田舎坊主の読み聞かせ法話

「妻に贈った諷誦文(ふじゅもん)」エッセイ「田舎坊主の合掌」


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敬って申す諷誦文のこと

それ思うに身も心も熱し尽くさん残暑厳しき夏葉月、地蔵盆の子ら賑やかに和讃を唱え、無事安寧を祈願するなり

本日ここに祭壇を設け不動寺刀自 森田敏子の葬儀を営む
師は平成六年不動寺に嫁ぎ、善き大黒として精進これ重ねたり
傍らにおいては日本舞踊藤間流の名取の素養生かし、高野山本王院大奥様を師と仰ぎ、
ご詠歌舞踊を習得しての奉納舞踊は、厳かなること天女の舞うがごとくなり
さらには自ら住職とともに難病患者の支援に尽力され、多くの患者家族の支えとして活動するも、
悲しいかな平成十五年自ら難病に冒され、闘病の日々を送ることとなれり

されど病気を持ちながらも多くの難病患者に寄り添うべく平成十七年、不動寺境内におたすけ地蔵尊を発願建立し、

多くの檀家にその光明とご利益を授け続けられたり
病気は進行するものの気丈に加療を続け、過日は胃ろうからの脱却、心肺停止からの奇跡の生還を成し遂げられ
これもひとえに大日大聖不動明王、お大師さま、まさにおたすけ地蔵尊のご利益そのものと所存せり
ああ悲しいかな哀しいかな
別れは突如として師に襲いかかり、卒然として冥界の人となれり
師の末魔たるその姿は、阿字たる大日如来の化身、大日大聖不動明王に導かれ、お大師さまに杖を借り、
八月二十四日地蔵盆を命日とし、おたすけ地蔵さまが道を照らし、その身には五智円明の光を放ち、いとも安らかに覚りの峯に登り逝きぬ

ああ尊いかな師の大往生

この意に鑑み、師に宝寿院華照優敏大姉の院号を贈る

その慈悲に包まれし朋友ら、今まさに哀惜の念、無量の涙を法滴せん

今ここに釈尊の遺風にのっとり、結集合い寄りて導師を請じ、秘密の葬儀を営み、
大姉が霊棺を担ぎ、愛宕山の望月の如く、法性の月影浄くさし渡る浄域に引導す

願わくば、尊霊速やかに阿字の蓮台に上り、我らが微供を納受せられんことを

  乃至法界平等利益       良恒敬白

合掌


和歌山県紀の川市 瑞宝山不動寺

不動坊 良恒

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒