われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの法学入门15 有价证券


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


パーソナリティー 楠元純一郎  東洋大学教授       

パーソナリティー レオー        美術家            

ゲスト                   松尾欣治   哲学者・大学外部総合評価者




<LeoNRadioわれらの法学入門15(有価証券)>

ラジオ収録20201003


講師 楠元純一郎(法学者)

録音師 レオー(美術家)

質問者 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)



1有価証券の意義


 有価証券→財産的価値ある私権を表章する証券(紙片)であり、権利の発生、移転、行使の全部または一部の場面において当該証券を必要とするものである。有価証券は、本来、目に見えない権利が証券上表章されることによって、権利の譲渡や行使の点で利便性が高まる。

民法の一般原則上、権利を譲渡するには?

譲渡の効力発生要件→当事者間の合意(意思表示)・債務者の承諾不要(民466条)

譲渡の第三者に対する対抗要件→債務者に対する通知または債務者の承諾(民467条)


 債権者(100万円の貸主)A   ← 金銭消費貸借契約 → 債務者(100万円の借主)B

             →貸金返還請求権(債権)→ ↑

     ↓  債権譲渡                                                           |

     C(新しい債権者)--------------------------------------


 具体的には、手形(手1条以下、75条以下)、小切手(小1条以下)、株券(会社214条以下)、新株予約権証券(会社288条以下)、新株予約権付社債券(会社292条)、社債券(会社696条以下)、倉荷証券(商600条以下)、船荷証券(商757条以下)、抵当証券(抵当1条以下)等。なお、金商法上は、証券がなくても有価証券とみなされる場合(みなし有価証券)がある(金商2条2項1号〜7号)。


有価証券は、一般に、①記名証券(記名式所持人払証券・それ以外の記名証券)、②指図証券、③無記名証券に分かれる。


記名証券とは、特定の債権者が証券上、記載されている証券である。記名証券には、記名式所持人払証券とそれ以外がある。記名式所持人払証券は、証券上、特定の権利者が記載されている有価証券であって、その所持人に弁済をすべき旨が付記されているものである。証券上の権利の移転には証券の交付が、権利の行使には証券の呈示が必要であり、第三者への対抗要件としては、債務者への通知または債務者の承諾が必要である(民467条)。


      A(債権者)  →  100万円貸与 →B(債務者)

         ↓   ←記名証券の振出←     ↑

  記名証券の交付↓    (Aの名が記載)  | 通知・承諾

         ↓                                                 |

         C ――――――――――――ー→

指図債権とは、特定の債権者が証券上、記載されており、裏書によって譲渡可能な証券である。指図(裏書)禁止でない約束手形、為替手形、小切手、船荷証券、倉荷証券等は当然の指図証券である。

     A(債権者)  →  100万円貸与  →B(債務者)

         ↓  ←指図証券の振出←       ↑

    証券の裏書↓    (Aの名が記載)  | 通知・承諾不要

         ↓                                                  |

         C ――――――――――――--→↑    

         ↓                                                  |

      裏書 ↓                                                  |

         ↓                                                  |

         D―――――――――――――→↑


無記名証券とは、特定の債権者が証券上、記載されていない証券であり、その証券の所持人(持参人)が権利を行使でき(持参人払証券)、または証券の交付によってのみ権利を譲渡することができる証券である。持参人払式小切手(小5条1項3号)は無記名証券である。

      A ――――――――――→ B

                       ↓ ←―無記名証券――   ↑ 通知・承諾不要

  証券の交付↓ (Aの名前は不記載) ↑ 証券を呈示しさえすればよい

       ↓                                         ↑

       C――――――――――ー→


 個別の有価証券は以上のような特別法に各別の規定があるが、これらの有価証券の定義については統一的な規定は存在しない。中には、特別な根拠法のない有価証券もあったり、根拠法があっても特別な定めのない事項があったりする。その場合、一般法としての民法の有価証券に関する通則が適用される。


2017年民法改正に伴う商法改正前の旧商法には、指図債権等の証券の提示と履行遅滞、有価証券喪失の場合の権利行使方法、有価証券の譲渡方法および善意取得、取引時間について規定があった(旧商517条~520)。しかし、これらの規定が商法中に存在することに問題があるとされたため、同条は削除され、新たに2017年改正民法において、有価証券の通則が規定された(民520条の3・4・5、520条の14・15、520条の20)。


このように、有価証券の規定が商行為通則から削除されたとはいえ、「手形その他の商業証券に関する行為」が商行為であることから(商501条4号)、本書では、民法上の有価証券の通則について説明する。


2 各有価証券の法的性質

(1)有価証券の譲渡

   記名証券の譲渡方法→債権譲渡の方式(民467条)

                →ただし、有価証券なので呈示・交付も必要

             ※裏書(指図)禁止の有価証券と同様

   指図証券の譲渡方法→裏書が必要(民530条の3)

             裏書の連続がある場合の所持人

              →適法な権利者と推定(民520条の4)

無記名証券(持参人払証券)→証券の交付によってのみ権利の譲渡ができる。

              所持人は証券を所持しているだけで権利を行使できる。


(2)有価証券の善意取得

   記名証券(記名式所持人払証券)

       →譲渡人を権利者であると善意・無重過失で信じて

        証券の交付によって権利を譲り受けた場合、

        当該証券を善意取得できる(民520条の15,520条の20)

   記名式所持人払証券以外の記名証券→善意取得制度なし

   指図証券→裏書の連続する証券を所持する譲渡人を権利者であると

       善意・無重過失で信じて裏書によってその証券を譲り受けた場合、

       当該証券を善意取得できる(民520条の5)。

   無記名証券→善意取得できる(民520条の20)


(3)有価証券の権利行使

   記名式所持人払証券の弁済→債務者の現在の住所(営業所)(民520条の18)

   記名式所持人払証券以外の記名証券の弁済→債権者の住所(民484条)→債権者が特定されているから、債務者にとって債権者のところに持参して弁済することが可能だから。

指図証券→同上(民520条の8)

   無記名証券→同上(民520条の20)


   記名式所持人払証券、指図証券、無記名証券の債務者の遅滞の責任→弁済期限到来後、証券の呈示があった時から遅滞の責任を負う(民520の18、520の9、520の20)。


(4)有価証券の喪失

   記名式所持人払証券→有価証券を喪失した者は、裁判所に公示催告の申立てが

    できる(民520条の18)。→非訟事件手続法

   記名式所持人払証券以外の記名証券→同上(民520条の19第2項)

   指図証券→同上(民520条の11)

無記名証券→同上(民520条の20)


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