田舎坊主の読み聞かせ法話

田舎坊主の求不得苦 <はじめに>


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はじめに

 仏教における「正しい実践」とは、正しいものの見方・考え方・おこない・努力・言葉使いなどの「八正道(はつしようどう)」とよばれるものであり、「苦」の原因とは「ものごとに対する執着」であるとされている。その「執着」を取り除くことによって解放される苦しみが、いわゆる「四苦八苦」だ。

 生・老・病・死の四苦と愛別離苦(別れの苦しみ)・怨憎会苦(いやな者とも付き合わなければならない苦しみ)・求不得苦(欲しいものが手に入らない苦しみ)・五蘊盛苦(心身が盛んなゆえに苦しいこと)の四苦をあわせて「四苦八苦」といい、一般に、人間が生きていることによって苦しみ、難儀することが多い場合によく使われる。

 この四苦八苦のうち、「求不得苦」はもっとも人間の空しさを表しているような気がする。

 「求めても得られない苦しみ」とは、欲しい欲しいと思ってもなかなか思うように手に入れられない、心の葛藤のことなのだろうか。

 子どものころオモチャを買い与えられ、小学校に上がれば自転車を買ってもらい、高校生になればバイクを買ってもらい、大学を出るころにはアルバイト料を貯め、中古の軽四を買い、働き始めてしばらくすればローンを組んで乗用車を買い、愛しい恋人ができ結婚し、ローンを組んでマイホームを手に入れ、やがて可愛い子供が生まれ、人は「幸せ」を感じるのだ。

 そのときどき、欲しいものを手に入れてきたような気がする。

 人生は好みのものを手に持ち、身の回りに置くために働くということなのだ。

 しかし、若くても老いていてもいい、人生の折々にあなたがはじめて手に入れた品々は今でもあなたのそばにあるのだろうか?

 そして手に入れた喜びは今もあって、それを大切にしているのだろうか?

 ともすれば、今は物置の中にも残っていないのでは・・・。

 物も人も心も移ろいやすいものだ。「移ろい」は「空ろい」でもある。

 本来「空」なるもののために生きていることに気付きなさいとの教えなのだと思う。

 ましてや人は必ず死ぬのだ。そんなことは誰でも分かっている。

 無常の風が吹きくれば、今まで「自分のもの」と思っていたものを否応なく「この世」という所に置いていかなければならない。もちろんこの「自分」も「空ろ」なのである。

 そう考えてみると、「求不得苦」は自分が手に入れたときの喜びを、「他」にも与えてそれを喜びとする、いわば執着しない生き方の戒めでもあり、捨てる方法としての「布施」も大切な生き方なのだという仏教の教えなのではないかと思うのだ。

合掌

12月からのシーズン4の読み聞かせ法話の本は

2013年に出版した「田舎坊主の求不得苦」です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒