工芸思考

工芸思考 #2


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『工芸思考』へようこそ。「工芸思考」第二回も中川木工芸・木工作家の中川周士 (IG: @shuji_nakagawa )朝日焼十六世・松林豊斎(IG: @hosaimatsubayashi )文化の翻訳家・吉澤朋 (IG: @tomoyoshizawa)がお送りします。


今回の対話のテーマは:


・言語化の限界と可能性

「エモい」などの若者言葉は、細分化された言葉では捉えきれない複雑な感情を包括的に表現する有効な手段である可能性がある。

工芸の知の伝承は、師匠の所作を模倣し身体で習得する「複雑なものを複雑なまま」伝えるプロセスであり、安易な言語化とは対極にある。複雑さを複雑なまま伝える工芸のアプローチになぞらえることもできる?

言語化はアナログ情報をデジタル化する行為に似ており、伝えやすくする一方で必ず情報が欠落する。この限界を認識すること。

脱線しながら話が展開する「対話」形式は、工芸のように複雑なテーマの本質に近づく力を持ちうる。



・AIと工芸の関係性

AIがビッグデータを必要とするのに対し、職人は「スモールデータ」で推論し創造性を発揮できる。

AIは工芸における人間の仕事を奪うものではなく、思考を深めるための「対話相手」や創造性を刺激する「壁打ち相手」として機能する可能性がある。



・個人の「I」から共同体の「We」へ

工芸における技術継承が共有財産としての性質を持つことを探求し、これが現代の個人主義に対する重要な視点になりうる。

科学の世界でも「巨人の肩の上に立つ」という言葉のように、先人の業績の上に新たな発見があるという共有・継承の考え方は存在する。

私有財産の考え方の方が比較的新しい感覚かもしれない?



メモ:


・広辞苑の広告に納得!

・複雑なものを複雑なまま伝える

・言語化の壁(デジタルかアナログか)

・工芸思考の今後

・機械/AI  ↔︎ 工芸性・人間性 ↔︎ 野生・自然


*工芸思考とは:2010年代、「職人の手の中には脳がある」(エンツォ・マーリ)の言葉をきっかけに、「工芸とは何か」を作り手自身が問いかける動きが始まりました。


道具として使われる工芸品には、生活環境や文化が如実に反映されます。つまり、人類が道具を持ち始めた当初から脈々と続く文化や思想が、日々使うモノやカタチの中には内在されているのです。


手を介して紡がれてきた、身体感覚とつながる思想を体系化・言語化する試みは、コロナ禍にはオンラインで地域や分野、使い手/作り手の境界線を越えた対話として広がり、深まりました。


そして現在。工芸的思考方法を明らかにしつつ、さらには未来に向けて提供しうる意味・価値を探る試みは、より大きなうねりとなっています。

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工芸思考By 中川周士、松林豊斎、吉澤朋