せんせいあのね せんせいあのね ぼくのなまえは ごうだたけしだけど みんなジャイアンて よびます。 のびくんは てっぽうでぼくをうつので こわかったけど がっこうにこなくなったので しんぱいです。ほねかわくんは いつもぼくに ラジコンをかしてくれます。 うれしいです。 ごうだたけし コメント 郷田くんはやさいですね。これからも勉強がんばってね。—あの子は変わってしまった。いつごろだろう?たしか5月の連休明けには・・・問題児が一人へったんだ。良いことじゃないか—彼はそう心の中でつぶやくと、伸びをしタバコをもみ消した。明らかに異変が起きている。野比の転校も気にかかる。本人とは一切コンタクトを取れないまま姿を消してしまった。あったのは教育委員会からの連絡と、内閣府からのA4用紙一枚だけだ。あのあと、何度も家庭訪問に行ったが、両親に合うことさえままならない。 —俺は責任を果たした—何度も繰り返した自分への言い訳を、また繰り返す。俺のあずかり知らぬところで何かが起きている。それだけは間違いない。しかし、一介の教師に何が出来るという?俺は責任を果たしたんだ、面倒ごとはもうたくさんだ。傍らのブランデーをあおると、やりかけの日記帳が目に入る。しまった「やさしい」を「やさい」と書いてしまった。まぁいい。彼は確か八百屋の息子。きっといい意味にとってくれるに違いない。時計は今日の終わりを告げようとしている。早く仕上げて寝なくては。明日は朝一で職員会議だったはず・・・郷田たけしの日記帳を「済み」の束に放り投げ、タバコに火をつける。俺は責任を果たした。俺は責任を果たしたんだ—