田舎坊主の読み聞かせ法話

「田舎の法事 ー餅屋も餅屋だー」田舎坊主のぶつぶつ説法


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お墓からお勤めを終えて帰ると、宴席がひろげられ、当家にとって、これから忙しい時間がはじまるのだが、満中陰の法事のときは、お墓から帰ったとき、坊主が「笠餅(かさもち)」を、弘法大師のご修行姿に切らされることがある。

笠餅とは、満中陰のときだけ49個の小餅と鏡餅一枚を作り、お供えするのだ。

49個は人間の骨の数、鏡餅は骨を覆う皮と肉と言い伝えられ、亡きがら全てを埋葬する土葬習慣のあったところでは、分骨や忌み分けの意味を持っているのだ。

そして、この笠餅のなかの鏡餅を、杖をもち笠をかぶった弘法大師の修行姿に切り分け、その体の部分を持ち帰って食べると、その箇所の病が治るのだと、どこかの誰かが意味付けをしたのだろう。

足が悪い人は足を、手が悪い人は手をもって帰るということになるのだが、現世利益とはいいながら、まことに信じがたい話である。

当家の主人は

「餅屋が、坊さんに切ってもらわないとだめだ」

と言っていたと、私に切らせようとするのだが、私は今まで切ったことがない。というより、きわめてお粗末な迷信には組みしたくないのだ。

私は、

「足の悪い人ばかりお参りに来たら、どうする? お大師さんの足は二本だけやがな。 適当に切って、足や手と思ってもって帰ればいいやないか。それが観念するということや。足が足らなければ不足、みんなが足を持って帰れれば満足ってなるやろ。なんでも人間観念したら腹がすわるって言うでぇ」

と、丁重にお断りするが、それでも

「院家さんは、よう切らんのちがうか。よう切らんのやったら、餅屋がくれた、切り方コピーした紙、見せたってもええで」

と、減らず口をたたく檀家もある。

昔は、「餅屋は餅屋」と、その仕上げの立派さを褒めて言ったものだが、こんなものをコピーするようでは、「餅屋も餅屋だ」と言いたくなる。

合掌


4月からのシーズン2の読み聞かせ法話の本は

私の初版本で、2002年に出版した「田舎坊主のぶつぶつ説法」です。

後に「田舎坊主シリーズ」とつながる第1弾です。

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田舎坊主の読み聞かせ法話By 田舎坊主 森田良恒