11:37_カイ
___________ホーソーゴキ↓__________
カイトーク
_ブルーピリオド展
「皆さんの思い出の場所で自由に絵を描きましょう!」
担任の三浦先生は小学六年生の僕たちに丁寧語で指示をした。その指示を皮切りに、皆教室から飛び出していった。絵具道具一式をもっていく者もいれば、鉛筆と画用紙だけを持っていく者もいた。僕は後者だった。思い出の場所として最初に思い浮かんだのは図書室だった。毎週毎週通っては母に頼まれていたハリーポッターとどの授業でも習ったことのない偉人の伝記を借りていた。しかし、あの本の多さを鉛筆で書くのは大変そうだと思い直し、僕はグラウンドに出た。グラウンドにはクラスメートが沢山いて、なんだか少し恥ずかしくなった。皆と同じ考えなのか、そう思った僕は校庭の隅に走った。単に誰もいない場所がそこくらいしかなかったからだ。ジャングルジム、雲梯、上り棒のもっと奥、そこには大きな木が一本生えていた。何の思い出もないが、木の幹の表面のうねるような隆起、わさわさと風に揺れる葉叢の一枚一枚、そこからもれる陽の光まで、丁寧に丁寧に鉛筆一本で描き上げた。僕には木しか描くものがなかったので、一番に教室に戻ってくることができた。そんな僕を不思議に思ったのか、三浦先生は何も言わず、僕に近寄ってきて、机の上に広がっている絵をじっとりと見て、笑顔を崩さずにまた教卓の方に戻っていった。その反応を見て、僕は大変満足した。その勢いのままに色塗りに移った。
葉は緑、木は黒色、陽の光は黄色。
混色や色を薄めることなど知らぬ僕は絵具をそのまま筆に付けて画用紙に乗せていった。
下書きの段階での丁寧な筆跡はすべて塗り潰され、出来上がった絵は、横にしたら、ジャマイカの国旗みたいだった。
僕の思い出の場所はジャマイカだったらしい。
(文責_カイ)"
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