𝟛𝕞𝕚𝕟 𝕤𝕥𝕠𝕣𝕪

「十二月」


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ハンドルを握るその手を、信号待ちのテールランプが赤く染める。忙しなくすぎていく十二月を、何も掴むことができないまま日を数えた。気付けばもうクリスマス。別にいいんだけどさ。商売の良いカモになるまいと虚勢を張ったところで、ただのしがないサラリーマン。クリスマスケーキを買う相手すらいない僕は、そもそもターゲットにすらなっていない。冷酷なクリスマス。


中規模商業施設の中に店を構える手頃な鮨屋で、瓶ビールを注ぎながら一向に上手くならない黄一色なグラスに向けてため息をついた。もちろん、負け組ではない。むしろ勝ち組だ。今日こそしっかりと「日本(Nippon)」を味わおうではないか。茶碗蒸しの完成され尽くした味わいの底知れない魅力を語るには、あまりにもぴったりな今日この頃に人生のいろはを感じながら虚空を仰ぐ。

あと七日で今年も幕を閉じ、そして開ける。「毎日」に追われ過ごすたび、人というものは慣れ、そしてしばしば見失う。

自分も、大切なものも。


寂しくなっても、いいよ。

当たりたくなっても、いいよ。

もう無理しなくて、いいよ。

頑張った君も好きだけど、そのまんまもきっと

いいと思うよ。


そう自分に言えたなら、どれだけ強くなれたかな。そう君に胸を張って言えたなら、どんなに笑い合えたかな。たくさん泣いて、笑おうね。明日も明後日もその先も。毎日何かに追われても、もっと大きな幸せに追われていようね。

明日もまた、笑おうね。

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𝟛𝕞𝕚𝕟 𝕤𝕥𝕠𝕣𝕪By 廣野ノブユキ