われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの会社法03 结合案例才是学法律的最优解 公司的商人性质 公司的权力能力


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


パーソナリティー・講師    東洋大学教授       楠元純一郎

パーソナリティー・録音師  美術家            レオー

常連ゲスト           哲学者・大学外部総合評価者  松尾欣治

常連ゲスト           岡山大学教授・弁護士  張紅




<<われらの会社法第3回(会社の商人性、会社の権利能力)>>

1 会社の商人性

 会社は商人であるとされますが、どうしてでしょうか?

 固有の商人は、自己の名をもって商行為をすることを業とする者(商4条1項)です。自己の名をもってとは自己に法律効果が帰属する意味であり、会社は法人ですから法律効果の帰属主体ですからその要件を満たします。会社が商行為を営利の目的で反復継続すれば、商行為を業として行うという要件も満たすため、会社は商人であるといえましょう。また、仮に、会社が絶対的商行為も営業的商行為もしない場合であっても、会社がその事業として、または、事業のためにする行為は商行為とされることから(会社5条)、いずれにせよ、会社は商人であるといえるでしょう。

 では、会社の行為はすべて商行為でしょうか?会社法5条によれば、会社が事業としてする行為か事業のためにする行為は商行為とされますが、論理的にそれ以外の行為は商行為とはならないはずです。つまり、代表者の事業と関係のない個人的な行為については、法律効果が会社に帰属しないのではないか?という問題があります。

 商法503条2項によれば、商人の行為はその営業のためにするものであると推定するという規定があります。営業とは会社の場合、事業と同義と解されるので、商人としての会社の行為も事業のためにするものと推定されますから、商人の行為が事業のためにするものであるかどうかは、それを争う者における主張・立証の問題であるといえます。次の判例を参考にして、そのことについて考えてみてください。なお、判例中の赤は強調するために私が入れたものです。

<判例(最判平成20・2・22民集62・2・576)>

平成19(受)528  所有権移転登記抹消登記手続等請求本訴,貸金請求反訴,所有権移転登記抹消登記手続請求事件

平成20年2月22日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  福岡高等裁判所

主 文

原判決中被上告人に関する上告人の敗訴部分を破棄す

る。

前項の部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理 由

上告代理人冨山敦,同森田孝久の上告受理申立て理由第7の3について

1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人は,砂の採取及び販売等を目的とする有限会社法の規定による有

限会社であったが,現在,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条

1項に基づき,会社法の規定による株式会社として存続している。Aは,被上告人

の代表取締役である。

(2) 上告人は,平成6年7月26日当時第1審判決別紙1物件目録記載1及び

2の不動産(以下「本件不動産」という。)を所有していた。

(3) 本件不動産には,佐賀地方法務局唐津支局平成6年7月26日受付第86

90号をもって,原因を平成3年5月7日金銭消費貸借平成6年7月26日設定,

債権額を5000万円,債務者を上告人,抵当権者を被上告人とする抵当権(以下

「本件抵当権」という。)の設定登記(以下「本件抵当権設定登記」という。)が

されている。

(4) 本件本訴は,上告人が被上告人に対し,本件不動産の所有権に基づき,本

件抵当権設定登記の抹消登記手続を求めるものである。本件反訴は,被上告人が上

告人に対し,主位的請求として,被上告人は平成3年5月7日上告人に1億円を貸

し付けたと主張して,残元本9498万4440円及び遅延損害金の支払を求め,

予備的請求として,被上告人は前同日Bに1億円を貸し付け,上告人がBの債務を

連帯保証したと主張して,主位的請求と同額の金員の支払を求めるものである。被

上告人は,本件抵当権の被担保債権は反訴請求に係る債権であると主張している。

(5) 上告人は,平成17年11月1日の原審第1回口頭弁論期日において,反

訴請求に係る債権につき商法522条所定の5年の消滅時効が完成しているとし

て,これを援用した。

2 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の本訴請

求を棄却すべきものとし,被上告人の反訴請求を一部認容した。

被上告人は,平成3年5月7日,上告人又はBに対して,返済期日を平成3年7

月31日として1億円を貸し付けたものであるところ,その借主が上告人であれば

もちろんのこと,たとえそれがBであるとしても上告人はBの債務を連帯保証した

というべきであるから,いずれにせよ上告人は被上告人に対して1億円の債務を負

っていたことになり,そして,その残元本は8300万円となっている。

被上告人の代表取締役であるAは,小中学校の同窓であり,C商工会の理事長

(A)と理事(上告人)として親交のあった上告人からの依頼を受け,博多駅前の

土地を整理して転売するために1億円を必要としていたBの資金に充てるため,

「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で,自己が代表取締役を務める有限会

社である被上告人において上告人の依頼に応じることとし,上告人が竹馬の友であ

ることを強調して,被上告人の経理担当者をして,被上告人がその取引銀行から融

資を受けるための手続をさせ,融資を受けた1億円を被上告人が上告人又はBに貸

し付けた(以下,この貸付けを「本件貸付け」という。)ものであるから,本件貸

付けは被上告人の営業とは無関係にAの上告人に対する情宜に基づいてされたもの

とみる余地がある。そうすると,本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債

権に当たるということはできず,上記債権には商法522条が適用されないから,

上告人の消滅時効の主張はその前提を欠く。

したがって,本件抵当権の被担保債権である本件貸付けに係る債権が時効消滅し

たということはできないし,また,上告人は被上告人に対する8300万円及び遅

延損害金の支払義務を免れないというべきである。

3 しかしながら,原審の本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に

当たるということはできないとする判断は是認することができない。その理由は,

次のとおりである。

会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事

業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主

張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする

行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条),

会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に

該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるか

らである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と

同義と解される。)。

前記事実関係によれば,本件貸付けは会社である被上告人がしたものであるか

ら,本件貸付けは被上告人の商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,

本件貸付けがAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとし

ても,それだけでは,1億円の本件貸付けが被上告人の事業と無関係であることの

立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しない

ことは明らかである。

そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同

債権には商法522条の適用があるというべきである。これと異なる原審の判断に

は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

4 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中被上告人に関する上告人の敗訴

部分は破棄を免れない。そこで,本件貸付けに係る債権に商法522条の適用があ

ることを前提として,同債権が時効消滅したか否かについて更に審理を尽くさせる

ために,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。なお,被上告人の反訴

請求には主位的請求と予備的請求とが併合されているのであるから,差戻し後の控

訴審においては,まず,主位的請求の請求原因として主張されている事実,すなわ

ち本件貸付けに係る借主が上告人であるか否かを判断する必要があり,これが否定

された場合には,予備的請求に対する判断を行うべきこととなる。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官

古田 佑紀)

2 会社の権利能力

 会社は法人ですから、当然、権利能力を有していますが、自然人ではないので、その権利能力には制限があります。

 その前に、法律上の「能力」について確認してみましょう。法律上、能力には、意思能力、行為能力、不法行為能力、権利能力があります。

 法律行為をする場合、意思が重要です。法律行為の中心である契約の成立にも意思と意思の合致が必要ですね。でも、その意思が欠けている(意思の欠缺)場合か、その意思に瑕疵がある場合には、法律効果は効力をもたないことになります。たとえば、幼児のように事理を弁識する年齢に達していない場合には意思が欠缺していると考えられます。このような場合、幼児の意思表示は無効となるでしょう。また、人事不省に陥った酩酊者にも意思はないと考えられます。このように有効な意思を表示できない人を意思無能力者といい、その者が法律行為をした場合、当事者のうち、意思無能力に基づく法律効果の無効を主張する側が、立証すれば無効と認められます。

 しかし、主張・立証責任を果たすには困難な場合もあるでしょう。それを簡便にした制度が判断能力が十分でない人を類型化した制限行為能力制度です。未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人が制限行為能力者です。以前は行為無能力者と呼んでいましたが、その用語に語弊があるということで現在の用語になりました。この制度のいいところは、要件について主張・立証すれば、法律効果の効力が否定されるってことなんです。詳しくは民法で勉強するところですが、ここでは簡単に説明しておきましょう。

 まず、平成29年民法の債権法改正により、2022年4月1日以降は満18歳が成年となりますが、現行法上は成年は20歳以上ですね。

 未成年者は、法律行為をしても、親権者の同意がなければ取り消されます。

 成年でも、精神障害により事理弁識能力を欠く常況にある者(たとえば、重度認知症患者)が家庭裁判所から後見開始の審判を受けた場合、成年被後見人となり、日用品の購入など日常生活にかかわる法律行為は、取り消されます。この場合、後見人が本人に代わって法律行為をします。また、精神障害により事理弁識能力が著しく不十分な者が家裁から保佐開始の審判を受けた場合、民法13条1項に定められた重要財産に関する取引行為について保佐人の同意がなければその法律行為は取り消されます。また、精神障害により事理弁識能力が不十分である者が家裁から補助開始の審判を受けた場合、民法13条1項に規定する行為の一部について補助人の同意を得なければならない行為については補助人の同意がなければその法律行為は取り消されます。

 次に、法人の不法行為能力についてですが、法人実在説ならば、代表者を通じて法人自身が不法行為を行うことができると考え、目的の範囲内の行為ならば法人が損害賠償責任を負うというものです。しかし、法人擬制説や法人否認説によれば、代表者の不法行為責任を法人に負わせた規定は例外的なものと考えています。

 さて、法人の権利能力についてです。

 権利能力とは権利を有し義務を負う地位・資格のことですね。人の私権の享有は出生に始まるとされ(民3条1項),自然人には権利能力が備わっていますが、会社も会社法によって法人性が認められており(会社3条),会社のような営利事業法人(民33条2項)にも法人の権利能力の存在について定めた民法34条が適用され得るため,結局,会社にも権利能力が備わっているといえます。

 よって,会社は,株主総会・取締役・取締役会・代表取締役等の機関を通じて意思決定(会社の基本的事項の決定・業務決定)や意思表示(業務執行)を行うことにより法律行為をし,その法律効果である権利義務は会社に帰属します。ただし,会社は自然人ではないことから,その権利能力には以下のような一定の制限があります。

(1) 性質による制限

 会社は自然人のように生命・身体・親族関係を前提とする権利義務の主体となる地位・資格をもたず,たとえば,親権・扶養請求権はない。しかし,自然人と同様に,名誉権のような人格権(商号権のような財産権にも含まれる)は認められています。

(2) 法令による制限

 会社が解散・破産した場合は,会社は清算・破産の目的の範囲内でのみ権利を有し義務を負います(会社476条,645条,破4条)。

 また,外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって,会社と同種のものまたは会社に類似するものである外国会社(会社2条2号)も法律または条約の規定により認許されれば(民35条1項),日本において成立する同種の法人と同一の私権を有するものの,外国人が享有することのできない権利および法律または条約中に特別の規定がある権利についてはこの限りでないとされ(民35条2項),外国会社の権利能力も法律または条約によって制限されます。

 平成17年の会社法制定前商法は,会社は他の会社の無限責任社員にはなれないとしており(旧商55条),それがこの法令による制限の典型であったが,会社法ではそれは撤廃されています。したがって,現在では,その株主(社員)が有限責任の特権を有している株式会社・合同会社ですら,他の会社の無限責任社員となることは可能です。

(3) 定款所定の目的による制限

 民法上,法人は定款で定められた目的の範囲内において権利を有し義務を負うことから(民34条),その権利能力は定款所定の目的によって制限され,目的外の行為は無効となります。現在では,この規定が営利事業法人である会社にも適用されことに疑いはないが(民33条2項参照),2006(平成18)年改正前民法43条が公益法人の定款に関するものであったため,以前は,これが会社の定款にも適用されるかどうかが議論されていました。つまり,会社経営者が定款所定の目的外の行為をした場合の効力が問題となっていたのです。

 もし,定款所定の目的外の行為が,相手方の善意・悪意を問わず無効であり,会社にその効力が及ばないと解すれば(制限肯定説),定款所定の目的を信頼し,それに期待して出資をした株主の利益が保護されることになる。他方,その効力が会社に及ぶと解すれば(制限否定説),会社と取引をした会社債権者の利益は保護され,取引の安全が確保されることになります。

 判例は制限肯定説に立ちつつも,実際には,目的の範囲に目的それ自体の行為だけでなく,目的を達成するのに必要な行為をも含め,また,目的に必要かどうかは,現実に必要かどうかではなく,定款の記載自体から観察して,客観的,抽象的に必要となり得るかどうかの基準に従って決すべきものであるとし(最判昭27・2・15民集6・2・77),定款所定の目的を弾力的に幅広く解釈することによって,制限否定説と同様の結論を導いている。

 さらに,そもそも会社の場合,定款所定の個別具体的な事業目的に限定されず,会社の営利目的それ自体が定款所定の目的の範囲内であるとの考えも成り立ち得えます。

 なお,八幡製鉄政治献金事件においても判例は,会社による政治資金の寄附について,目的の範囲内の行為は定款に明示された目的自体に限局されるのではなく,その目的を遂行する上で直接または間接に必要な行為も包含されるとし,また,目的遂行上現実に必要であったかどうかではなく,客観的,抽象的に観察して会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められる限りにおいて,会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとしています(最大判昭45・6・24民集24・6・625)。

 ところで,法人の権利能力を定款所定の目的の範囲内に限定する考えは伝統的に能力外(ウルトラ・ヴァイレス)の理論といわれる。定款所定の目的外の行為は効力の無効だけでなく,取締役・執行役の行為の差止め(会社360条1項,385条1項,407条1項,422条1項),取締役・執行役の解任(会社854条1項,403条1項)または損害賠償責任(会社423条1項),監査役等の取締役等への報告義務(会社382条,394条の4,406条),会社の解散命令(会社824条1項3号)等の問題も惹起します。

 しかし,判例も示唆している通り,定款所定の目的外の行為であっても,取引の安全のほうがより重視され,実際に取引が無効とされることはほとんどないと思われます。

 実務上,会社設立時の定款には,実際に行う事業目的に加え,当面は行わなくても,将来行う可能性のある潜在的な事業目的をも網羅的に定めたり、「その他各号に付帯する一切の事業」等の包括規定を定めたりしておくことが一般的でしょう。




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