▼シャドーハウス
貴族の真似事をする、顔のない一族「シャドー」。
その“顔”として仕える世話係の「生き人形」。
来客のない奇妙な館には、今日も煤と黄色い声が、舞う──
▼ 7人のシェイクスピア
1600年のイギリス・ロンドン。芝居は庶民の娯楽として大いに人気があったが、権力側の少なからぬ者達が、この風潮を苦々しく思い、ともすれば取り締まろうと躍起になっていた。シェイクスピア劇団による大評判の芝居『ハムレット』の脚本を別の劇団に売り込もうとしている顔に大きな痣のある男がいた。しかし、台本の台詞とあらすじを聞いた芝居通の男が、「自分の見た芝居と違う」と言い出し、男は叩き出されてしまう。「下衆野郎」とはき捨てられた男は言い返す。「シェイクスピアこそ下衆野郎の詐欺師だ」と。
その13年前の1587年。リヴァプールの塩商人ランス・カーターことウィリアム・シェイクスピアは、一人の黒髪の少女リーと出会う。彼女は未来を予見できる能力を持っていたが、不吉をもたらす魔女として白眼視され、喉をつぶされた上、嵐の夜に人身御供として流された中国人移民であった。幼馴染で商才に長けたワース、中年の従僕ミルらの下で保護され、英語を覚えたリーが綴るソネットは、商人ギルドのために芝居を書いていたランスにとめどない霊感をもたらすのであった。そして、ロンドン帰りのワイン商ギルドの脚本家、クレタ・マシューズとの芝居対決でランスが脚本を手掛けた『オデット』は、リーの優れた詩文もあり観客から拍手喝さいを浴びる。審査を行う市参事会へのワイン商の買収により勝負には敗れたものの、手ごたえを掴んだランスは、より多くの成功を求めてロンドン行きを決意する。
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