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九十九島せんぺい
長崎くんちの帰りに立ち寄った土産物屋で、「九十九島せんぺい」を手に取った。大好物なのに暫し逡巡したのは、昔と違うパッケージの所為だろうか。味は変わっていない筈という半ば信心めいた気持ちで支払いを済ませた。
自宅に戻って、すぐに開けてみた。確か昔は、五枚か六枚を白い紙で包んでいたような気がしたが、今は一枚づつを白い紙の袋で包み、五袋を透明なビニール袋におさめている。少し風情が落ちたかなぁと思いながらも、口に入れたせんぺいの感触は昔のままだった。パリッパリッと独特の食感と香ばしさを楽しみながら、「心にのこる贈りもの・・・九十九島せんぺい」のしおりに目を通した。
それによると、生まれたのは私と同じ昭和二十六年、材料は、砂糖に小麦粉にピーナッツ、素朴な味わいだ。今では機械化されたようだが、せんぺいの表に書いてある「九十九島」という文字は今でも職人さんの手書きのようだ。この白い文字の部分に好きな文字を入れてオリジナルのせんぺいもできるようだ。たとえば、「感謝」という文字でお世話になった人に贈るのも良いだろうし、「○○さん、あなたが好きです」と書いてプロポーズもいいのでは、まぁ、私には、そこまでして贈る人はいませんけどね。ちなみに、せんぺいというのは、小麦粉で作られたもので、せんべいは米から作られたものだそうだ。その当時の話のようなので今でもこの区別があるのかどうかはわかりませんが・・・。
パリッ、パリッという音がいつのまにか、パリパリパリパリという音に変わり、五枚が消えてしまった。次の袋に手をかけようとした時に玄関が開く音がした。娘のようだ。一瞬、どこへ隠そうかと考えた私はあさはかだった。娘の、その筋の鋭さを忘れていたからである。残りの二袋は、あっというまに、彼女の胃袋の中へと吸い込まれていった。
By 森田義夫九十九島せんぺい
長崎くんちの帰りに立ち寄った土産物屋で、「九十九島せんぺい」を手に取った。大好物なのに暫し逡巡したのは、昔と違うパッケージの所為だろうか。味は変わっていない筈という半ば信心めいた気持ちで支払いを済ませた。
自宅に戻って、すぐに開けてみた。確か昔は、五枚か六枚を白い紙で包んでいたような気がしたが、今は一枚づつを白い紙の袋で包み、五袋を透明なビニール袋におさめている。少し風情が落ちたかなぁと思いながらも、口に入れたせんぺいの感触は昔のままだった。パリッパリッと独特の食感と香ばしさを楽しみながら、「心にのこる贈りもの・・・九十九島せんぺい」のしおりに目を通した。
それによると、生まれたのは私と同じ昭和二十六年、材料は、砂糖に小麦粉にピーナッツ、素朴な味わいだ。今では機械化されたようだが、せんぺいの表に書いてある「九十九島」という文字は今でも職人さんの手書きのようだ。この白い文字の部分に好きな文字を入れてオリジナルのせんぺいもできるようだ。たとえば、「感謝」という文字でお世話になった人に贈るのも良いだろうし、「○○さん、あなたが好きです」と書いてプロポーズもいいのでは、まぁ、私には、そこまでして贈る人はいませんけどね。ちなみに、せんぺいというのは、小麦粉で作られたもので、せんべいは米から作られたものだそうだ。その当時の話のようなので今でもこの区別があるのかどうかはわかりませんが・・・。
パリッ、パリッという音がいつのまにか、パリパリパリパリという音に変わり、五枚が消えてしまった。次の袋に手をかけようとした時に玄関が開く音がした。娘のようだ。一瞬、どこへ隠そうかと考えた私はあさはかだった。娘の、その筋の鋭さを忘れていたからである。残りの二袋は、あっというまに、彼女の胃袋の中へと吸い込まれていった。