われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの商法总则02 商法的理念和特色 法源 適用顺序 取引約款


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨




本日のゲスト

張紅(岡山大学教授(会社法学者)、元北京大学教授・弁護士)



内容摘要

1 商法の理念と特色

 既述のように、民法が日常生活における権利義務関係を規律しているのに対し、商法は企業生活におけるそれを規律しております。そして、民法は一般的抽象的な人(ドイツ語でペルゾン)を対象とし、日本商法は商人を対象としています。

 一般的抽象的な人と比べて、商人およびその行為(商行為)はどのように違うのかに着目すると、商法の理念や特色が浮かび上がってきます。

 商人および商行為には、営利性(商人の当然の報酬請求権、商人間の利息請求権)、簡易迅速性(商事代理の非顕名性、商行為の委任による代理権は本人の死亡により消滅しないこと、隔地者間における契約の申込みの効力、平常取引者からの契約の申込みを受けた場合の諾否通知義務)、大量性、反復継続性、定型画一性(取引約款)、公示主義(登記・公告・開示)、外観主義(外観と真実が一致していない場合、外観を信頼した者を保護)、契約自由主義(民法も契約自由主義ではあるが、商法では流質契約の許容などさらに強化)、責任加重主義(連帯債務、無過失責任、損害賠償額の定型化)といった特色があります。これらの特色に応じて、民法が修正されているのが商法といってもよいのです。


(松尾)王様の心得るべき基本、まずます王様の学問らしくなってきました。


2 商法の法源

法源(ほうげん)とはなんでしょうか?私は鹿児島人ですから方言といったらカゴンマ弁のことですが、それはさておき、法源とは裁判官が適用できる法規範のことです。

商法の法源には、まず、商法典(既述のとおり)、商事特別法(商法施行法、会社法、保険法、商業登記法、金融商品取引法、国際海上物品運送法、不正競争防止法、宅地建物取引業法等)、商事条約(国際航空運送に関するワルソー条約、モントリオール条約等)、商慣習法(企業社会において反復して行なわれるような社会規範であり、法的確信を伴なったもの)、商事自治法(会社の定款、金融商品取引所の業務規程、定型約款)。その他、慣習、条理、判例、学説が法源となりうるかについては議論があります。


3 商法の法源の適用順位

商事条約と制定法との関係は、条約が制定法に優先します(憲98条2項参照)。特別法は一般法に優先します。商法は民法の特別法です。

商法1条2項は、「商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法の定めるところによる」と規定しており、商慣習に民法の規定を改廃する効力を認めたものと解されているため、商慣習は民法(民事特別法、民法典、民事慣習法)に優先することになります。

商事特別法および商法典のような商事制定法と商慣習(法)との関係については、「法の適用に関する通則法」3条が「公の秩序または善良の風俗に反しない慣習は、法令の規定により認められたものまたは法令に規定されていない事項に関する事項に関するものに限り、法律と同一の効力を有する」と規定していることから、商事制定法が商慣習に優先(制定法優先主義)することになります。

なお、商法1条2項は、慣習法に制定法を改廃する効力を認めない「法の適用に関する通則法」3条の例外であると解されています。

(楠元)法律の世界では原則と例外をうまく使い分け、原則と矛盾が生じたら、例外ボックスに入れる傾向があります!これもリーガルマインド整理法です。

商事自治法と商事制定法および商慣習(法)との関係については、商事自治法が商事制定法に根拠があれば、商事自治法は商事制定法と同次元にあると考えられ、強行法規に反しない限り商事制定法に優先すると考えられます。

よって、商法の法源の適用順位は、商事条約(自動執行条約)、商事自治法(ただし、強行法規に反しないものに限る)、商事特別法(商事条約が国内法化されたものを含む)、商法典、商慣習(法)、民事特別法、民法、民事慣習法の順番に適用されます。


商法の法源の適用順位

①    商事条約(条約がそのまま適用される自動執行条約)

②    商事自治法 (ただし、法的根拠があり、かつ、強行法規に反しないものに限る)

③    商事特別法 (商事条約が国内法化されたものも含む)

④    商 法 典

⑤    商 慣 習(法)

⑥  民事特別法

⑦  民 法 典

⑧  民事慣習


4 取引約款

商取引には定型画一性、迅速性が、取引の効率性の観点から求められます。みなさんも、銀行取引約款、保険取引約款、証券取引約款、運送約款、倉庫約款、旅行業約款等をご覧になったことがあるでしょう。読むのもいやになるぐらい細かく小さい字でいっぱい書いてあるあの書類のことです。

約款とは企業側があらかじめ準備した契約条項のことで、不特定多数の消費者はその条件を飲むか呑まないかの選択肢しかなく、条項の一部の修正には応じてもらえません。条件を呑まない場合には契約が成立しない、ただそれだけのことです。

約款を準備した企業側にとっては、契約上の処理が定型画一化されることにより効率性が高まり、取引の相手方である消費者側にとっても取引条件の平等性が担保されることから取引約款は双方にとって利点が認められるといえます。

約款には、行政上の規制、司法上の規制、立法上の規制があります。

行政上の規制は、監督官庁が事前、事後に約款内容の妥当性について審査するというものです。営業には免許制、認可制、届出制等があるでしょうから、それらの申請時または届出時に事前の審査が行われます。事後的にも問題があれば、取消処分が出されたり、業務改善命令や業務停止命令が発せられたりします。

司法上の規制とは、具体的争訟において裁判所が行う約款効力の否定や制限です。これは事後的救済です。

立法上の規制とは、平成29年(2017)年改正民法による民法548条の2から548条の4までの立法がそれにあたります。

従来、取引約款は明文の規定がなく、それが通常用いられている場合には取引約款に従うという白地慣習法が存在していると解釈されてきておりましたが、この民法改正で、「定型約款」に関する規定が初めて設けられ、当事者間のみなし合意によりその拘束力が認められたことから、以後、取引約款は法的根拠のある商事自治法に位置付けられるものと思われます。

改正民法は,ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行なう取引であって,その内容の全部または一部が画一的であることがその双方にとって合理的なものを定型取引と定義し,さらに,定型取引において,契約の内容とすることを目的としてその特定の者により準備された条項の総体を定型約款と定義した上で(民548条の2第1項),定型取引をした者が,①定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき(民548条の2第1項1号),②定型約款を準備した者(定型約款準備者)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときは,定型約款の個別の条項についても合意をしたものとみなす(民548条の2第1項2号)。これを合意擬制という。  

これらの定義は,事業者間取引に適用される約款を排除するものである。なお,この表示は,相手方が表示の内容を認識しうる機会を保障するものでなけ ればならないと解されています。

ただし,この個別条項に関するみなし合意については例外があり,同項の条項のうち,相手方の権利を制限し,または相手方の義務を加重する条項であって,その定型取引の態様およびその実情ならびに取引上の社会通念に照らして民法1条2項に規定する基本原則(信義誠実の原則)に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては,合意をしなかったものとみなす(民548条の2第2項)。これは不当条項および不意打ち条項に対する規制(不当条項規制)における不当条項の不同意擬制といいます。

定型約款の内容の表示については,改正民法は,定型取引を行ない,または行なおうとする定型約款準備者は,定型取引合意の前または定型取引合意の後,相当の期間内に相手方から請求があった場合には,遅滞なく,相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならないとし,ただし,定型約款準備者がすでに相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し,またはこれを記録した電磁的記録を提供していたときは,この限りでないとしています(民548条の3第1項)。これを表示請求規制といいます。

さらに,定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の表示請求を拒んだときは,合意擬制の規定は適用せず,ただし,一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は,この限りでないとしています(民548条の3第2項)。

定型約款の内容の変更については,①定型約款の変更が,相手方の一般の利益に適合するとき(民548条の4第1項1号),②定型約款の変更が,契約をした目的に反せず,かつ,変更の必要性,変更後の内容の相当性,この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無およびその内容その他の変更にかかる事情に照らして合理的なものであるときは,定型約款準備者は,定型約款の変更をすることにより,変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし,個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができます(民548条の4第1項2号)。

定型約款の変更をする手続としては,定型約款準備者は,その効力発生時期を定め, かつ,定型約款を変更する旨および変更後の定型約款の内容ならびにその効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法により周知しなければなりません(民548条の4第2項)。

本条第1項第2号の規定による定型約款の変更は,前項の効力発生時期が到来するまでに同項の規定による周知をしなければ,その効力を生じません(民548条の4第3項)。

 このように定型約款の変更にかかる規定は、定型約款準備者の簡易迅速性の要請と相手方の保護をバランスよく調整したものです。 

なお、不当条項規制(民法548条の2第2項)は,民法548条の4第1項の規定による定型約款の変更については適用しない(民548条の4第4項)。民法548条の4は,そもそも相手方にとって不利益変更でないか,仮にそうであったとしても,変更の必要性,変更後の内容の相当性,合理性がなければ変更を認めないことから,不当条項規制に関する規定をあえて適用する必要がないからです。

(楠元)約款には、くれぐれも注意しましょう。インターネット通販である商品を1個だけのつもりで購入したら、翌月から毎月送られてくることがあり、後になって約款をよく読んだら実際にそのように書いてあったということもありますし、あるいは抱き合わせ商品を知らず知らずのうちに買わされることだってあるかもしれませんからね。

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