われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの会社法04 公司的法律人格可以说是很佛系了 法人格否認の法理


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


パーソナリティー・講師    東洋大学教授       楠元純一郎

パーソナリティー・録音師  美術家            レオー

常連ゲスト           哲学者・大学外部総合評価者  松尾欣治

常連ゲスト           岡山大学教授・弁護士  張紅




<<われらの会社法4(法人格否認の法理)>>

1 法人格否認の法理

会社は法人であり、構成員である社員(株主)とは別人格。→会社には独自の法人格

株式会社の株主・合同会社の社員→すべて有限責任

社員(株主)の債務については会社は責任を負わない→分離原則

株式会社 Company Limited

(Co.,Ltd.), Corporation (Corp.), Incorporated (Inc.),KK

合同会社 Limited Liability Company (LLC), Company Limited (Co.,Ltd.), GK

有限責任の原則=会社の債務について社員(株主)は出資額を限度としてしか責任を負わない。

小規模閉鎖会社が実質的には個人企業であったとしたら?

親会社がその一部門を子会社化していたら?

→実質的には、会社=個人(支配社員)、子会社=親会社(子会社の支配社員)

 →個人(支配社員・支配株主)は会社を、親会社(支配社員・支配株主)は子会社を隠れ蓑に使える!(隠れ蓑=それを着ると真の姿(実体)を隠すことができるレインジャケット)

→法人の社員・株主は法人の背後に隠れた黒幕・主宰者

 →黒幕(fixer) 政治経済の重要な決定を法的手続によらず裏で決定し指令する

操り人形師みたいな人。

※法人格否認の法理の発想は、般若心経に出てくる「色即是空、空即是色」みたいなものかもしれません。

仏説摩訶般若波羅蜜多心経

観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不異色色即是空空即是色受想行識亦復如是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増不減是故空中無色無受想行識無眼耳鼻舌身意、無色声香味触法無眼界乃至無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無所得故菩提薩埵依般若波羅蜜多故心無罜礙無罜礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜多呪即説呪曰羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶般若心経 (漢訳 三蔵法師玄奘)

色不異空               形あるものは実体がないのに等しい。

空不異色               実体がないものは、形あるものとして存在している。

色即是空               だから、形あるものは実は実体はない。

空即是色               でも、実体のないものは、形あるものとして存在している。

なんのこっちゃ?ですね。ラッセル哲学書を読めばわかりますかね?

※三蔵法師の漢訳といえば思い出すのは、1978年ごろに放送されていた孫悟空のテレビドラマ、夏目雅子の三蔵法師ですね。実は三蔵法師って男性だったんですよね。夏目雅子の印象が強すぎて、てっきり女性だって思ってました。当時、私は中学生でしたが、ゴダイゴのモンキーマジックという歌もあって、「 ホンコンにいったらサルがいた!」なーんて、勝手に口ずさんでいましたよ。歌詞はぜんぜん香港と関係ないですよ。1986年には本場中国でも中国中央電視台CCTVが中国版孫悟空「西遊記」のテレビドラマを放映していたんですね。私はあの山水画の世界のような大好きな桂林というところの鍾乳洞窟(Reed Flute Cave)を散策したことがありますが、そこにも西遊記のロケ場所がありました。1400歳という亀さんもいましたよ。

さて、法人格否認の法理に戻りましょう。

法人格否認の法理

「実体は個人企業である小規模閉鎖会社または親会社の一部門にすぎないような子会社が、法形式には法人として、その背後にいる支配社員・支配株主の人格とは人格上、明確に区別されており、各独立した人格であるところ、第三者との関係でなにか正義公平に反する場合、ある特定の事案に限って、各独立した人格を同一視することによって、各別の法人格を否認する法理である。会社の法人格が否認されれば、その背後の黒幕である支配社員・支配株主(親会社を含む)に責任追及をすることが可能となる。」

法人格否認といっても完全に否認すれば、会社が解散したことになりますから、そうではないのです。「ある特定の事案に限って」というところがポイントですね。

この法理は、具体的な法律を欠くなかで、主としてアメリカの判例上発展してきたものであり、わが国ではその根拠を民法の一般原則である信義誠実の原則(民1条2項)や権利濫用の禁止(民1条3項)に求め、判例の集積があります。

英語では、piercing the veil of corporate entityといいます。

会社を覆い隠す布を突き刺し通すというイメージでしょうか。

神秘のベールに覆われた○○とかよくいいますよね。

法人格否認の法理に関する判例・裁判例を分類すると、大きく、形骸事例と濫用事例に分かれます。

<形骸事例>

世の中には、株主一人で会社を設立した一人会社(いちにんがいしゃ)が多く存在します。

この一人株主(いちにんかぶぬし)が同時にひとりだけの取締役となっているような会社も会社法上、株式会社として認められます。

しかし、このような会社が会社として遵守すべき会社法上の手続を履践していないとしたら?

①  会社と社員(株主)の継続的業務・財産の混同、会社の会計と個人会計の区別なし。

②  株主総会や取締役会の常時不開催

このような場合に、法人格が形骸化しているといわれています。

<最判昭和44年2月27日民集23巻2号511頁>

(事実)

本件店舗の所有者Xは株式会社Y(以下、「Y社」という)に賃貸したが、Y社はその代表取締役である訴外Aが経営する「電気屋」の節税目的で設立したものであった。賃貸借契約期間満了後、XがAに対し店舗の明渡請求をし、Aとの間では本件店舗を明け渡す旨の裁判所の和解が成立したが、その後、Aは本件店舗の明渡しを拒絶し、本件店舗を賃借しているのはY社であると主張したので、XはY社に対して本件店舗の明渡しと賃料相当額の支払いを求めて訴えた。

(判旨)

「およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが法律上別個の人格である

ことはいうまでもなく、このことは社員が一人である場合でも同様である。しかし、

およそ法人格の付与は社会的に存在する団体についてその価値を評価してなされる

立法政策によるものであつて、これを権利主体として表現せしめるに値すると認め

るときに、法的技術に基づいて行なわれるものなのである。従つて、法人格が全く

の形骸にすぎない場合、またはそれが法律の適用を回避するために濫用されるが如

き場合においては、法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らし

て許すべからざるものというべきであり、法人格を否認すべきことが要請される場

合を生じるのである。そして、この点に関し、株式会社については、特に次の場合

が考慮されなければならないのである。

思うに、株式会社は準則主義によつて容易に設立され得、かつ、いわゆる一人会

社すら可能であるため、株式会社形態がいわば単なる藁人形に過ぎず、会社即個人

であり、個人則(ママ)会社であつて、その実質が全く個人企業と認められるが如き場合を生じるのであつて、このような場合、これと取引する相手方としては、その取引が

はたして会社としてなされたか、または個人としてなされたか判然しないことすら

多く、相手方の保護を必要とするのである。ここにおいて次のことが認められる。

すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に存在する実体たる個人に

迫る必要を生じるときは、会社名義でなされた取引であつても、相手方は会社とい

う法人格を否認して恰も法人格のないと同様、その取引をば背後者たる個人の行為

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であると認めて、その責任を追求することを得、そして、また、個人名義でなされ

た行為であつても、相手方は敢て商法五〇四条を俟つまでもなく、直ちにその行為

を会社の行為であると認め得るのである。けだし、このように解しなければ、個人

が株式会社形態を利用することによつて、いわれなく相手方の利益が害される虞が

あるからである。

 今、本件についてみるに、原審(その引用する第一審判決を含む)の認定すると

ころによれば、被上告人は、その所有する本件店舖を、昭和三六年二月二〇日契約

書の文言によれば上告会社を賃借人とし、これに対し賃料一ケ月一万円にて賃貸し

たところ、上告会社は本来Aが同人の経営した「D屋」についての税金の軽減を図

る目的のため設立した株式会社で、A自らがその代表取締役となつたのであり、会

社とはいうものの、その実質は全くAの個人企業に外ならないものであつて、被上

告人としても、「D屋」のAに右店舖を賃貸したと考えていたこと、被上告人が右

店舖を自己の用に供する必要上、昭和四一年二月二〇日その店舖の明渡を請求した

ときも、Aが同年八月一九日までに必ず明渡す旨の個人名義の書面を被上告人に差

し入れたこと、しかるに、その明渡がされないので、被上告人はAを被告として右

店舖明渡の訴訟を提起し、昭和四二年三月四日当事者間にAは昭和四三年一月末日

限りその明渡をなすべき旨の裁判上の和解が成立したというのである。しかして、

今、右事実を前示説示したところに照らして考えると、上告会社は株式会社形態を

採るにせよ、その実体は背後に存するA個人に外ならないのであるから、被上告人

はA個人に対して右店舖の賃料を請求し得、また、その明渡請求の訴訟を提起し得

るのであつて(もつとも、訴訟法上の既判力については別個の考察を要し、Aが店

舖を明渡すべき旨の判決を受けたとしても、その判決の効力は上告会社には及ばな

い)、被上告人とAとの間に成立した前示裁判上の和解は、A個人名義にてなされ

たにせよ、その行為は上告会社の行為と解し得るのである。しからば、上告会社は、

- 2 -

右認定の昭和四三年一月末日限り、右店舖を被上告人に明渡すべきものというべき

である。しかして、上告人の違憲の主張は、単なる法令違反の主張に過ぎず、原判

決には何等所論の違法はなく、論旨はいずれも採用に値しない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。」

<濫用事例>

法律の適用を回避するために法人格が濫用される場合。

要件 

①支配の要件(株主が法人格を意のままに利用していること)、

②目的の要件(違法・不当な目的で、法人格を利用していること)

具体的事例

①  法律上または契約上の義務の回避

②  個人との和解の効力→会社に及ぶ

③  債務免脱・強制執行免脱

④  不当労働行為による子会社解散・労働者の解雇

⑤  会社分割を濫用的に用いた場合

<最判昭和48・10・26民集27・9・1240>

 主    文

     本件上告を棄却する。

     上告費用は上告人の負担とする。

         理    由

 上告代理人磯崎良誉、同鎌田俊正の上告理由について。

原判決が適法に確定したところによれば、

 (一) D地所株式会社(旧商号A開発株式会社、以下旧会社と称する。)が昭和

四二年一〇月中被上告人から本件居室に関する賃貸借解除の通知を受け、かつ占有

移転禁止の仮処分を執行されたところ、同会社代表者Eは、被上告人の旧会社に対

する本件居室明渡、延滞賃料支払債務等の履行請求の手続を誤まらせ時間と費用と

を浪費させる手段として、同年一一月一五日旧会社の商号を従前のA開発株式会社

から現商号のD地所株式会社に変更して、同月一七日その登記をなすとともに、同

日旧会社の前商号と同一の商号を称し、その代表取締役、監査役、本店所在地、営

業所、什器備品、従業員が旧会社のそれと同一であり、営業目的も旧会社のそれと

ほとんど同一である新会社を設立したが、右商号変更、新会社設立の事実を賃貸人

である被上告人に通知しなかつたこと、

 (二) 被上告人は右事実を知らなかつたので同年一二月一三日「A開発株式会社

(代表取締役E)」を相手方として本訴を提起したこと、

 (三) Eは第一審口頭弁論期日に出頭しないで判決を受け、原審における約一年

にわたる審理の期間中も、右商号変更、新会社設立の事実についてなんらの主張を

せず、また、旧会社が昭和三八年一二月以降本件居室を賃借し、昭和四〇年一二月

一日当時の賃料が月額一六万二二〇〇円であることならびに前記被上告人から賃貸

借解除の通知を受けたことをそれぞれ認めていたにもかかわらず、上告人は、いつ

たん口頭弁論が終結されたのち弁論の再開を申請し、その再開後初めて、上告人が

- 1 -

昭和四二年一一月一七日設立された新会社であることを明らかにし、このことを理

由に、前記自白は事実に反するとしてこれを撤回し、旧会社の債務について責任を

負ういわれはないと主張するにいたつたこと、

以上の事実が認められるというのであり、論旨は右自白の撤回を許さず、上告人が

旧会社の債務について責任を負うとした原審の判断を非難するのである。

 おもうに、株式会社が商法の規定に準拠して比較的容易に設立されうることに乗

じ、取引の相手方からの債務履行請求手続を誤まらせ時間と費用とを浪費させる手

段として、旧会社の営業財産をそのまま流用し、商号、代表取締役、営業目的、従

業員などが旧会社のそれと同一の新会社を設立したような場合には、形式的には新

会社の設立登記がなされていても、新旧両会社の実質は前後同一であり、新会社の

設立は旧会社の債務の免脱を目的としてなされた会社制度の濫用であつて、このよ

うな場合、会社は右取引の相手方に対し、信義則上、新旧両会社が別人格であるこ

とを主張できず、相手方は新旧両会社のいずれに対しても右債務についてその責任

を追求することができるものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四三年(オ)

第八七七号同四四年二月二七日第一小法廷判決・民集二三巻二号五一一頁参照)。

 本件における前記認定事実を右の説示に照らして考えると、上告人は、昭和四二

年一一月一七日前記のような目的、経緯のもとに設立され、形式上は旧会社と別異

の株式会社の形態をとつてはいるけれども、新旧両会社は商号のみならずその実質

が前後同一であり、新会社の設立は、被上告人に対する旧会社の債務の免脱を目的

としてなされた会社制度の濫用であるというべきであるから、上告人は、取引の相

手方である被上告人に対し、信義則上、上告人が旧会社と別異の法人格であること

を主張しえない筋合にあり、したがつて、上告人は前記自白が事実に反するものと

して、これを撤回することができず、かつ、旧会社の被上告人に対する本件居室明

渡、延滞賃料支払等の債務につき旧会社とならんで責任を負わなければならないこ

- 2 -

とが明らかである。これと結論において同旨に出た原判決の判断は、正当として是

認することができ、右判断の過程に所論の違法はない。したがつて、論旨は採用す

ることができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

法人格否認の法理適用の効果 

法人格と株主(社員)を同一視

会社の債務を株主(社員)が負担する。→有限責任の否定

株主(社員)の債務を会社が負担する。

法人格否認の手続法上の効果

  会社債務を免脱するために別会社を設立した場合→既判力・執行力を別会社へ拡張することはできない(最判昭和53・9・14判時906・88)←法的安定性・明確性確保の要請

  第三者異議の訴えの場合→強制執行を回避するために法人格を濫用している場合、第三者異議の訴えにも適用される(最判平成17・7・15民集59巻6号1742)。

法人格否認の法理の問題点

 会社法の責任体系は、取締役の会社および第三者に対する責任として明文の規定があるが、株主には有限責任の特権があるため、とくに支配株主が実質的な支配者であっても、その責任を問う明文の規定は存在しません。よって、法人格否認の法理は、トカゲ(取締役)の尻尾切りによって支配株主は責任を回避できる現状に対する司法、学界のアンチテーゼなのかもしれません。

 法人格否認の法理は、一般条項(信義則・権利濫用)に依存しているため、その要件、効果があいまいであり、法的安定性において問題があります。

実際に法人格否認の法理が適用されたケースは、個別規範の合理的解釈で解決できた場合が多いです。ただ、それは、法の隙間を埋め、立法を促す契機にはなるでありましょう。




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われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎By Leo_楠元纯一郎