田舎坊主の読み聞かせ法話

田舎坊主の愛別離苦<父が逝き、母も逝き>ーY子さんの死ー


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子どもたちが施主となり、無事葬儀を済ませ、中陰(ちゆういん)の飾りもまだ半ばの四七日の日に、今度はY子さんが亡くなったと電話が入った。

ご主人が亡くなったショック、自分自身が退院まもなく体力が回復していなかったこと、ご主人の最期の世話をできなかった心残り、すべてがこの日の死に結びついたのかも知れない。

しかし、子どもたちにとって母の死の原因はそれだけではなかった。父が母を連れていったと思ったのだ。そしてそう思う理由があった。

それは父自身が死期を悟ったころ、「お父さんが死んだら、お前たちにお母さんの世話をさせなあかんのが可哀想や、だからお母さんを連れていく・・・」

と話したのだ。

優しさの思い合いは、不思議にもそんなあり得ないことを、悲しい現実にしてしまった。

お嬢さんたちにとって、父が逝き母が逝ったこの年の正月は、忘れることのできない、重くてつらい新年のはじまりとなった。

<子どもたちへ贈った説話>

 両親の満中陰の席で、次のような話をした。

この正月は大変やったね。

ひと月の間に、お父さんとお母さんを見送ったんだから。

 でも満中陰を迎え、こころこもったいっぱいの供養で喜んでいると思いますよ。

私たちには例外なく必ず最期の日がやってきます。

つい何年か前まで、この田舎でも野辺の送りがあって、棺の周りには、いろんな役を持った人がつき従い、お墓まで行きました。

ある人は大きな幡を持ち、ある人はドラを鳴らし、ある人は鐘を打ち、行列して進みます。

その音を聞いて、畑で仕事をしている人も、通りすがりの人も、近所の家の人もみんな手を合わせ、亡き人を送ります。

棺に収められた故人を偲んで手を合わせます。

でも、あの棺の中に明日、自分が入ると思って手を合わせる人はほとんどいません。自分はとりあえず死なないと思っています。

でもほんとうは、自分が明日、棺に入るかも知れないのです。

野辺の送りは「今度はあなたかも知れませんよ。いい生き方をして下さいね」と教えてくれているんです。

いつかわからないことを念頭において生きれば、他人に憎まれ口をいわないようにしよう。友人とは温かい接し方をしよう。

  家族には優しい言葉でかかわろう。今生きてる時間を大切に価値あるものにしよう。そう考えるようになります。

そのことに気づかせてくれるのが「死」であり、「葬儀」なんですね。

でも、大変な試練だけど、考えようによっては、お父さんとお母さんが一緒に行けるのは、幸せなことかも知れません。

両親が幸せと思えたら、少しこころは楽になると思うよ。

しっかり供養してあげることで、この試練は必ず乗り越えられると思うよ。

そして「大切な生き方をしなさい」と上からきっと見守ってくれると思うよ。

合掌

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7月からのシーズン3の読み聞かせ法話の本は

2009年に出版した「田舎坊主の愛別離苦」です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒