田舎坊主の読み聞かせ法話

田舎坊主の求不得苦<人の一生>


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人は生まれ、親の愛情を一身に受けて育っていく。

這えば立て、立てば歩めと可愛がられ、保育所に入ってはじめての共同社会生活に仲間入りする。やがて小学校に上がる。入学すれば先生から多くの知力、体力を授けられ、中学校、高等学校に進学する。

そしていよいよ社会人として生きていくため未来を見通して大学を選び、ひたすら勉学に努めるのだ。学を修め、就職活動の末、大学卒業とともに自ら希望する職種を選び、生活を支える職業に就いていく。

着るものは学生服からスーツへと変わり、休日にはおしゃれな洋服や持ち物を身につけ、自家用車を手にする人も多くなる。

やがて結婚し家庭を持ち、子どもにも恵まれ、ローンで新築のマイホームを手に入れる人もいるだろう。

働き盛りを過ぎ、やがて子どもも自立すれば孫と遊ぶことが何よりの楽しみとなる。

その孫も成長すれば、老夫婦は終の棲家を考え始めるのだ。

人は人生においてどれだけの喜怒哀楽を経験するのだろうか。

共同生活になじめず、ぐずって泣いてお腹が痛くなって、時にはなだめすか され、しかられ励まされた子どものころ。

先生のおはなしについていけなかった授業、いくらがんばってもかけっこで 負け続けた小学生のころ。

初恋に敗れ授業が頭に入らず、部活に明け暮れた中学生のころ。

進路が決まらずただ闇雲にアルバイトと受験勉強に明け暮れた高校生時代。

将来の姿が描けず単位を取るためだけに講義に出ていた大学時代。

就職が決まれば「こんなはずじゃなかった」と先輩や上司の顔色をうかがい ながらのサラリーマン生活。

結婚が決まり新居も手に入れ、ローン返済のため必死で働いた。

子どももできればなおさら家族を守るため責任も重くなってくる。

子どもも大きくなって受験時期になれば広い家も必要になってくる。

子どもは親からどんどん離れていくような気がして一抹の寂しさも、空しさ も感じる熟年期に入ってくる。

子どもが独立していくころには夫婦二人の生活も、以前想像していたような 旅行や趣味の時間が思うようにとれなくなる。

身体は病気がちになり病院通いの時間の方が多くなる。

大病を患うこともある。

事故に遭って大けがをすることもある。

家族を失うこともある。

しかし反面、言葉に尽くせない大きな喜びや幸せを味わうこともある。

それが人の一生なんだと思う。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒