冷たく 心の奥底まで睨みつけるような目線んで座の手下どもを睥睨する男彼は界隈のボスであり裏社会のドンとの名高い男である。異例の若さで権力を牛耳った彼の事をやれ悪魔の生まれ変わりだとか心の楔が欠落しているとか黒い噂が絶えた試しがない。口数の少ない彼の性質も手伝って噂が噂を呼び 果てのない連鎖となってそれが部下たちの耳に届き一層畏れを抱くというループまで生まれていた。ある刻限が迫ると 彼はいつも右腕の男に告げる「誰もこの部屋に近づけるな」悲壮感の籠った蒼い顔で奥へと向かうボスの背中を見送った。部屋に入った刹那 数え切れない猫にかの悪魔の生まれ変わりは手厚い歓迎を受ける「メシーメシー!」「遅いなにやってたんだ!」などと人語に訳すとしたらそんなところであろう。彼はだらしなく緩んだ頰のまままた数え切れないボウルに猫缶をひたすら開けて 供するのであった。法に守られない命があるその子達を守るのは法を守らない俺たちだ誰に話すでもない その独り言は外で今も震える部下たちに聞こえる事は無かった。