「先輩!いくらなんでもこれは無いでしょうよ!」そびえ立つやぐらを目の前にして小さな体が大声を出す。普段は冷静沈着で鳴らしているベースもあんな声が出せたんだな…と思いながら顛末を見守っていた。詳細は割愛するが、同好会OBの先輩からの魅力的なお誘い、無料で野外音楽ライブに出させてやる(観客付き)なんてエサをぶら下げられてホイホイ付いて行ったら、山奥まで連れて来られて、村役場に隣接する空き地でなにやら盆踊り大会が始まるという、なんとも言えない経緯である。そんな中、後輩コンビの方はというと揃って飄々としている。サックスの彼は「いつも通りですよ」なんて端から空気を読む気が全く無い様子である。ドラムの奴はどこかで拾った来たのか、既にバチを両手にし、カタランカタランと楽しげだ。君はいつも楽しそうだね。ややあって結局準備に取り掛かることになってしまったが、嘘をつかれた訳でもないし、実際にライブ演奏が出来るのは事実である。借金をしてまで一張羅を用意したベースには少々気の毒だが、盆踊りだろうがチークだろうがサンバだろうがやることは変わらない。和洋折衷、上等じゃあないか!俺達、Cucumber Boysの伝説はここから始まるんだ!と独りごちた所で準備係の人から声がかかった(つづく)