田舎坊主の読み聞かせ法話

「今を生きる ー帽子は忌み分けだったー」田舎坊主のぶつぶつ説法


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夜桜の翌日、4月7日、この日は妻とともに以前から予定していた、奈良法隆寺の壁画展に行くため、朝から出かけた。

昼過ぎには帰ってくるのでそれからお寺へ行こうと思っていたのだ。

昼過ぎ、家に着くと、「帰ったらすぐお寺に来るように」との走り書きが玄関におかれていた。

そのメモを読んで「何かがあった」と言う予感はしたものの、まさか親父の顔に白い布がかけられているとは思いもしなかった。

親父はこの日、普段どおりのようすで、大好きな朝風呂に10時頃入った。

一時間過ぎても出てこないので母親が見に行ったら、湯船のなかでぐったりしていたのだ。

私が不在のため、隣の男性に風呂から引き上げてもらい、救急を呼んだがすでに脈はなかったそうだ。

親父は大好きな風呂に入り、ひげをあたり、自ら湯灌をして身を浄め、それはあたかも勢いよく燃え立つ蝋燭が、強風で一気に消え去るように卒然として78歳を一期に亡くなっていた。

昨夜、みんなに帽子を手渡したのは、まるで己の死を予測していたかのような、忌み分けだったのだろうか。

野辺の送りは、人生の最後に最高の楽しいひとときを過ごした自坊の満開の桜と、その下にたたずむ多くの友人知人の見送りを受け、親父は旅立ったのである。

出棺の際、御仏の子として生まれ、やがて御仏の懐に還っていくという御詠歌、

 「あじの子が あじのふるさとたち出でて またたち還る あじのふるさと」

の私の弟子たちによる合唱に包まれ、満開の桜はその鈴鉦のひびきに合わせるように、風もないのに花が舞い散り、まさに桜に心ありて散華するがごとき、野辺絵巻であった。

俳句をたしなむ信者さんから、「院主逝き 桜散華の ただ中に」という弔句を戴いた。

合掌


4月からのシーズン2の読み聞かせ法話の本は

私の初版本で、2002年に出版した「田舎坊主のぶつぶつ説法」です。

後に「田舎坊主シリーズ」とつながる第1弾です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒