田舎坊主の読み聞かせ法話

田舎坊主の愛別離苦<戦争では平和になれない>ー最後の慰霊祭表白文ー


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戦後50年を迎えた年、私の町では最後の戦没者慰霊祭が開催された。

最後となったのは、戦後50年を迎えた節目であるため、遺族が高齢化して慰霊祭の継続が困難となったためである。

毎年、遺族団体が主催し、宗派を問わず町内全ての僧侶(そうりよ)が参加して仏式で行われてきたものだが、この最後の慰霊祭の導師を私が務めさせていただくことになった。

その慰霊祭で、次のような表白(ひようはく)文(ぶん)を献読(けんどく)した。


 表白文

敬って真言教主大日如来両部界会(りようぶかいえ)、諸尊聖衆(しようじゆ)、

殊には宗祖弘法大師等総じては仏眼(ぶつげん)所生(しよしよう)一切三宝の境界に

白(もう)してもうさく。

夫(そ)れ惟(おもんみ)るに人、世の悲劇、国家の不幸、

戦争より大なるは無し。

殊に近代戦争は一朝にして千年の歴史を葬り、

一夜にして都鄙(とひ)を廃墟と化し、

幾百万の人命を一瞬にして奪う。

誠に慄然(りつぜん)たるもの有り。

今、征戦逝(ゆ)いて五十年、

戦禍なき半世紀は未曾有の発展と平和を招来せしと雖(いえど)も、

戦没諸霊の犠牲無くんば有り得べき

昭和平成の現代の日本なり。

ここに我ら等しく讃仰(さんぎよう)の至誠(しせい)を捧ぐる所以(ゆえん)なり。

然(しか)りと雖も、今世界を眺むるに

平和と友好の祭典、冬季オリンピック開催地サラエボは

今や弾痕痛々しい廃墟と化し、

イスラム過激派は世界遺産たるバーミヤンの大石仏を

最新兵器で破壊せり。

アフリカには内戦衰えず、未だ戦争の火種尽きること無し。

加うるに地球上に埋もれし数千万の地雷原、

黙々として人を傷つけることによってのみ

その存在を知らしめようと息を潜(ひそ)めり。

ああ悲しいかな哀しいかな、

古来戦禍に傷つき命を落とせし、肉親知人に流せし涙は

四海の水より多く、微塵に輝く星の数より多し。

御仏の教え今こそ肝要なり。

曰(いわ)く懺悔(さんげ)と慈悲の心無尽(むじん)に満たせば

人と人、国と国、必ずや相通ずるべきものなり。

宇宙船地球号に同舟し、他生(たしよう)の縁にて袖を摺(す)り合わせる我々は、

  国違えども、言葉違えども、これまさに曼荼羅荘厳(まんだらしようごん)の世界にて、生きとし生けるもの有りとしあらゆるもの

全て尊き存在と覚(かく)証(しよう)せり。

願わくば英霊諸霊の無上菩提(むじようぼだい)を祈念し、

再び悲劇を繰り返さぬ深甚(しんじん)なる誓願をここに表白し、

我らが微供(びく)を照鑑(しようかん)し速やかに大菩提を成じ、

別しては世界平和の聖業を護念せられんことを。

 乃至法界平等利益(ないしほうかいびようどうりやく)  

 導師良恒 敬って白(もう)す。

(大意)

戦争ほど人の世の悲劇や国家の不幸を引き起こすものはありません。

とくに近代戦争は一瞬にして千年もの歴史を葬ってしまい、

一夜にして都会を廃墟にしてしまいます。

そして何万もの人命を奪ってしまいます。

ほんとうに恐ろしいことです。

戦後五十年が経ちました。

この間、戦争もなく、発展と平和を実感できていますが、

これも戦死された方々の犠牲がなければあり得ない

昭和そして平成の現代であります。

私たちは心からあなた方をお讃えもうしあげます。

しかし今、世界を見てみると、

平和と友好の祭典といわれる冬季オリンピックが開催されたサラエボは、

弾痕痛々しく、まるで廃墟となってしまいました。

またイスラム教原理主義過激派は、

世界の仏教遺産ともいうべきバーミヤンの大石仏を

最新兵器で破壊してしまいました。

さらにアフリカではいまだ内戦がおさまらず、

世界に戦争の火種は尽きることはありません。

しかも地球上に埋設された数千万の地雷は、

誰かが踏みつけ傷つくことによってはじめて、

そこにあることがわかるるまで、

地中で沈黙しているのです。

ほんとうに悲しいことです。

戦争で傷つき命を落とした肉親や知人に流した涙の量は、

大海の水よりも多く、空に輝く星の数よりも多いのです。

今こそ仏の教えが必要なのです。

常に反省し、慈しみの心をいっぱいに満たせば、

人と人、国と国は必ず相通ずるものであります。

宇宙船地球号という星に生き、

仏さまの縁で巡り合っている私たちは、

国が違っても、言葉が違っても、

これこそがマンダラの世界であり、

生きとし生けるもの、有りとしあらゆるもの全てが、

尊い存在だと悟るべきでなのです。

再び戦争を繰り返さないという誓いをあらたにし、

どうか世界が平和でありますようにと祈るとともに、

どうかこれからも私たちをお守りください。

謹んで申し上げます。

導師 良恒

合掌

7月からのシーズン3の読み聞かせ法話の本は

2009年に出版した「田舎坊主の愛別離苦」です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒