われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの商法总则03 商法是关于什么的规定?商人是什么?


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨

パーソナリティー・講師    東洋大学教授   楠元純一郎

パーソナリティー・録音師 美術家     レオー

常連ゲスト 哲学者・大学外部総合評価者  松尾欣治

常連ゲスト 岡山大学教授・弁護士  張紅




<<商法総則第3回(商法総則は何について規定しているのか?商人とは何か?>>

1 商法総則は何について規定しているのか?

 まずは、商法総則の条文を俯瞰・鳥瞰してみましょう。俯瞰というのは大空を羽ばたく鳥が空から下界を見下ろすことを意味しますね。

 この鳥を仮に鷹(たか)だとか鷲(わし)だとしましょう。鷹は一富士二鷹三茄子(なすび)といって、お正月の初夢として縁起がいいですね。なんで縁起がいいんですか?富士は無事、鷹は高い、成すは事を成す、ということかららしいんですよ。初夢とはいつか?1日とか2日とか所説あってもうどうでもいいぐらいですね。初夢っていうぐらいですから、私なんかは除夜の鐘が鳴って、年を越したその夜半から元旦朝の日の出までって勝手に決めています。鷹といえば、東京の三鷹ですね。三鷹ってところは、昔、江戸の八代将軍徳川吉宗の鷹狩りの場(鷹場)だったそうです。五代将軍綱吉が生類憐みの令を出して以来の解禁だったんでしょうね。鷹狩りといっても鷹を撃つんじゃなくて飼い慣らした鷹を放して、他の鳥や小動物などを捕獲させることですよね。それにしても権力者っていうのはなぜか鷹が好きみたいですね。鷹を調教して大型鳥類などを襲わせることで権威を見せつけたいからなのでしょうか。

 ところで、鷹と鷲はよく似ていて区別がつきにくいですが、どう違うかわかりますか?鷹は某プロ野球球団名でもありますがHawkですね。鷲はアメリカ合衆国のシンボルであるEagleです。アメリカのロックバンド、Eaglesはホテル・カリフォルニアで大ヒットしましたね。さて、それらの違いは、大きいほうが鷲で小さいほうが鷹みたいですよ。鷲>鷹だったんですね!知ってました?やっぱり、世界の覇権国家を目指す、あるいはそれを自認するアメリカだけあって、デカイものが好きなんですね。アメリカのスーパーマーケットにいくと飲み物はガロン単位で売ってるぐらいですから。ちなみに、1ガロンは3.785リットルです。

 さて、これらの条文を見ると、おおまかにいえば、商法総則は、商人の定義、商業登記簿(未成年者登記・後見人登記 ※商法の特別法である会社法なら会社設立登記にリンク)、商号、営業譲渡(営業)、商業帳簿、商業使用人、代理商について定めていることがわかります。

 しかも、条文に私が赤字で強調しているところをご覧ください。

それを見ると、「しなければならない(作為強制)」、「してはならない(不作為強制、禁止)」、「することができる(許可)」に分けられますね。

 内容的には、商人の物的設備(商業登記簿、商号、営業譲渡における営業)と人的設備(商業使用人、代理商)に分けられますね。

 結局、商法総則は商人に関する規定であり、こまかくいうと、商人の物的設備および人的設備に関して、商人なら「なにをしなければならないか?」、「なにをしてはならないか?」、「なにをすることができるか?」について定めたもの、ということができますね!

第一編 総則

第一章 通則

(趣旨等)

第一条 商人の営業、商行為その他商事については、他の法律に特別の定めがあるものを除くほか、この法律の定めるところによる。

2 商事に関し、この法律に定めがない事項については商慣習に従い、商慣習がないときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)の定めるところによる。

(公法人の商行為)

第二条 公法人が行う商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、この法律の定めるところによる。

(一方的商行為)

第三条 当事者の一方のために商行為となる行為については、この法律をその双方に適用する。

2 当事者の一方が二人以上ある場合において、その一人のために商行為となる行為については、この法律をその全員に適用する。

第二章 商人

(定義)

第四条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。

(未成年者登記)

第五条 未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

(後見人登記)

第六条 後見人が被後見人のために第四条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。

2 後見人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(小商人)

第七条 第五条、前条、次章、第十一条第二項、第十五条第二項、第十七条第二項前段、第五章及び第二十二条の規定は、小商人(商人のうち、法務省令で定めるその営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えないものをいう。)については、適用しない。

第三章 商業登記

(通則)

第八条 この編の規定により登記すべき事項は、当事者の申請により、商業登記法(昭和三十八年法律第百二十五号)の定めるところに従い、商業登記簿にこれを登記する。

(登記の効力)

第九条 この編の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。

2 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

(変更の登記及び消滅の登記)

第十条 この編の規定により登記した事項に変更が生じ、又はその事項が消滅したときは、当事者は、遅滞なく、変更の登記又は消滅の登記をしなければならない。

第四章 商号

(商号の選定)

第十一条 商人(会社及び外国会社を除く。以下この編において同じ。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。

2 商人は、その商号の登記をすることができる。

(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)

第十二条 何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。

2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

(過料)

第十三条 前条第一項の規定に違反した者は、百万円以下の過料に処する。

(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)

第十四条 自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。

(商号の譲渡)

第十五条 商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。

2 前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

(営業譲渡人の競業の禁止)

第十六条 営業を譲渡した商人(以下この章において「譲渡人」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあっては、区又は総合区。以下同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その営業を譲渡した日から二十年間は、同一の営業を行ってはならない。

2 譲渡人が同一の営業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その営業を譲渡した日から三十年の期間内に限り、その効力を有する。

3 前二項の規定にかかわらず、譲渡人は、不正の競争の目的をもって同一の営業を行ってはならない。

(譲渡人の商号を使用した譲受人の責任等)

第十七条 営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。←これも実質的には「しなければならない」ですね!

2 前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人及び譲渡人から第三者に対しその旨の通知をした場合において、その通知を受けた第三者についても、同様とする。

3 譲受人が第一項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、営業を譲渡した日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

4 第一項に規定する場合において、譲渡人の営業によって生じた債権について、その譲受人にした弁済は、弁済者が善意でかつ重大な過失がないときは、その効力を有する。

(譲受人による債務の引受け)

第十八条 譲受人が譲渡人の商号を引き続き使用しない場合においても、譲渡人の営業によって生じた債務を引き受ける旨の広告をしたときは、譲渡人の債権者は、その譲受人に対して弁済の請求をすることができる。

2 譲受人が前項の規定により譲渡人の債務を弁済する責任を負う場合には、譲渡人の責任は、同項の広告があった日後二年以内に請求又は請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。

(詐害営業譲渡に係る譲受人に対する債務の履行の請求)

第十八条の二 譲渡人が譲受人に承継されない債務の債権者(以下この条において「残存債権者」という。)を害することを知って営業を譲渡した場合には、残存債権者は、その譲受人に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができる。ただし、その譲受人が営業の譲渡の効力が生じた時において残存債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

2 譲受人が前項の規定により同項の債務を履行する責任を負う場合には、当該責任は、譲渡人が残存債権者を害することを知って営業を譲渡したことを知った時から二年以内に請求又は請求の予告をしない残存債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅する。営業の譲渡の効力が生じた日から十年を経過したときも、同様とする。

3 譲渡人について破産手続開始の決定又は再生手続開始の決定があったときは、残存債権者は、譲受人に対して第一項の規定による請求をする権利を行使することができない。

第五章 商業帳簿

第十九条 商人の会計は、一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従うものとする。

2 商人は、その営業のために使用する財産について、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿(会計帳簿及び貸借対照表をいう。以下この条において同じ。)を作成しなければならない。

3 商人は、帳簿閉鎖の時から十年間、その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない。

4 裁判所は、申立てにより又は職権で、訴訟の当事者に対し、商業帳簿の全部又は一部の提出を命ずることができる。

第六章 商業使用人

(支配人)

第二十条 商人は、支配人を選任し、その営業所において、その営業を行わせることができる。

(支配人の代理権)

第二十一条 支配人は、商人に代わってその営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。

2 支配人は、他の使用人を選任し、又は解任することができる。

3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(支配人の登記)

第二十二条 商人が支配人を選任したときは、その登記をしなければならない。支配人の代理権の消滅についても、同様とする。

(支配人の競業の禁止)

第二十三条 支配人は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

一 自ら営業を行うこと。

二 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。

三 他の商人又は会社若しくは外国会社の使用人となること。

四 会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

2 支配人が前項の規定に違反して同項第二号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

(表見支配人)

第二十四条 商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人)

第二十五条 商人の営業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する。

2 前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

(物品の販売等を目的とする店舗の使用人)

第二十六条 物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為をいう。以下この条において同じ。)を目的とする店舗の使用人は、その店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

第七章 代理商

(通知義務)

第二十七条 代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないものをいう。以下この章において同じ。)は、取引の代理又は媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない。

(代理商の競業の禁止)

第二十八条 代理商は、商人の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。

一 自己又は第三者のためにその商人の営業の部類に属する取引をすること。

二 その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。

2 代理商が前項の規定に違反して同項第一号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって代理商又は第三者が得た利益の額は、商人に生じた損害の額と推定する。

(通知を受ける権限)

第二十九条 物品の販売又はその媒介の委託を受けた代理商は、第五百二十六条第二項の通知その他売買に関する通知を受ける権限を有する。

(契約の解除)

第三十条 商人及び代理商は、契約の期間を定めなかったときは、二箇月前までに予告し、その契約を解除することができる。

2 前項の規定にかかわらず、やむを得ない事由があるときは、商人及び代理商は、いつでもその契約を解除することができる。

(代理商の留置権)

第三十一条 代理商は、取引の代理又は媒介をしたことによって生じた債権の弁済期が到来しているときは、その弁済を受けるまでは、商人のために当該代理商が占有する物又は有価証券を留置することができる。ただし、当事者が別段の意思表示をしたときは、この限りでない。

2 商人の法的概念(定義)

 商人の概念(定義)は商行為の概念と同様に、商法を適用するための基礎的な概念です。商人でなければ、あるいは、商行為でなければ商法は適用されないのです。あらゆる学問がそうですが、まず、定義をしっかりしなければお話になりませんからね。

 商人の概念の定義づけには、商行為の概念が必要不可欠です。ですから、商行為の条文も参照する必要がありることに留意してください。。

 商人には、固有の(inherent)商人と擬制(ぎせい)商人があります。固有のとは本来のという意味で、擬制とは本来はそうではないけれども、そのように見做す(みなす)という意味です。

 商法4条を見てください。

 

第二章 商人

(定義)

第四条 この法律において「商人」とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。

 あれっ?2はあるのに1がないですね。驚かないでください。条文表記の特徴として、1は省略しているのです。これは法の徹底した合理性で、書かなくってもわかることは省くってことなんでしょうね。このアラビア数字は項を意味しており、他の条文で出てくる漢数字は号を意味しているので以後、注意してください。

 商法4条1項は、商人について、自己の名をもって商行為をすることを業とする者と定義しています。これは、講学上、「固有の商人」といいます。これぞ本来の商人だぞ!という意味です。

 ここには三つの要件があります。

 ここでいう「自己の名をもって」とは、ある行為(取引)をする場合に、その自己(自己の名)に法律効果(権利・義務)が帰属するということです。

 たとえば、コンビニでバイト君が商品を売ったとしても、そのバイト君には売買契約の効果としての代金請求権(債権)や物(商品)の引渡義務(債務)は帰属せず、コンビニにそれが帰属することから、コンビニは商人(たいがい、会社でしょう)となりますが、バイト君は商人たりえないのです。

 

 ここでいう「商行為をすること」の「商行為」とは、商法501条(絶対的商行為)および商法502条(営業的商行為)である「基本的商行為」を指します。まずは、商行為法の当該規定を見てください。商法503条(附属的商行為)は、商法4条1項の固有の商人を定義づけるものではないことに注意してください。

 基本的商行為は、限定列挙であって、例示列挙ではないことから、ここに規定されている商行為だけが、商法4条1項の固有の商人の概念を導くのに必要な商行為ということになります!

 基本的商行為の一つである絶対的商行為(商§501)は、1号で「安く仕入れて高く売る」行為(投機購買およびその実行売却)、2号「高く売っておいて安く買い戻す行為」(投機売却およびその実行購買)、3号で「取引所取引」、4号で「商業証券に関する行為」です。

 絶対的商行為の最大の特徴は、その中心が物(動産・不動産)および有価証券の売買に関するものだということです。

 この1号と2号は、鞘(利ざや)抜き行為(Profit Margin Trading)ですね。これが極めて営利性が高いと考えられている商行為なんです。1号と2号の違いは、1号には不動産も含まれているが2号にはそれが含まれていないってことです。不動産は個性が強いので、安く買い戻すってことが一般に困難だからでしょうね。

 この3号の取引所とは、金融商品取引所、商品取引所等を指します。

 この4号の商業証券とは、手形・小切手、株券、社債券、船荷証券、倉荷証券等を指します。

 これらの絶対的商行為は、きわめて営利性が高く、1回限りの行為でも商行為となり、商行為法が適用されることになります。

(絶対的商行為)

第五百一条 次に掲げる行為は、商行為とする。

一 利益を得て譲渡する意思をもってする動産、不動産若しくは有価証券の有償取得又はその取得したものの譲渡を目的とする行為

二 他人から取得する動産又は有価証券の供給契約及びその履行のためにする有償取得を目的とする行為

三 取引所においてする取引

四 手形その他の商業証券に関する行為

(営業的商行為)

第五百二条 次に掲げる行為は、営業としてするときは、商行為とする。ただし、専ら賃金を得る目的で物を製造し、又は労務に従事する者の行為は、この限りでない。

一 賃貸する意思をもってする動産若しくは不動産の有償取得若しくは賃借又はその取得し若しくは賃借したものの賃貸を目的とする行為

二 他人のためにする製造又は加工に関する行為

三 電気又はガスの供給に関する行為

四 運送に関する行為

五 作業又は労務の請負

六 出版、印刷又は撮影に関する行為

七 客の来集を目的とする場屋における取引

八 両替その他の銀行取引

九 保険

十 寄託の引受け

十一 仲立ち又は取次ぎに関する行為

十二 商行為の代理の引受け

十三 信託の引受け

(附属的商行為)

第五百三条 商人がその営業のためにする行為は、商行為とする。

2 商人の行為は、その営業のためにするものと推定する。

 次に、基本的商行為の一つである営業的商行為(商§502)を見てください。13号まで商行為がたくさん列挙されていますね。これは明治32年に商法が制定されたときに考えられていた典型的な商取引類型なんでしょう。しかし、いまでは古臭いものになっています。たとえば、現代的ビジネスにはぱっと思いつくだけでも、放送事業(今やもうそれすら古いか)、通信事業などがありますね。これらの新しいビジネスは営業的商行為ではないのです(つまり、商行為ではない)。

 これらをよく見ると、物品の売買ではなく、サービス業だということがお分かりいただけると思います。営業的商行為の特徴は、絶対的商行為に比べ営利性が高くないということから、1回限りではなく、それを反復継続することによって商行為となりうるということです。営業の「業」には反復継続の意味があります。

 では、個別に見ていきましょう。

 1号の「賃貸業」。これは不動産賃貸業が典型ですね。その他、「レンタカー業」など、レンタル業などがあります。

 2号の「他人のためにする製造または加工に関する行為」は、他人の敬さんで物品を製造したり、加工を引き受けたりすることです。いわゆるメーカーは、自己の計算で部材・部品を仕入れ、製品を製造し、販売することから、これには該当せず、絶対的商行為ですから注意してください。缶詰屋さん、仕立屋さん、クリーニング屋さんとかがこれに該当します。

 3号の「電気またはガスの供給に関する行為」は、電気またはガスの供給を引き受けることです。水の供給に関する行為はこれに含まれていませんね。なんででしょうね?

 私のゼミ卒業生に太陽光発電事業の成功者がいますが、彼の行為もこれに該当するでしょうね。

 4号の「運送に関する行為」は、物品運送または旅客運送を引き受ける行為です。

 5号の「作業または労務の請負」の不動産や船舶の作業(土木・建築・建設・建造・修繕工事)を引き受けることであり、労務の請負とは、労働者の供給を引き受けることです。ゼネコン業、人材派遣業などがこれに該当します。

 6号の「出版、印刷または撮影に関する行為」

 7号の「客の来集を目的とする場屋(じょうおく)における取引」は、ホテル、レストラン、浴場、遊技場、興行場など、来訪者に施設を利用させることを目的としています。

 8号の「両替その他の銀行取引」は銀行業です。銀行業には受信業務と与信業務と両替業務等があります。単に金銭を貸し付けるだけの貸金業、クレジット信販業、リース業、質屋営業はノンバンク扱いとなります。

 9号の「保険」取引は、営利保険だけを指し、相互保険や共済保険はこれに該当しません。保険とはリスクを引き受けるものであり、いわば、安心を売るサービス業ですね。

 10号「寄託の引受け」は、倉庫業がそれに該当します。

 11号の「仲立ちまたは取次に関する行為」は、仲立ちが仲介業(他人間の法律行為の媒介、媒介代理商、商事仲立人、民事仲立人)、取次ぎが取次業(自己の名で他人の計算で法律行為をすること)に該当します。取次業の中でも、物品または有価証券の売買の取次を行うことを問屋営業(証券会社が典型)で、売買売買の取次を行うことを準問屋営業(物品運送の取次ぎを行う運送取扱人(コンビニ等))といいます。

 12号の「商行為の代理の引受け」としては、特定商人の営業代理を行う者に締約代理商がいます。

 13号の「信託の引受け」は、信託を受けて受託者となる信託業(信託財産の管理・運用および受益者への分配)のことです。

 以上が営業的商行為です。

 次に、固有の商人の三つ目の要件である「業とする」とは、営利の目的で、反復継続することです。絶対的商行為は極めて営利性が高く、1回限りの行為でも商行為となって、商行為法は適用されますが、これを反復継続しない限り、商人とはならず、その場合、商法総則は適用されません。営業的商行為はそもそも反復継続しない限り、商行為とはならず、したがって、商行為法は適用されず、もちろん、商行為でなければ商人ともなりません。

 以上が固有の商人の定義です。わかりましたか?固有の商人の定義には、商行為の概念(基本的商行為=絶対的商行為・営業的商行為)が不可欠なんです!

 次に擬制商人(商§4条2項)について説明します。

 第四条 

2 店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者又は鉱業を営む者は、商行為を行うことを業としない者であっても、これを商人とみなす。

 擬制商人は、固有の商人と違って、商行為をしなくても、店舗的設備で物品を販売するか、鉱業を営む者を指します。

 固有の商人は、物品を安く仕入れて高く売りますが、その場合、仕入は承継有償取得しますよね。でも、天然に存在する物について、仕入れをせずに取得し(原始取得)、それを販売する行為(原始産業)は、絶対的商行為に該当せず、ましてや、サービス業である営業的商行為にも該当しません。

 よって、この場合、固有の商人とはなりえないのですが、しかし、それを店舗的設備で販売するか(農家・漁師・酪農家等による店舗販売)、鉱業を営めば、これも擬制商人として商人と見做されるのです。

 ここで問題です。医師、弁護士、芸術家など自由職業人は、商人たりうるのでしょうか?これらの行為は、社会通念上、営利性がなく、絶対的商行為でもなく、営業的商行為でもないと考えられていますので、固有の商人の定義は満たしませんが、芸術家が店舗的設備で自作品の販売をすれば、擬制商人となる可能性もあると思いませんか?

なお、最後に、小商人(こしょうにん)について説明します。

小商人とは、たとえ商人の定義を満たしていたとしても、営業用財産の額が50万円以下の商人のことを指します。小商人には、その営業規模の小ささに配慮して、その煩雑さ避けるために、商業登記に関する規定(商5条・6条・8条~10条・11条2項・15条2項・17条2項前段・22条)や商業帳簿に関する規定(商19条)が適用されません。

以上、今日のところはこのへんで。




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