田舎坊主の読み聞かせ法話

田舎坊主の愛別離苦<尊敬する老僧>ー寺を継ぐよー


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そんな想いを感じとっていた息子の一人がある日突然、

「わしがあとを継ぐよ」

といってくれたそうだ。

彼は企業の管理職を務めるまでになっていたが、その役職を捨て、一から修行して坊主になるといってくれたという。

N師にとってこんな嬉しいことはなかったが、かといって重要な役職を捨ててまであとを継いでくれるということに、申し訳ない気持でいっぱいになったのも本心であった。


修行を終え、真言僧になるための最大の修行である加行(けぎよう)も成満し、自坊の副住職となった息子のS師は、両親を安心させたのはもちろんのこと、檀家さんも大喜びで彼を迎えた。

彼はN師のいいところを全部引き継いでいて、人あたりなど、親譲りで非の打ち所がないのである。

当然、檀家受けもよく、法事には息子のS師をリクエストされることも多くなってきたことが、N師にとって心地よい幸せでもあった。

二人でお葬式に出仕する場合、親子で檀家に出向き勤めるということができたこのころが、N師にとっては人生最高の幸せを実感していた時間だと思う。


息子の死

  

でも幸せは続かなかった。

しばらくしてもう一人の息子、S師の兄が病魔に冒され、満49歳という若さで急逝したのだ。

N師も坊主として多くの檀家信者に枕経をあげ、引導を渡してきた。

ときには遺族の涙にもらい泣きしたこともある。

若くして亡くなった青年に声を詰まらせながら枕経をあげたこともある。

しかし自分の息子が愛しい嫁と幼い孫たちを遺し、自分たち両親よりも早く旅立ってしまったことはー

これほど悲しいことなのか─。

これほど辛いことなのか─。


その思いは表にこそ出さなかったけれど、そのことは痛いほど伝わってきて、胸が熱くなったことを私は今も覚えている。

合掌

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7月からのシーズン3の読み聞かせ法話の本は

2009年に出版した「田舎坊主の愛別離苦」です。

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田舎坊主シリーズ

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒