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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
<われらの法学 9(売買・不動産取引・動産取引)>
ラジオ収録20200623
村田彰『リーガルスタディー現代法学入門』(中央経済社・2018年)参照
1 売買契約
諾成・不要式・双務契約
売買の予約(将来、本契約を成立させることを事前に合意しておくこと)
売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる(民556条1項)
※ 「売買一方の予約」→通常、将来の売買契約で買主となる者に予約完結権あり
(予約完結の)意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う(民556条2項)。
手付(代金の一部を当事者の一方が他方に交付)
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない(会社557条1項)。
売買の効力
売主の目的物の財産権移転義務(民555条)
売主の契約不適合責任(特定物・不特定物を問わない)
→買主の解除権(民546条)、損害賠償請求権(民546条)、追完請求権(修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し、民562条)、代金減額請求権(民563条)
2 不動産取引
不動産とは
不動産=土地およびその定着物(民85条)
定着物=家屋、土地に存在する樹木、石垣、溝、トンネル等)
不動産取引
不動産売買契約
売主は買主に対して、代金を支払えという債権を取得
買主は売主に対して、所有権を移転せよという債権を取得
物権変動
物権変動の意思主義(民176条)→意思表示で所有権が移転
→二重譲渡の危険→所有者Aから意思表示で所有権の移転を受けたBとCは、所有権を相争う関係(対抗関係)
→AまたはBは、第三者(Bから見てC、Cから見てB)に対して、不動産登記(対抗要件)を備えなければ対抗できない(民177条)
→Cが先に所有権移転登記をした場合、BはCに対抗できない。
※たとえ、Cが先行取引であるAB間の取引を単に知っていたとしても(単純悪意)
ただし、Cが背信的悪意者ならば、Bは所有権を取得できる。
※背信的悪意者とは?
「実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者であって」(最判昭和43・8・2民集22・8・1571)
「山林の贈与に関して、山林が受贈者の所有に属することを確認し、贈与者は速やかに受贈者に対してその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において、立会人として示談交渉に関与し、和解条項を記載した書面に署名捺印した者が背信的悪意者に当たるとされた事例」(最判昭和43・11・15民集22・12・2671)
「甲による不動産の取得時効完成後に当該不動産を前主から譲り受けて所有権移転登記を了した乙が、譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情があるときは、乙は背信的悪意者に当たる」(最判平成18・1・17民集15・7・1903)
3 動産取引
動産物権変動
動産=不動産以外の物で、管理・支配が可能な物
物とは有体物をいう(民85条)
電気は、財物とみなす(刑245条)
物権変動意思主義(民176条)
動産売買=動産所有権の移転
動産物権変動の対抗要件
動産物権の移転は意思表示だけでは目に見えない→公示が必要
動産物権の公示方法=占有=物を事実上支配していること
動産物権の移転=占有の移転=引渡し
引渡し
現実の引渡し
簡易の引渡し(譲受人がすでに所持している物について意思表示だけで引渡しを行う)
占有改定(譲渡人が現実に所持しており、譲渡後も所持をし続ける場合に、占有移転の合意だけで引渡しを行う)
指図による占有移転(目的物を第三者が所持している場合に、譲渡人がその第三者に対して、以後、譲受人のために占有すべき旨を指図)
※②~④は観念的引渡し←取引の便宜を図るために公示方法として認められた。
動産物権移転の対抗要件=引渡し(民178条)
即時取得制度
動産物権の公示=占有
しかし、占有物が借り物だったら?→占有者に処分権なし
※他人の物の占有者が勝手に第三者に占有物を譲渡した場合はどうなるか?
無権利者から動産を譲り受けたらどうなるか?
→真の所有者と他人の占有を信頼した第三者のどちらを保護すべき?
占有には公信力あり
真の所有者<平穏公然善意無過失の第三者 (取引の安全)
「即時取得」→取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する(民192条)
即時取得の要件
目的物が動産
前主が無権利者
前主から取引行為により動産の占有を取得
平穏かつ公然と動産の占有を開始し、前主が無権利であることについて取得者が善意無過失
盗品または遺失物の回復(特則)
占有物が盗品または遺失物であるときは、被害者または遺失者は、盗品または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる(民193条)
真の所有者(被害者・遺失者)>平穏公然善意無過失の第三者
占有者が、盗品または遺失物を、競売もしくは公の市場において、またはその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者または遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない(民194条)
※ 参考図書 三島由紀夫 『午後の曳航』
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
<われらの法学 9(売買・不動産取引・動産取引)>
ラジオ収録20200623
村田彰『リーガルスタディー現代法学入門』(中央経済社・2018年)参照
1 売買契約
諾成・不要式・双務契約
売買の予約(将来、本契約を成立させることを事前に合意しておくこと)
売買の一方の予約は、相手方が売買を完結する意思を表示した時から、売買の効力を生ずる(民556条1項)
※ 「売買一方の予約」→通常、将来の売買契約で買主となる者に予約完結権あり
(予約完結の)意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う(民556条2項)。
手付(代金の一部を当事者の一方が他方に交付)
買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない(会社557条1項)。
売買の効力
売主の目的物の財産権移転義務(民555条)
売主の契約不適合責任(特定物・不特定物を問わない)
→買主の解除権(民546条)、損害賠償請求権(民546条)、追完請求権(修補・代替物の引渡し・不足分の引渡し、民562条)、代金減額請求権(民563条)
2 不動産取引
不動産とは
不動産=土地およびその定着物(民85条)
定着物=家屋、土地に存在する樹木、石垣、溝、トンネル等)
不動産取引
不動産売買契約
売主は買主に対して、代金を支払えという債権を取得
買主は売主に対して、所有権を移転せよという債権を取得
物権変動
物権変動の意思主義(民176条)→意思表示で所有権が移転
→二重譲渡の危険→所有者Aから意思表示で所有権の移転を受けたBとCは、所有権を相争う関係(対抗関係)
→AまたはBは、第三者(Bから見てC、Cから見てB)に対して、不動産登記(対抗要件)を備えなければ対抗できない(民177条)
→Cが先に所有権移転登記をした場合、BはCに対抗できない。
※たとえ、Cが先行取引であるAB間の取引を単に知っていたとしても(単純悪意)
ただし、Cが背信的悪意者ならば、Bは所有権を取得できる。
※背信的悪意者とは?
「実体上物権変動があった事実を知る者において右物権変動についての登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情がある場合には、かかる背信的悪意者は、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有しない者であって」(最判昭和43・8・2民集22・8・1571)
「山林の贈与に関して、山林が受贈者の所有に属することを確認し、贈与者は速やかに受贈者に対してその所有権移転登記手続をする旨の和解が成立した場合において、立会人として示談交渉に関与し、和解条項を記載した書面に署名捺印した者が背信的悪意者に当たるとされた事例」(最判昭和43・11・15民集22・12・2671)
「甲による不動産の取得時効完成後に当該不動産を前主から譲り受けて所有権移転登記を了した乙が、譲渡を受けた時点において、甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、甲の登記の欠缺を主張することが信義に反すると認められる事情があるときは、乙は背信的悪意者に当たる」(最判平成18・1・17民集15・7・1903)
3 動産取引
動産物権変動
動産=不動産以外の物で、管理・支配が可能な物
物とは有体物をいう(民85条)
電気は、財物とみなす(刑245条)
物権変動意思主義(民176条)
動産売買=動産所有権の移転
動産物権変動の対抗要件
動産物権の移転は意思表示だけでは目に見えない→公示が必要
動産物権の公示方法=占有=物を事実上支配していること
動産物権の移転=占有の移転=引渡し
引渡し
現実の引渡し
簡易の引渡し(譲受人がすでに所持している物について意思表示だけで引渡しを行う)
占有改定(譲渡人が現実に所持しており、譲渡後も所持をし続ける場合に、占有移転の合意だけで引渡しを行う)
指図による占有移転(目的物を第三者が所持している場合に、譲渡人がその第三者に対して、以後、譲受人のために占有すべき旨を指図)
※②~④は観念的引渡し←取引の便宜を図るために公示方法として認められた。
動産物権移転の対抗要件=引渡し(民178条)
即時取得制度
動産物権の公示=占有
しかし、占有物が借り物だったら?→占有者に処分権なし
※他人の物の占有者が勝手に第三者に占有物を譲渡した場合はどうなるか?
無権利者から動産を譲り受けたらどうなるか?
→真の所有者と他人の占有を信頼した第三者のどちらを保護すべき?
占有には公信力あり
真の所有者<平穏公然善意無過失の第三者 (取引の安全)
「即時取得」→取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する(民192条)
即時取得の要件
目的物が動産
前主が無権利者
前主から取引行為により動産の占有を取得
平穏かつ公然と動産の占有を開始し、前主が無権利であることについて取得者が善意無過失
盗品または遺失物の回復(特則)
占有物が盗品または遺失物であるときは、被害者または遺失者は、盗品または遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる(民193条)
真の所有者(被害者・遺失者)>平穏公然善意無過失の第三者
占有者が、盗品または遺失物を、競売もしくは公の市場において、またはその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者または遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない(民194条)
※ 参考図書 三島由紀夫 『午後の曳航』