お聴きいただきありがとうございます。晴れ渡った大空をテーマに、見上げる子どもの心情をイメージして構想しました。童謡でも頻繁に使われる明るく元気なト長調や素朴なハ長調を中心に、少年の日の思い出をしのびつつ大胆な心持ちで製作にのぞんでいます。大人になるとあまり空を眺めなくなります。成長するほどたいせつなものが地上にばかりあふれるせいか、皮肉なことに、視点が空へ近づいていくほど見上げる機会が少なくなります。製作につき、さまざまな空を観覧しました。勇壮的情緒を喚起する厳かな大空が怖いもの知らずだった幼少期を取り立て、根拠なき自信に満ち溢れた少年時代が空の色とともにあったことを知らしめられるようでした。子どもは空を眺め、その都度燃えさかるような情熱やうららかな希望、そしてわずかばかりの郷愁を胸に秘め、また地上を歩き出します。子どもにとっての空は大人が思うよりもずっと身近なものなのかもしれません。見上げる空に何を思うのか、幼少期における空想的心情表現を心がけました。子どもは成長して大人になります。いつか空を見ていた子どもが、いつしか空を見る子どもを見るようになるのです。そうしてバトンが受け継がれ、また次のどこかの子どもへとリレーのように巡っていきます。これまでもこれからも、このリレーのすべてを空はずっと見続けています。少年が空を見上げるとき、空もまた少年を見つめています。