われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの会社法25 組織再編 事業譲渡


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨




<われらの会社法25(組織再編、事業譲渡)>

ラジオ収録20210123



組織再編行為


組織再編行為→複数の会社が一つになったり(会社合併)

       一つの会社が複数に分裂したり(会社分割)

       会社の上に完全親会社ができたり(株式交換・株式移転)

       会社の下に完全子会社ができたりする行為(株式交換・株式移転)


M&A(Merger & Acquisition)→合併と買収→企業買収


 会社法上の定義

→組織再編行為は、

会社法の定める一定の手続(効力発生前の手続)

 (代表者同士の契約締結→事前の開示→(組織再編行為の差止め)→株主総会特別決議による承認→反対株主の株式買取請求権(会社からの退出の機会→組織再編の効力発生→事後の開示→決議の無効・取消し))

を経ることにより、

法律上当然に、会社間または新設会社との間で、

権利義務の包括承継という効果を、

形式的にまたは実質的に生じさせる行為。


 組織再編行為にはなにがあるか?

   →合併

    株式交換

    株式移転

    会社分割


<合併のパターン>

   A社←ーーー合併契約締結ーーー→B社


 ① A + B → A  A(存続会社)がB(消滅会社)を吸収合併

 ② A + B → B  B(存続会社)がA(消滅会社)を吸収合併

 ③ A + B → B  A(消滅会社)がB(新設会社)を新設合併

 ④ A + B → C  AとBがC(新設会社)を新設し、三社で合併し、AとBが消滅(新設合併)


対価

 ①の場合

   B社の株主らはA社からA株式を対価として受け取る。→以後、A社の株主となる。

   B社の反対株主は、B社からその株式を公正な価格で買い取ってもらう。


<株式交換> 既存の会社同士AB間で完全親子会社関係を創設、既存会社は消滅しない。


 A←ーーー株式交換契約ーーーー→B


  A社がB社の株式を100%取得

  B社の株主はA社から対価としてA株を取得→以後、元々B社の株主だった者はA社の株主となる。A社だけがB社の株主となる。


         A(完全親会社)

           ↓

         B(完全子会社)


<株式移転> 既存の会社と新設の会社との間で完全親子会社関係を創設


   A(既存の会社)・・株式移転計画・・・・・・・・→ B(新設会社)


  B社がA社の株式を100%取得

  A社の株主はB社から対価としてB株を取得→以後、元々のA社の株主はB社の株主となる。

  Aの株主はB社のみ



        B(完全親会社) 

        ↓

        A(完全子会社)


  A社がB社の株式を100%取得


        A(完全親会社)

        ↓

        B(完全子会社)



<会社分割> 会社の事業の再編


    A←ーーーー会社分割契約ーーーーー→B

                    |  |  |

                    X  Y Z (事業)

    AがBのX事業を承継

    A社がB社になんらかの対価を付与(物的分割)

    A社がB社の株主になんらかの対価を付与(人的分割)


   組織再編ではないが、それに類似した行為

     →株式交付 → 親子会社関係を創設する行為であるが、完全親子会社関係ではない。

      事業譲渡 → 会社分割のような組織再編による包括承継ではなく、取引による特定承継。


 合併

  合併→複数の会社が合体して法的に一つの会社となる行為で、ある会社は存続し、ある他の会社は消滅するもの。

   吸収合併→存続会社Aが合併による消滅会社Bの財産および権利義務を承継するもの

   新設合併→消滅会社Aの財産および権利義務を新設会社Bが承継取得するもの→Aが有していた免許をBは再取得しなければならないことが欠点。→ほとんど、利用されない。


   株式会社と持分会社(合同会社・合資会社・合名会社)は合併できるか?

    →できるが、持分会社が株式会社を吸収合併するとなると、消滅会社である株式会社の株主は、以後、持分会社の社員となってしまう→持分の譲渡は著しく困難→総株主の同意が必要


   外国の会社は日本の会社と合併できるか?

    →外国会社はまず日本子会社を設立し、買収対象会社と合併させる。


      外国会社

       |

       |

     日本子会社(買収会社)←ーー合併契約ーー→対象会社(Targeted Company)


   日本の会社は外国の会社と合併できるか?


  合併の目的→企業規模の拡大

        相乗効果(シナジー)を生み出し、企業価値の向上

        危機的状況にある会社の救済等


  合併の手続

   (1)合併契約の締結

       代表取締役(代表者)同士の合併契約締結(会社748条)

       合併契約に定めなければならない事項(会社749条1項各号)

        ①当事会社の商号・住所

        ②存続会社が消滅会社の株主に交付する合併の対価の種類、総数、総額またはその算定方法

        ③対価の割当てに関する事項

        ④消滅会社が発行している新株予約権の扱い

        ⑤合併の効力発生日


     合併の対価→対価柔軟化→存続会社の株式・社債・新株予約権・新株予約権付社債、その他、存続会社の親会社の株式・社債、金銭、金銭以外の財産



   (2)事前の開示

       合併承認株主総会の会日の2週間前から(事前の開示)、

        ※合併登記から6ヶ月後までの間(事後の開示)


     →合併条件に関する書類を本店に備え置き→株主および債権者へ開示(会社782条、794条)

       →合併承認決議、債権者異議手続の参考にさせるため


       開示対象(消滅会社の場合)

        ①合併契約

        ②合併対価の相当性に関する事項→合併比率が公正か?どうかの判断


          ※発行済株式総数が同数だと仮定する。

          Aの純資産はBの2倍

          AがBを吸収合併

          AがBの株主に付与する対価(A株)の割合はB株に対して、どうか?

           純資産      A:B = 2:1

           株式の交換比率  A:B =  1:2  

             → B株2株に対して、AはA株1株を対価として付与すればいい。

        ③合併対価について参考となるべき事項→合併対価の譲渡制限の有無、市場の有無等対価の換価性に関する情報、対価が存続会社以外の株式等である場合の対価の権利内容、

        ④新株予約権の定めの相当性に関する事項

        ⑤計算書類等

        ⑥存続会社の債務の履行の見込みに関する事項→消滅会社の債権者にとって重要

        ⑦備置開始日後の変更



組織再編2、事業譲渡


前回の復習

 組織再編→合併、会社分割、株式交換、株式移転 (代表者間の契約+株主総会の承認)

      包括承継

        法律上当然に承継→債権者異議手続が必要


      事業譲渡(取引)

        →特定承継

          個別的な移転手続が必要

            →債権を譲渡する場合→債務者に通知・債務者の承諾(対抗要件)

             債務を譲渡する場合→債権者の同意


 組織再編手続における事前の開示・事後の開示→主に株主・債権者を救済するため

   吸収合併の例(対価としての株式の強制交換における株主の救済)


    吸収される会社の株主

          →吸収する会社の株式と強制的に交換→交換比率(対価の公正性)

                  例えば、A社(吸収会社)に株式の1株あたりの価値2

                      B社(被吸収会社)の株式の1株あたりの価値1

                      交換比率→A株1株とB株2株と交換


          →株式の譲渡自由→譲渡制限株式→株主にとって不利益変更(交換される株式の内容)


    吸収する会社の株主→増加する財産に比べ、交付する対価の方が多い→吸収会社の株主にとっての対価の不公正


    吸収される会社の債権者→債務者の変更→弁済資力の減→債権者にとって不利益変更

    吸収する会社の債権者→吸収によって負債が増える→債権者にとって不利益変更


       合併承認株主総会の会日の2週間前から、合併登記から6ヶ月後までの間→合併条件に関する書類を本店に備え置き→株主および債権者へ開示(会社782条、794条)→事前・事後の開示


        事前・事後の開示制度の目的

       →両当事会社の株主が合併承認決議において賛成するか反対するか、判断するため

        債権者が債権者異議手続を行うかどうか、判断するため


       開示事項(消滅会社の場合)

        ①合併契約

        ②合併対価の相当性に関する事項→合併比率が公正か?どうかの判断

        ③合併対価について参考となるべき事項→合併対価の譲渡制限の有無、市場の有無等対価の換価性に関する情報、対価が存続会社以外の株式等である場合の対価の権利内容、

        ④新株予約権の定めの相当性に関する事項

        ⑤計算書類等→組織再編比率の計算にとって必要

        ⑥存続会社の債務の履行の見込みに関する事項→消滅会社の債権者にとって必要な情報

        ⑦備置開始日後の変更


 株主総会の承認

   当事会社における株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が総会に出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決)が原則

             →例外 簡易組織再編(鯨が鰯を飲み込む)→鯨の方では株主総会の承認決議不要

                 略式組織再編(消滅会社の90%以上の大株主が存続会社である場合→消滅会社での株主総会の承認決議不要)


 反対株主の株式買取請求権

   会社からの退出の機会

   買取価格→公正な価格→組織再編行為に反対した株主にはシナジー公正分配価格を与える必要はない)し(ナカリセば価格でよい)、組織再編行為自体には賛成したが組織再編比率に反対した株主にナカリセバ価格を与えるのは不合理。→反対株主が組織再編に反対した理由に応じてナカリセバ価格とシナジー公正価格のいずれかが与えられるべき。

  ※ナカリセバ価格→組織再編公表前の市場価格(株価がシナジーを織り込む前の公正価格)


原則としては、組織再編は両当事会社の株主総会で承認決議(特別決議)を得る必要あり。

<ただし、例外あり>

 簡易組織再編と略式組織再編


  簡易組織再編→大きな会社が小さな会社を飲み込む(鯨が鰯を飲み込む)規模の小さい会社との組織再編→規模の大きい会社の株主にとって重要な意思決定事項ではない。→規模の大きい会社側の株主総会決議を不要とするもの。

   規模の小さい会社が20%以下


  略式組織再編→株主総会決議を行っても結果は賛成で変わらないから省略→他の会社の議決権の90%以上を保有している会社を特別支配会社→90%以上保有されている会社では株主総会決議が不要


 新株予約権の処理

  消滅会社が発行している新株予約権が合併によって存続会社に引き継がれるか?


  存続会社が存続会社の新株予約権または金銭を消滅会社の新株予約権者に交付しなければならない。


 債権者異議手続

  業績の悪い会社と合併→債務が不履行となるおそれ 

  交付金合併→会社の財産の増加に見合わない金銭の流出のおそれ


  債権者が異議の述べた場合→弁済、相当の担保の提供、弁済のための相当の財産の信託


 違法な組織再編に対する救済

  (事前)差止め→組織再編が法令・定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがあるとき

      ※合併比率の不公正も差止事由にならない?。


  (事後)無効の訴え→法定安定性・取引の安全に配慮すべき→訴えによる方法→提訴権者→株主等(株主・取締役・執行役・監査役・清算人)、破産管財人、合併を承認しなかった債権者(異議を述べた債権者)

        提訴期間→効力発生日から6か月間

        無効事由→重大な手続違反→①合併契約書が法定の記載事項を欠いている場合、②承認決議に無効・不存在・取消事由がある場合、③債権者異議手続が取られなかった場合、④合併内容の法令違反、⑤独占禁止法違反

        ※組織再編比率の不公正は無効原因となるか?→無効原因となると解すべき。

         無効判決→対世効、遡及効なし(将来効)。


会社分割

 1つの会社を2つ以上の会社に分けること。

 分割会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後、承継会社に承継させること(吸収

分割)

 分割会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後、新設会社に承継させること(新設分割)。

 会社の事業を2以上に分けて複数の会社に行わせる→物的分割→分社型

 分社後の会社の資本関係を断つ人的分割→分割型


 新設分割→新設分割会社が会社分割によって設立する会社(新設分割設立会社)に権利義務の全部または一部を承継させること。

 吸収分割→吸収分割をする会社(吸収分割会社)が既存の他の会社(吸収分割承継会社)に権利義務の全部または一部を承継させることをいう。


  吸収分割の場合の対価→柔軟化→株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、金銭等。

   →包括承継が生じる。


 手続

  新設分割→新設分割計画

  吸収分割→吸収分割契約


  事前の開示手続→株主総会特別決議→反対株主の株式買取請求・債権者異議手続→効力発生→事後の開示


  濫用的な会社分割

   財務上危機的な状況にある会社が、優良資産と一部の負債を新設分割設立会社に承継させて事業を継続


   分割会社→→→→→→→→優良資産・一部の負債→→→→→新設分割設立会社(新しい箱)

 取り残された一部の負債                      ↑

    ↑                             ↑

  残存債権者 その他の債権者ーーーーーーーーーーーーーーーーーー→↑


     偏頗行為

     詐害的な会社分割


     残存債権者を救済する明文の規定は平成26年会社法改正前にはなかった。

       学説上の解釈→法人格否認の法理、民法上の詐害行為取消権


  <平成26年会社法改正後>

  分割会社が残存債権者を害することを知って新設分割または吸収分割をした場合→残存債権者は設立会社または承継会社に対し、承継財産の価額を限度として、自己に対する債務の履行を請求することができる。


  労働者の異議申出手続

   会社←労働契約→労働者

   会社分割→労働契約関係も当然承継

   労働契約の承継について会社が個々の労働者と協議を行う義務を課している。


   「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する契約(会社分割労働承継法)」→労働者の異議申立手続

 分割会社は、①承継事業に主として従事する労働者、および、②①以外で承継会社・設立会社が契約(承継事業に主として従事していない労働者)を承継する労働契約の労働者に通知を行う。①のうち、分割契約等で承継会社等が承継する労働契約は、労働者の同意なく設立会社等に移転する。承継の対象とされなかったもの、すなわち、承継事業に主として従事する労働者であるのに、その労働契約が承継会社等に承継されないものについては、当該労働者が異議を申し出れば、承継の対象となる。②の労働契約、すなわち、承継事業に主として従事するのでない労働者であるのに、その労働契約が承継会社等に承継されるものについては、当該労働者が異議を申し出れば、承継の対象から除外される。

  ※①承継事業に従事しているにもかかわらず労働契約が承継されないか、

   ②承継事業に従事していないにもかかわらず労働契約が承継された。

      労働者はこれに異議を述べれば救済される。


事業譲渡

 →会社の行なっている事業を一体として他の者に譲渡する行為→株主総会の特別決議

  ①事業の全部の譲渡

  ②事業の重要な一部の譲渡 →この譲受会社では総会決議不要

  ③他の会社の事業の全部の譲受け


 非事業譲渡だが、事業譲渡と同じ規制に服せしめる→株主総会の特別決議

  ④子会社株式の全部または重要な一部の譲渡

  ⑤事業の全部の賃貸・事業の全部の経営の委任、損益共通契約

  ⑥事後設立  設立では財産引受けには変態設立事項として定款に記載し、目的財産の価値が公正かどうかについて検査役の調査を受ける。設立後2年以内に取締役が設立時の財産引受けに相当する重要財産の譲受けを行う場合、設立規制の脱法行為であるから、株主総会の特別決議を要する。


 事業譲渡者→競業避止義務


 株主総会決議が不要となる場合

  簡易事業譲渡→総資産の20%以下の資産を譲渡する場合→譲渡会社において株主総会決議は不要

  略式事業譲渡→特別支配会社への事業譲渡→特別被支配会社において株主総会決議は不要


事業譲渡の場合→債権者異議手続がない→なぜか?

     事業譲渡では組織再編のような包括承継は生じない。

     事業譲渡は特定承継なので、譲渡会社の財産を譲受会社に個別に移転する手続が必要

     面積的債務の移転→債権者の承諾が必要

      ちなみに、債権の譲渡→債務者への通知、債務者の承諾が必要(対抗要件)





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われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎By Leo_楠元纯一郎