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葬式ではSさんの威徳を讃えるとともに、兄弟たちを三本の矢に喩え、意を込めて、次のような故人に対する祭文、諷誦文(ふじゆもん)を読み上げた。
敬って白(もう)す諷誦文(ふじゆもん)のこと
それ飯盛龍門の峰々、今、初冬のよそおい急ぎ秋葉を落とし、
人世の有り様まさに自然の移ろいを通して諄々たる諭しの教え説くが如し。
季節の輪廻、やがて爛漫の春巡り来たると雖も、
人の命たるや再び青春の日は訪れず。
顧みるに氏は大正○年春、○○の長子として受け難き人身に生を受く。
されど赤貧極める一家に生まれ来る五人の兄弟、
まさに奉公修行のみが父母を助くる所業なり。
ましてや長男たる故人は兄弟の幸せのみ念ずるが故、
長ずるにこの地にて欄間製造業を起こし、
その後、欄間建具製造専門店としてその名声たるや県内に留まらず、
民家旧家は言うに及ばず、寺院仏閣の本堂庫裡を手がけるも、
その数、百指に足らず。
その奉仕奉納の功徳たるや余人を寄せ付けず。
その余慶に鑑み、院号を贈る。
然りと雖も、哀しいかな栄枯盛衰は氏を例外とせず。
閑風身を梳るが如く建築様式の変容は古来熟練の手法も必要とされず、今に至りて事業縮小の一途も事実なり。
今こそ三本の矢羽を重ね、心壱つにて精進するは
往時の隆盛、今、再び招来せし所以なり。
加うるに大正・昭和・平成の御世を言い尽くせぬ苦労で乗り越え、
今天寿にて兜卒天上に往生せし故人に対し、
子供ら合い寄り職僧を招聘し真言秘密の法筵を開き、
厳儀を修するは親孝行、これに勝るものは無し。
仰ぎ願わくば尊霊速やかに阿字の蓮台に上り、
我らが微供を納受せられんことを。
乃至法界平等利益 六身眷属如意円満の為
平成○○年十二月○日 導師 良恒 敬って白(もう)す
(大意)
飯盛山や龍門山は初冬のよそおいのため、紅葉を落としはじめています。自然は四季の変化を通して、
人生や社会のありかたを教えてくれているものです。
季節がめぐり、春になって満開の桜の花を見ることができても、
人の命はめぐって戻ってくるものではありません。
あなたは大正○年の春、○○の長男として生を受けました。
しかし貧しさの上、五人もの兄弟たちは、
両親と家計を助けるため奉公に出てがんばりました。
ましてや長男であるあなたは、ただただ家族の幸せのみを考え、
苦労の末、当地で欄間(らんま)建具製造専門店をはじめました。
その後、会社は大きくなり、その名声は県内にとどまりませんでした。
そしてその事業は民家や旧家だけでなく、
寺院仏閣の本堂庫裡も手がけるようになり、
その数は百件以上に及びました。
その奉仕の心で奉納することはまさに功徳であり、
他の人は全く及びませんでした。
また人間を大切にする生き方は他の人の及ぶところではありませんでした。
そのすばらしさを思いこの院号を贈ります。
しかし栄枯盛衰は世の習いで、Sさんも例外ではありませんでした。
厳しい風が身を削るように、建築様式も時代の流れで洋風に変わり、
熟練のわざも必要でなくなりました。
そのため事業は縮小せざるを得ませんでした。
今こそ、兄弟三人が力を合わせ、心を一つにして努力すれば、
かつての勢いも必ず取り戻せると思います。
しかも大正・昭和・平成の三代をいうにいわれぬ苦労で乗り越え、
天寿を全うして安楽浄土におもむいた故人に対し、
子供たちが寄りそい、このような立派な葬儀をするは
最高の親孝行だといえます。
どうか仏の国にてこの兄弟たちの思いを受け止めてください。
すべてにご利益があり
親戚親類縁者が円満でありますように
合掌
・・・・・・・・・・・・・・・
7月からのシーズン3の読み聞かせ法話の本は
2009年に出版した「田舎坊主の愛別離苦」です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
田舎坊主シリーズ
「田舎坊主の合掌」https://amzn.to/3BTVafF
各ネット書店、全国の主要書店で発売中です。
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電子書籍版は
・アマゾン(Amazon Kindleストア)
・ラクテン(楽天Kobo電子書籍ストア)
にて販売されています
葬式ではSさんの威徳を讃えるとともに、兄弟たちを三本の矢に喩え、意を込めて、次のような故人に対する祭文、諷誦文(ふじゆもん)を読み上げた。
敬って白(もう)す諷誦文(ふじゆもん)のこと
それ飯盛龍門の峰々、今、初冬のよそおい急ぎ秋葉を落とし、
人世の有り様まさに自然の移ろいを通して諄々たる諭しの教え説くが如し。
季節の輪廻、やがて爛漫の春巡り来たると雖も、
人の命たるや再び青春の日は訪れず。
顧みるに氏は大正○年春、○○の長子として受け難き人身に生を受く。
されど赤貧極める一家に生まれ来る五人の兄弟、
まさに奉公修行のみが父母を助くる所業なり。
ましてや長男たる故人は兄弟の幸せのみ念ずるが故、
長ずるにこの地にて欄間製造業を起こし、
その後、欄間建具製造専門店としてその名声たるや県内に留まらず、
民家旧家は言うに及ばず、寺院仏閣の本堂庫裡を手がけるも、
その数、百指に足らず。
その奉仕奉納の功徳たるや余人を寄せ付けず。
その余慶に鑑み、院号を贈る。
然りと雖も、哀しいかな栄枯盛衰は氏を例外とせず。
閑風身を梳るが如く建築様式の変容は古来熟練の手法も必要とされず、今に至りて事業縮小の一途も事実なり。
今こそ三本の矢羽を重ね、心壱つにて精進するは
往時の隆盛、今、再び招来せし所以なり。
加うるに大正・昭和・平成の御世を言い尽くせぬ苦労で乗り越え、
今天寿にて兜卒天上に往生せし故人に対し、
子供ら合い寄り職僧を招聘し真言秘密の法筵を開き、
厳儀を修するは親孝行、これに勝るものは無し。
仰ぎ願わくば尊霊速やかに阿字の蓮台に上り、
我らが微供を納受せられんことを。
乃至法界平等利益 六身眷属如意円満の為
平成○○年十二月○日 導師 良恒 敬って白(もう)す
(大意)
飯盛山や龍門山は初冬のよそおいのため、紅葉を落としはじめています。自然は四季の変化を通して、
人生や社会のありかたを教えてくれているものです。
季節がめぐり、春になって満開の桜の花を見ることができても、
人の命はめぐって戻ってくるものではありません。
あなたは大正○年の春、○○の長男として生を受けました。
しかし貧しさの上、五人もの兄弟たちは、
両親と家計を助けるため奉公に出てがんばりました。
ましてや長男であるあなたは、ただただ家族の幸せのみを考え、
苦労の末、当地で欄間(らんま)建具製造専門店をはじめました。
その後、会社は大きくなり、その名声は県内にとどまりませんでした。
そしてその事業は民家や旧家だけでなく、
寺院仏閣の本堂庫裡も手がけるようになり、
その数は百件以上に及びました。
その奉仕の心で奉納することはまさに功徳であり、
他の人は全く及びませんでした。
また人間を大切にする生き方は他の人の及ぶところではありませんでした。
そのすばらしさを思いこの院号を贈ります。
しかし栄枯盛衰は世の習いで、Sさんも例外ではありませんでした。
厳しい風が身を削るように、建築様式も時代の流れで洋風に変わり、
熟練のわざも必要でなくなりました。
そのため事業は縮小せざるを得ませんでした。
今こそ、兄弟三人が力を合わせ、心を一つにして努力すれば、
かつての勢いも必ず取り戻せると思います。
しかも大正・昭和・平成の三代をいうにいわれぬ苦労で乗り越え、
天寿を全うして安楽浄土におもむいた故人に対し、
子供たちが寄りそい、このような立派な葬儀をするは
最高の親孝行だといえます。
どうか仏の国にてこの兄弟たちの思いを受け止めてください。
すべてにご利益があり
親戚親類縁者が円満でありますように
合掌
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2009年に出版した「田舎坊主の愛別離苦」です。
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