プロとアマを隔てるものは何か。日常のあらゆる分野にデジタル機器が浸透し、炊飯器でさえマイコン制御される時代には、モノ作りの分野でも「職人の勘所」を再現するデジタルツールが大活躍だ。プロ・アマ問わず誰もが簡単に「創造力」を発揮できるようになれば、あとは人海戦術が必要なところには低コストな人的リソースを投入して大量生産するのみ。 そうして製品価格は下がったが、同時に付加価値の絶対的な減価にもつながった。高品質で素晴らしい製品を入手することで得られる有難みや感動は薄れ、結果的に簡単に飽きられてしまうのだ。 今やハイテク製品の代表となったカメラやテレビ然り、出版文化を彩ってきた音楽や本〜広義のコンテンツもまた然り。 プロとアマを隔てるものはデジタルによって取り払われた。 結果的にモノがあふれ「有難み」や「感動」が失われてしまった。 職人技が活きたアナログ時代に戻ることはできない。新しい時代のプロは「有難み」や「感動」を喚起できる者と定義づけられるかも知れない。そしてデジタル全盛の時代においてもそれが成立する数少ない分野は、例えば音楽やスポーツではないだろうか。 それらに共通するのは究極的には機械やコンピュータープログラムでは代用の効かない、人間が演じる生身のパフォーマンスが物を言う点だろう。 プログラマーが考えたアルゴリズム、書き連ねたコードの中の予定調和に躍らされるだけの仕事やライフスタイルの空しさ。ソーシャルメディアを通じて求め合う「つながり」の根底には、人間性の回復を求める深層心理が働いているのではないかとさえ思わせる。 さて今週のサウンドキッチンは、シェフこと @daycraze と @nitecruise の共通の旧友、まるは君こと @sonicmagus が登場。多忙のシェフが収録に遅れるのをよいことに番組ジャックを決行し、@nitecruise 相手に歌謡曲から J-pop へ移行する1980年代末期の音楽制作現場を語りまくる、その一方で、番組収録も半ばに差しかかり登場したシェフは何と1970年代の歌謡曲に感化されていた… 時間遡航かタイムパラドックスを思わせる音楽的異空間が渦巻く一時間をお届け。 番組で紹介したウェブサイト: Sound Magician II 番組に関するお問合せ: FM小金井 〒184-0004東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井1階 (消防署側) TEL/FAX: 042-207-7777 110604