よっしーの「今週のエッセイ」

今週のエッセイ/少年の笑顔


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最近の技術の進化はすさまじいものがある。

特に、AIの進化はいちじるしい。

私も使っているが、素晴らしい答えが返ってくる時がある。

すべてを受け入れるつもりはないが、便利である。

今に、頭の中の思いが外に流出できるようになったら大変だ。

 

このエッセイは、2012年9月の作品です。

頭の中の思いが他人に知られない時代の作品です。

 

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少年の笑顔

 

 三月十三日、つまりホワイトデーの前日、私は年一回の妻と娘へのルーチン作業の為に会社からダイエー福重店へと歩き出した。空は晴れているが、風はまだまだ冷たい。

 店の中へ入っていくと、前から爽やかな少年が歩いてきた。私服なので年齢は定かではないが、中学生のように見受けられる。その顔が遠く何かを見つめているようで笑みを含んでいた。その笑顔の何と可愛く爽やかなことか。見ると、右手に小さな紙袋、彼の後方にはホワイトデーの特設販売所、なるほど、遠く見つめていたのは、バレンタインデーにチョコをもらった彼女の顔、ニヤけていたのは渡す時を想像していたのだろう。そんなことを考えていたら、すれ違いざまに、つい吹き出してしまった。

 その時、買い物をしていたオバちゃんと目があってしまった。ニヤけている私の顔を怪訝そうに見ていた。ヤバイ、このオバちゃんはきっとこう考えているに違いない。

 (このオジさん何でニヤけているんだろう。ホワイトデーの特設販売所に向かっているので、家族に買う為か、いやいやそれぐらいでは、こんなにニヤけないはず、さては、あの顔で愛人がいるのでは・・・。まぁ、オジさんのニヤけた顔なんかどうでもいい。次のバーゲンに行かなくっちゃ。あ~忙しい、忙しい)

 ニヤけた顔のやり場に困りながら特設販売所へと向かった。あの少年は、どんな商品を選んだのかと思いつつ物色していたが、「完売」の札がやたらと多かった。結局、値段も商品も思い通りとはいかず、妥協に妥協を重ねたものとなってしまった。

 私の帰り道は、あの少年の爽やかな笑顔とは裏腹に何だか寂しいものとなってしまった。六十過ぎた男の頭の中がこんなふうに考えているとは、決して人には言えたものではない。

 

 

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自分の頭の中で考えていることが、どこかのスクリーンに映し出されたり、

誰かの頭の中で再生できたりしたら、大変なことになる。

そんな時代がくるのだろうか?

来てほしくはないものである。

 

今の時代を楽しむ事にしよう。

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よっしーの「今週のエッセイ」By 森田義夫