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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー レオー 美術家
常連ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
常連ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト AN YU
<われらの会社法8(株式とは・株式にまつわる原則・利益供与の禁止)>
ラジオ収録20200613
1 株式とは
株式=均一に細分化された株主の割合的地位→その地位は、均一な株式の保有割合によって定まる。2株保有する株主は1株保有する株主と比べて2倍の地位を有する。
※持分会社の持分は、各社員につき各1個であるが、その出資額等に応じて地位の大きさが異なり、必ずしも均一ではない。
株式=株主の地位=株主権
株主権
自益権→株主が会社から経済的利益を受ける権利
剰余金の配当を受ける権利(会社105条1項1号、453条)
残余財産の分配を受ける権利(会社105条1項2号、502条)
その他、株式買取請求権等(会社116条等)
共益権→株主が会社の重要な意思決定をし、経営を監督是正する権利
株主総会における議決権(会社105条1項3号、308条)
その他、株主代表訴訟提起権等(会社847条)
<学生さんからの質問>
権利と権限との違いはなんでしょうか?共益権が株主共同のいわば公的な利益を追求するものであるとすれば、それは権利ではなく権限ではないでしょうか?
<回答>
すばらしい質問です!
権利というのは法が認めた一定の利益を主張する資格であり、権限は、公法上は国家とか自治体とかの公的機関が職権として行使することのできる、または行使しなければならない資格(責任を伴うもの)であり、私法上は、たとえば、民法上の代理人や会社法上の機関としての代表取締役のように、代理権を付与された者の代理権の範囲を指すものと理解しています。つまり、権限というのは機関であるとか代理人としての地位に認められる資格(権能)であるといえます。
会社法上、株主の権利である自益権と共益権について、通説である株式社員権説は、いずれも株主の権利であるとしています。それに対し、株式社員権否認説によれば、共益権は株主の権利ではなく権限であるとしています。
私見としては、会社の利益の最大化は株主の利益と矛盾しないことから、共益権も株主の自益権である経済的利益を追求する上で必要な会社の重要意思決定権および監督是正権であると思いますので、権利といってよいと思います。行き過ぎた権利行使には権利濫用の法理もありますから、権利には一定の歯止めをかけることもできます。
株主権の行使要件による分類(その他、株式の継続保有期間要件も課される場合もある)
単独株主権→1株でも保有していれば行使できる権利
少数株主権→一定割合の議決権や株式を保有していれば行使できる権利
株式と株券
株券=株式(株主権)を表章する有価証券
株券不発行が原則→発行する場合、定款に定める必要あり(会社214条)
株式と資本金
株式の引受けに伴う払込み・給付された額=原則として資本金(会社445条1項、会社計算43条1項、14条1項)
株式発行時→払込み・給付額の2分の1までの額を資本金に組み入れず、準備金に入れることが可(会社445条2項・3項)
株式の共有
2人以上の者が株式を共有する場合←株式の共同引受け、2人以上による株式の相続等
共有株式
共有者は権利行使者を1人定めて会社にその者の氏名・名称を通知しなければ共有株式の権利を行使できない(会社106条本文)。
会社から株主への通知・催告は、共有者が代表者を定めない場合、会社は共有者の1人に対して通知・催告をすればよい(会社126条4項等)
2 株式に関する原則
株主有限責任の原則
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする(会社104条)。→株主は出資額以上の責任を会社または債権者に対して負わない。
その他、株主には原則として義務はない。※支配株主の義務については議論あり。
株主平等原則
多数派株主の権利の濫用から少数派株主の権利を保護するため。
株式会社は株主をその有する「株式の内容および数に応じて」、平等に取り扱わねばならない(会社109条1項)。
「内容に応じて」→株式の種類ごとに平等に取り扱うべき
「数に応じて」→「数に着目して」←原則として持株割合に比例するが、株主優待制度のように、一定の持株数に応じた段階的優待等もあるため、必ずしも比例的でなく、その差別的取扱いが軽微なら許容されているため。
公開でない株式会社は、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる(会社109条2項)。
一株一議決権の原則
普通株式の場合、株主は株主総会において、その有する一株式につき、一個の議決権を有する(会社308条本文)。
例外→①単元株式の場合、一単元につき一議決権(会社308条1項ただし書)。
②自己株式には議決権はない(会社308条2項)。
③相互保有株式で、4分の1以上の議決権を先に保有された会社は、その保有会社の株式を保有していても議決権はない(会社308条1項括弧書、会社施行規則67条)。
3 利益供与の禁止
株式会社は、何人に対しても、「株主の権利の行使に関し」、その会社または子会社の計算において財産上の利益の供与をしてはならない(会社120条1項)。
利益供与→株主平等原則違反。もともと、会社荒らし、総会屋対策。
特定株主に対する無償供与→株主の権利行使に関する利益供与と推定(会社120条2項)
利益供与禁止規定違反
供与を受けた者→返還義務(会社120条3項)
利益供与に関与した取締役・執行役→会社に対して連帯しての支払義務(会社120条4項)
利益供与をした取締役(無過失責任)
その以外の関与者(過失推定責任)「注意を怠らなかったことを証明した場合」
取締役の責任免除→総株主の同意が必要(会社120条5項)。
不正の請託が認定→贈収賄罪(会社968条)
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー レオー 美術家
常連ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
常連ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト AN YU
<われらの会社法8(株式とは・株式にまつわる原則・利益供与の禁止)>
ラジオ収録20200613
1 株式とは
株式=均一に細分化された株主の割合的地位→その地位は、均一な株式の保有割合によって定まる。2株保有する株主は1株保有する株主と比べて2倍の地位を有する。
※持分会社の持分は、各社員につき各1個であるが、その出資額等に応じて地位の大きさが異なり、必ずしも均一ではない。
株式=株主の地位=株主権
株主権
自益権→株主が会社から経済的利益を受ける権利
剰余金の配当を受ける権利(会社105条1項1号、453条)
残余財産の分配を受ける権利(会社105条1項2号、502条)
その他、株式買取請求権等(会社116条等)
共益権→株主が会社の重要な意思決定をし、経営を監督是正する権利
株主総会における議決権(会社105条1項3号、308条)
その他、株主代表訴訟提起権等(会社847条)
<学生さんからの質問>
権利と権限との違いはなんでしょうか?共益権が株主共同のいわば公的な利益を追求するものであるとすれば、それは権利ではなく権限ではないでしょうか?
<回答>
すばらしい質問です!
権利というのは法が認めた一定の利益を主張する資格であり、権限は、公法上は国家とか自治体とかの公的機関が職権として行使することのできる、または行使しなければならない資格(責任を伴うもの)であり、私法上は、たとえば、民法上の代理人や会社法上の機関としての代表取締役のように、代理権を付与された者の代理権の範囲を指すものと理解しています。つまり、権限というのは機関であるとか代理人としての地位に認められる資格(権能)であるといえます。
会社法上、株主の権利である自益権と共益権について、通説である株式社員権説は、いずれも株主の権利であるとしています。それに対し、株式社員権否認説によれば、共益権は株主の権利ではなく権限であるとしています。
私見としては、会社の利益の最大化は株主の利益と矛盾しないことから、共益権も株主の自益権である経済的利益を追求する上で必要な会社の重要意思決定権および監督是正権であると思いますので、権利といってよいと思います。行き過ぎた権利行使には権利濫用の法理もありますから、権利には一定の歯止めをかけることもできます。
株主権の行使要件による分類(その他、株式の継続保有期間要件も課される場合もある)
単独株主権→1株でも保有していれば行使できる権利
少数株主権→一定割合の議決権や株式を保有していれば行使できる権利
株式と株券
株券=株式(株主権)を表章する有価証券
株券不発行が原則→発行する場合、定款に定める必要あり(会社214条)
株式と資本金
株式の引受けに伴う払込み・給付された額=原則として資本金(会社445条1項、会社計算43条1項、14条1項)
株式発行時→払込み・給付額の2分の1までの額を資本金に組み入れず、準備金に入れることが可(会社445条2項・3項)
株式の共有
2人以上の者が株式を共有する場合←株式の共同引受け、2人以上による株式の相続等
共有株式
共有者は権利行使者を1人定めて会社にその者の氏名・名称を通知しなければ共有株式の権利を行使できない(会社106条本文)。
会社から株主への通知・催告は、共有者が代表者を定めない場合、会社は共有者の1人に対して通知・催告をすればよい(会社126条4項等)
2 株式に関する原則
株主有限責任の原則
株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする(会社104条)。→株主は出資額以上の責任を会社または債権者に対して負わない。
その他、株主には原則として義務はない。※支配株主の義務については議論あり。
株主平等原則
多数派株主の権利の濫用から少数派株主の権利を保護するため。
株式会社は株主をその有する「株式の内容および数に応じて」、平等に取り扱わねばならない(会社109条1項)。
「内容に応じて」→株式の種類ごとに平等に取り扱うべき
「数に応じて」→「数に着目して」←原則として持株割合に比例するが、株主優待制度のように、一定の持株数に応じた段階的優待等もあるため、必ずしも比例的でなく、その差別的取扱いが軽微なら許容されているため。
公開でない株式会社は、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる(会社109条2項)。
一株一議決権の原則
普通株式の場合、株主は株主総会において、その有する一株式につき、一個の議決権を有する(会社308条本文)。
例外→①単元株式の場合、一単元につき一議決権(会社308条1項ただし書)。
②自己株式には議決権はない(会社308条2項)。
③相互保有株式で、4分の1以上の議決権を先に保有された会社は、その保有会社の株式を保有していても議決権はない(会社308条1項括弧書、会社施行規則67条)。
3 利益供与の禁止
株式会社は、何人に対しても、「株主の権利の行使に関し」、その会社または子会社の計算において財産上の利益の供与をしてはならない(会社120条1項)。
利益供与→株主平等原則違反。もともと、会社荒らし、総会屋対策。
特定株主に対する無償供与→株主の権利行使に関する利益供与と推定(会社120条2項)
利益供与禁止規定違反
供与を受けた者→返還義務(会社120条3項)
利益供与に関与した取締役・執行役→会社に対して連帯しての支払義務(会社120条4項)
利益供与をした取締役(無過失責任)
その以外の関与者(過失推定責任)「注意を怠らなかったことを証明した場合」
取締役の責任免除→総株主の同意が必要(会社120条5項)。
不正の請託が認定→贈収賄罪(会社968条)