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高橋博之の歩くラジオ#158|ゲスト:八木澤裕史(八木澤ファーム代表/栃木県日光市)


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栃木県日光市で農業、看護師、猟師、消防団員の四足の草鞋を履き、地域社会を守る八木澤裕史さんをゲストにお招きし、歩きながら1時間、対談する。


八木澤裕史/1979年、栃木県日光市生まれ。獨協医科大学附属看護専門学校を卒業して看護師になる。獨協医科大学越谷病院に就職し、救命救急センターにて勤務。現在は、地元の病院で看護師を勤める。

看護師をしながら、父の農業を手伝い、地元には農業をする若者が不足していることを痛感する。耕作放棄地も増えていく中、もっと本気で農業に取り組まなければいけないと考え、【昼は農業、夜は看護師、休みの日には消防団、時間があったら猟師】という生活に移行。最初は、誰も理解者はいなかった。「一人戦争時代」だった。戦時中さながら、寝ずに自分を守り、家族を守り、仲間を守り、地域を守ることに懸命だった。ご先祖様がこの平和な日本を自分たちにつないでくれたという思いもあった。

農業をしていて感じたこと、いや、農業をする前から感じていたことは、農業者はバカ者であるということ。農業を仕事と言っていますが、仕事とは生計を立てる手段として従事する事柄という意味が含まれているはず。農業者はどうでしょう?幼き頃から父の農業を見ているが、適切な賃金を得られているだろうか?賃金を得られるどころか、借金をして継続しているではないか?そんなことをやるのは非合理的だ。つまり、馬鹿なのです。それが、私の農業に対する思いだった。

合理的に考えれば、日本は農業をやめたほうが良いと思う。狭い国土、傾斜面も多い。だから、棚田のような条件の悪い水田が多くなる。私たちの水田は棚田が多くある。機械の乗り入れにしても危険だ。高さ3mもある土手の草を刈らなければならない。滑って落ちれば大怪我するなど、危険だらけ。実際、私の父は草刈り機で足を切り、病院でなんとか縫合し、大事に至らなかった。数センチずれていれば大腿動脈を切って出血性ショックでこの世にいなかっただろう。

山に近い圃場だから、当然のことながら野生鳥獣はたくさん出入りする。猿、鹿、イノシシ、熊、たくさんいる。当然、予防のために網もはる。それでも、動物も生きるために、食うために、まさにサバイバルのために、圃場に入り込んでくる。毎年、約200万円の損害が出ている。だから、動物の個体数調整のために猟師もする。つまり、動物の大切な命を奪うのだ。こうして、とても残酷なこともしなければならない。鹿の最期の断末魔を聞いたとき、恐怖に怯える。鹿も必死に生きたかったんだと思う。

農業を継続していく上で、非合理的なことはまだまだある。昨今の気候変動もそうだ。こんなに非合理的な農業だけれども、私は、なんとしても次世代に残したい。私がサディスティックな思想の持ち主だから言っているのではない。どんなに非合理的であっても、必要不可欠なのだ。地域を守るため、地方を守るため、国土を守るため、誰かがやらなければならない。だから、農業をただの賃金を得るためだけの仕事と捉えてはいけない。農業がなくなれば、この国に人間は住めなくなるのだから。

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ポケットマルシェ代表の高橋博之が、社会を“生きる“ゲストと対談する「高橋博之の歩くラジオ」。ゲストのみなさんは、農家・漁師、起業家、研究者、行政官、メディア、NPO、学生……と様々な立場から、自分たちの生活する場、自分たちの生きる社会をよりよくしていこうと、熱い想いや強い志をもって働きかけている方々です。

「高橋博之の歩くラジオ」では、あらゆる角度から社会についての議論が交わされ、心に響く言葉が生まれています。自分の“生きる“日々を振り返って、ちょっと立ち止まって考えたり、背中を押してもらったり。このラジオが、そんなきっかけになることを願っています。

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