田舎坊主の読み聞かせ法話

「田舎の法事 ーバッテリー不足ー」田舎坊主のぶつぶつ説法


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それにしても、最近、般若心経や光明真言など、真言宗の信徒であれば、ほとんどの人が暗唱で唱えられたお経を知らない人が多くなった。

若い人だけではなく、お年寄りも知らない人が多くなったように思う。

テープまかせにしていることばかりでなく、核家族の生活様式が広まり、おじいちゃんやおばあちゃんが仏壇で唱えるのを、子や孫が聞きながら覚えるという時代でなくなったのが、原因なのかも知れない。

今は、仏壇に入ったご先祖さまは、あまり日ごろ般若心経を聞くことがなくなって、

ほとんど「アン、アン」と、拝まれているのだ。

いくら甘いものが好きだったご先祖さまといえども、毎日「アン」ばかりでは、胸が焼けそうだ。

私は、少しでも覚えてくれる人も出てくるのではとの、かすかな望みを抱いて、今も、勤行次第とともに、それをテープに録音して多くの檀家さんに差し上げているが、ところが、このごろ、テープの使い方も変わってきたようなのだ。

先日、お墓参りをしたときのことである。ある地区の町内会の人たちが、一つの墓を中心にして、お経をあげているのだ。

当地では、法事をする当家が町内会に粗供養として、金品を寄付する習慣があるのだが、そのお返しとして、町内会の人たちがお墓参りをしていたのだ。

私は他の家の墓参りを終えたあと、ふと、その人たちのお経をあげる声を聞いていると、とても低い声で、ゆっくりと唱えているのである。 

よく見ると、みんなが囲んでいる墓石の上にはカセットレコーダーが置かれ、私が吹き込んだテープの声にあわせて唱えていたのだ。

まるでお墓を拝んでいるのか、カセットレコーダーを拝んでいるのかわからないようなみんなの格好が、妙に真剣でおかしい。

おつとめが終わったあと、みんなに、

「えらい、ゆっくりお唱えしてたねぇ」

というと、そのテープの持ち主と思われる人が、

「うん、電池がないねん、バッテリ不足やねん」

という返事が返ってきた。

知らないと、バッテリー不足のカセットレコーダーでも、それについていくしかないのだ。

合掌


4月からのシーズン2の読み聞かせ法話の本は

私の初版本で、2002年に出版した「田舎坊主のぶつぶつ説法」です。

後に「田舎坊主シリーズ」とつながる第1弾です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒