情報リテラシーが大切とされる時代背景には言わずもがな情報過多の状況がある。情報化時代という言葉が盛んに使われ出したのは1980年代だ。そこから30年余、それなりに時代の波を乗りこなしてきた自負のあった筆者も、増え続ける一方の情報量にさすがに最近は乗りこなせていない感を覚える。 例えばどこかに出かける場合、クルマであれば主な幹線道路の起点・終点〜方向を大まかに捉え、そこから目的地に向かう市街の道に目星を付けて走行ルートを決めるのが普通だ。電車やバスでの移動も似たようなもの。地図帳しかない時代には、そうした大局的な見方から始めて個別の案件について考えるようなやり方──今日のプロジェクトマネジメントで言うブレイクダウン的な手法が当然で、自然に身に付いたものだ。 しかしGPSを備えたカーナビが普及し「乗換え案内」のようなアプリが手軽に使えるようになると、現在地点や至近駅からピンポイントで目的地までの最適化されたルートが提示されるので、もはや行動する自分自身にブレイクダウンの技量は要求されない。 筆者がコドモだった時代には「将来の夢」を尋ねられて返される答えは、今時の子供たちの答えに比べればひどく単純なものだったように思う。昔のコドモたちは大雑把に自分の行きたい分野を決め、その過程で出会う様々な事柄・経験を通じて「何処か」に落ち着いたもの。それが成功・失敗に関係なく共通する「オレの人生こんなはずじゃ」的な述懐に結び付いたりもした。 あるいは見方を変えれば、GPSや乗換え案内によってガイドされる人生は、目的や結果からブレイクダウンの過程を遡る「帰納的」な方法で導かれるとも言えるだろう。帰納の末に行き着いた先に「今の自分」がいなければ、そんなヒトになろう・自分を変えようと努力するかも知れないし、最初に戻り「今の自分」に近くなる「手軽で実現可能な」答えを見つけようとするかも知れない。 情報化時代の副産物として登場した攻略マニュアルなどを片手にゲームで遊んできたコドモには、そんな人生の歩み方も選択肢のひとつになるだろう。 情報過多により不確実性はますます高まる。 偶然から生まれる成功に期待するより、少なくとも失敗しない選択が求められる。 夢を見ることが許されない、夢を見られない時代に生まれたコドモの夢の紡ぎかた──しかしそれは、情報過多の時代を乗りこなしていくための新しい処世術かも知れない。 さて今週のサウンドキッチンは、女医さんに処方された7種類ものクスリが効果テキメンでおなじみの魅惑的なヴォイス を取り戻し乗りに乗るシェフこと @daycraze の新曲を2曲お届け。ミックス作業中に依頼された次の新曲のテーマが70年代アニソン風と来たことで、懐古趣味な @nitecruise ともども話題は一気に過去へとタイムスリップ。時代の音楽と社会・環境問題との関わり、さらには過去と現在の若者の感性の違いに言及するも、タイムアウトで消化不良気味。 番組に関するお問合せ: FM小金井 〒184-0004東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井1階 (消防署側) TEL/FAX: 042-207-7777 110702 Texture artwork used in the movie by courtesy of Lost & Taken. photo credit: susivinh