」

女性:「それがね、急に決まっちゃったのよ」

男性:「あ・・・」

女性:「来年の春、LAに支社を開設するんだって」

男性:「そう・・・」

女性:「申請だしてたのさえ、忘れてたのに」

男性:「よ、よかったじゃないか・・・」

女性:「強制ではないんだけど、独身だと断りにくいから」

男性: 彼女の言葉が途切れたのをきっかけに、僕も彼女に告白する。

男性:「実は僕も君に話があるんだ・・・」

女性:「え・・」

男性:「これを見てほしい」

女性:「なに」

男性: 僕がカバンの中の辞令を彼女に手渡すと・・

女性:「東京・・転勤・・・?」

男性:「来年早々から」

女性:「本社勤務、ってことは栄転ね」

男性:「まあ、そうなるかな」

女性:「おめでとう」

男性:「いや、いかない」

女性:「え?」

■BGM〜「インテリアドリーム」

男性: 僕は彼女から辞令を返してもらい、

そして、目の前で・・

女性:「なにしてんの?」

男性:「なにって、辞令を破いてるんだよ」

女性:「どうして?」

男性:「僕がインテリアデザイナーを目指しているの、

君が一番知ってるじゃないか」

女性:「でも・・」

男性:「これでやっと踏ん切りがついた」

女性:「そんな・・」

男性:「だから、君の海外勤務は・・・」

女性:「もう断ったわ」

男性:「え?」

女性:「結婚する、ってウソついちゃった」

男性:「それ、ウソじゃない」

女性:「え?」

男性:「結婚しよう」

女性:「本気?」

男性:「もちろん。返事は?」

女性:「Yes!に決まってるじゃない」

男性: なんだか、いままで悩んでたことがおかしくなる。

ノルディックベンチ。

説明書きにあるように「永遠の愛を守る」という伝説は生きているようだ。

『永遠の愛を守る』ノルディックベンチに座って

僕たちは未来を語り合った。

(SE〜教会の鐘の音)

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ボイスドラマ〜Interior DreamBy Ks(ケイ)、湯浅一敏、インテリアドリーム