われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの会社法19 取締役会・代表取締役


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


<われらの会社法19 (取締役会・代表取締役)>

ラジオ収録20201031


講師 楠元純一郎(法学者)

録音師 レオー(美術家)

ゲスト 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)


<取締役会・代表取締役>

 

取締役会 Board of Directors

会社327条 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。

一 公開会社

二 監査役会設置会社

三 監査等委員会設置会社

四 指名委員会等設置会社


取締役会設置会社(会社362条)

取締役会の権限(会社362条2項)「取締役会は次に掲げる職務を行う」

①    業務執行の決定→重要な業務執行の決定(取締役会の専決事項)

   ※日常業務の決定は代表取締役に委ねることは可

②    取締役の職務の執行の監督(会社362条2項2号)

   ※監査役もダブルチェック→二重監督体制

③    代表取締役の選定・解職 ←取締役の中から取締役会で選定

 ※取締役等の役員の場合、株主総会で選任・解任


取締役会の専決事項(会社362条4項)→取締役(代表取締役・業務執行取締役等)に決定を委任できない。←重要な決議事項は一部の取締役による判断ミス、権限濫用によって会社が害される場合があるため、取締役会という会議体で慎重に熟慮検討される必要があるから→取締役会の専決事項としている。

   ※ 代表取締役は日常業務の決定は可。

 

①    重要な財産の処分・譲受け

  処分→売却、贈与、廃棄  譲受け→購入、贈与を受けること

 「重要な財産」→財産の処分が重要かどうかの判断基準→財産の価額、総資産に占める割合、保有目的、処分の態様、従来の取扱い等を総合的に勘案して判断する(最判平6・1・20民集48・1・1)

②    多額の借財(借金)

③    支配人その他の重要な使用人の選任・解任

   ※支配人とは営業に関する一切の裁判上または裁判外の包括的な商業代理権を有する商業使用人

④    支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止

⑤    社債の発行その他の法務省令で定める事項

   ※単なる借金ではなく有価証券を発行→社債権者の集団的取扱いが必要

⑥    内部統制の整備 (経営の監視機構、法令・定款違反等の不祥事を未然に防いだり、不祥事が発覚したとしても、損害を最小限に食い止めるための組織の仕組み→裁判所→コンプライアンス体制 to comply 従う、遵守する→法令遵守

⑦    定款の定めに基づく役員等の責任の免除

 

その他取締役会の決定事項→株主総会の招集の決定(会社298条1項・4項)、取締役の競業取引・利益相反取引の承認(会社356条1項、365条)等の運営事項


職務の執行の監督→「職務の執行」→取締役会による監督の対象が取締役の業務の執行だけでなく、会社組織の運営に関する職務に及ぶ


取締役会の開催

 代表取締役・業務執行取締役→3ヶ月に1回以上→取締役会に自己の職務の執行の状況の報告(会社363条2項)

 招集権限→各取締役、定款または取締役会決議で決めた場合、その者が招集権者(会社366条1項)→一般的に代表取締役が招集権者→招集権者以外の取締役→招集権者に議題を示して取締役会の招集を請求し、請求日から2週間以内の日を取締役会の日とする招集通知が5日以内に発せられないとき→自ら招集可(同条2項・3項)

 招集通知→会日から1週間前(定款で引下げ可)までに通知を発する(会社368条1項)→全員の同意があれば招集手続の省略可(同条2項)

 開催場所→制限なし→インターネット会議でも可

 取締役会の書面決議→定款に定めれば書面で行うことも可(会社370条)

 

取締役会議事録→本店に10年間備置き→監査役等が置かれている会社→株主・債権者は裁判所の許可がなければ閲覧不可←営業の秘密の情報漏洩防止のため

取締役会の決議要件→過半数が出席し、出席者の過半数(一人1票=頭数主義)で可決(会社369条1項)

 利害関係取締役→決議によって利益または不利益を受ける立場にある取締役→議決に加われない(同条2項)→そもそも、議事参加も不可←なぜ?当該取締役が出席することで他の取締役が影響を受けないとも限らないから。

 

  代表取締役解職対象者は特別利害関係人に当たるか?

   当たる(最判昭44・3・28民集23・3・28)

  当たらないとする学説→利害対立は取締役相互間にあるのであり、会社と取締役の利害が対立するわけではないから。

 

取締役会決議の瑕疵(決議がそもそもなされなかった・決議はあったが、招集手続、決議の方法、決議の内容等に、法令・定款違反があった)→会社法に特別の規定なし→一般法である民法の一般原則として決議無効(公序良俗違反は無効、民90条)

 対内的な業務執行の決定(相手方がいない場合)→絶対無効

 対外的な業務執行の決定(相手方がいる場合)→取引の安全→相対無効

 

特別取締役による取締役会決議

 特別取締役→取締役の数が6名以上、社外取締役が1名以上いる会社において3名以上選定された者→取締役の専決事項の一部である、重要な財産の処分・譲受け、多額の借財について決定を委ねることが可(会社373条1項)←業務決定には迅速性が求められ、取締役会をその都度、頻繁に開催することが困難。

 ※  事実上の常務会(代表取締役社長・専務取締役・常務取締役=会社の重役)を制度化したもの


取締役会非設置会社における業務執行の決定・業務執行

 取締役の過半数→業務執行の決定(会社348条2項)、各取締役が業務執行(同条1項)

  →取締役の過半数の決定により、原則として、各取締役に業務執行の決定を委任することが可

 

代表取締役(事実上の社長) Representative Director

 取締役会設置会社の必要的機関(会社362条2項3号、3項)


 権限→会社の対内的・対外的な業務執行権限(会社363条1項1号)

     対内的業務執行→使用人に指示して、工場で製品を製造させる等。

     対外的業務執行→商行為(商事契約)

 

  代表権→会社の業務に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限(会社349条4項)

      裁判上の行為→訴えたり、訴えられたりすること

      裁判外の行為→対外的な商行為、対内的な組織的行為

 

      業務に関する一切の行為をする権限→代表取締役の行為=会社の行為

      ※代表取締役の行為の効果を会社に帰属させること

 

     代表権に加えた制限→善意の第三者に対抗できない(同条5項)。

      会社の内規で代表権を制限していたとしても、会社はそれ(代表取締役の越権代理=無権代理性→会社が追認しない限り、無権代理人=当該代表取締役に効果帰属する→本人である会社に効果帰属しない→会社は無権代理の責任を負わないということ)を善意の第三者に主張できない。

 

     取締役会非設置会社→各取締役に代表権あり(同条1項)。


 内部的意思を欠く行為の効力

→取締役会の専決事項、株主総会決議事項であるにもかかわらず、その決議なしに、または無効な決議に基づいて、代表取締役が業務執行したその行為の効力は?

 

相手方のいない行為

 →取引の安全を考慮する必要なし→手続を欠く行為→原則として無効

相手方のある行為←取引の安全に配慮する必要

 →株主総会決議を欠く行為

   判例→絶対無効説(最判昭61・9・11判時1215・125)

   有力な学説→相対無効説→会社は取引相手の悪意を立証して初めて無効を主張しうる。

 →取締役会決議を欠く行為

   判例→取引行為は内部的意思決定を欠くにとどまるから原則として有効であり、相手方が決議を経ていないことを知りまたは知りうべかりしときに限って無効(最判昭40・9・22民集19・6・1656、最判平21・4・17民集63・4・535)

      →法律構成→民法93条ただし書(心裡留保)


  →取引の相手方に調査義務を課すことになるのは妥当でないとの批判


(心裡(り)留保=しんりりゅうほ)→内心と表示が食い違っている→原則、表示どおりに効果発生

民93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。


    心裡留保は原則有効、例外無効!


    ここでは、取締役会の決議がない(内心的効果意思)

         代表取締役が自分で決定して業務執行した(表示意思)


    相手方が真意でないことを知り(悪意)、知ることができたとき(善意だが知らないことに過失がある場合)→悪意・有過失の相手方は保護されない→過失があれば保護されなくなる相手方は、表意者の真意を調べる必要(調査義務)があるのではないか?それは相手方にとって酷ではないか?



無効を主張できる者→重要な業務執行についての決定を取締役の決議事項としたのは、会社の利益を保護する趣旨に出たもの→取引の無効は原則として会社のみが主張できる(最判平21・4・17民集63・4・535)。

 

代表取締役の権限濫用

 →内心の意思としては自己または第三者の利益を図る目的で、形式的には権限の範囲内にある行為をすること。

   →たとえば、個人的に費消する目的で代表取締役として借入れを行うこと←このような場合にも会社が借入れを行ったことになるのか?

 

  判例→民法93条ただし書(心裡留保)を類推適用→会社は悪意または過失のある相手方に取引の無効を主張できる(最判昭38・9・5民集17・8・909)。

 

表見代表取締役

 →代表取締役ではないのに代表取締役らしく行動した場合、表見代表取締役としてその行為の効果を会社に帰属させる制度(会社354条)

  要件→①外観の存在→代表権があると認められる名称が存在すること

→社長、副社長、代表取締役、頭取、総裁などの肩書付与。

  ②    会社の帰責事由→会社が取締役に名称を付したこと

  ③    外観に対する信頼→相手方の善意・無重過失


→登記を見なかったことは重過失なのか?

→現実社会において、取引の都度、登記を確認しているか?→実際はしていない

→登記を見なかったというだけで重過失には当たらないのでは?

→それでも、軽過失の有無は問われる

→たとえば、取引先に電話して問い合わせるなど。


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