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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー・講師 東洋大学教授 楠元純一郎
パーソナリティー・録音師 美術家 レオー
常連ゲスト 哲学者・大学外部総合評価者 松尾欣治
常連ゲスト 岡山大学教授・弁護士 張紅
<われらの商法総則 9 (商号)>
ラジオ収録20200618
1 商号とは
商人が営業において自己を表示するために使用する名称
営業主体である商人を識別するために、文字によって表記される記号
→信用、名声、シンボル(認知・知名度)
屋号も商号に用いられる。
個人商人→自己の氏名でも、商号でも、営業ができ、登記もできる。
会社→商号は登記事項
※ 商号登記で使用できる文字→日本文字(漢字、ひらがな、カタカナ)・ローマ字(アルファベット大文字・小文字)・アラビア数字(算用数字)・一定の記号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)(商業登記規則50条、平成14年法務省告示315号)
※ 商標→自己の営業にかかる商品・役務(サービス)について表示する文字、図形、記号など(商標2条1項参照)
※ 営業標→自己の営業を表示するために用いる文字、図形、記号など(不正競争2条1項1号参照)
2 商号の機能
① 商人はその商号を他人に妨害されることなく使用し(商号使用権)、また、他人が同一・類似の商号を使用することを排斥できる(商号専用権)。
② 商号は譲渡したり、その使用を許諾したりすることができる。
③ 商号を信頼する一般公衆を保護する。
3 商号の原則
商号単一の原則→一つの営業につき、複数の商号を用いることはできない。→一つの営業につき一つの商号。→個人商人は営業ごとに複数の商号がもてるが、会社は一つの商号しかもてない。会社の行う営業行為の総体を事業という。
商号選定の自由(商号自由主義)
「商人はその氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。」(商11条1項)
※ 個人商人はその商号を登記することもできる(商11条2項)。
※ 商号真実主義なし←商号と営業の不一致でも構わない(折衷主義)。
商号自由主義の例外 ←一般公衆および他者の権利を保護するため
(1) 一般公衆保護
会社・団体の種類に関する誤認
公序良俗に反する商号
(2) 他者の権利保護
① 不正の目的による商号使用の禁止
「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない。」(商12条1項、会社8条1項)←商号専用権
→商人ではない者の名称は、この規定では禁止されない。
商号の不正使用によって、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれのある商人は、その侵害の停止または予防を請求することができる(商12条2項、会社8条2項)
違反の効果
差止請求(商12条2項、会社8条2項)← 「侵害の停止または予防の請求」
損害賠償請求(民709条)
過料(商13条、会社978条3号)
※過料(かりょう・あやまちりょう)は刑事罰ではなくて秩序罰。ちなみに科料(かりょう・とがりょう)は刑事罰。
② 不正競争防止法上の商号使用の禁止
「不正競争」とは
→他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの(周知の商品等表示)と同一もしくは類似の商品等を使用し、またはその商品等表示を使用した商品を譲渡等して、他人の商人または営業と混同を生じさせる行為(不正競争2条1項1号)
→自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一もしくは類似のものを使用し、またはその商品等表示を使用した商品を譲渡する行為(不正競争2条1項2号)
※ 商品等表示→人の業務にかかる氏名、商号、商標、標章、商品の容器もしくは包装その他の商品または営業を表示するもの(不正競争2条1項1号)
周知性(エリアが狭い)<著名性(エリアが広い)
<判例>
ある地域(神奈川県横浜市)で周知性のある「勝烈庵」というトンカツ料理店があり、
「かつれつ庵」という表示で料理店を営んだ者に対し、神奈川県鎌倉市では「かつれつ庵」の使用の差止めを認めたが、静岡県富士市でのそれについては差止めを認めなかったケースがある(横浜地判昭和58・12・9無体集15・3・802)。
※周知性はある限られた地域でのみ認められるもの
違反の効果
差止請求(不正競争3条)
損害賠償請求(不正競争4条)
損害額推定規定(不正競争5条)
営業上の信頼回復措置命令(不正競争14条)
刑事罰(不正競争21条1項1号・2号)
4 商号権(財産権)
① 商号使用権→他人の商号専用権によって排斥されない限り、他人により妨害を受けずに商号を使用できる権利。
商号先使用権者→周知・著名な商品等表示と同一・類似の商号を使用する者→不正競争防止法上の差止・損害賠償責任を免れる。
② 商号専用権
「不正の目的」→他の商人の商号または名称を自己の商号または名称として使用するなどにより、一般人をして自己の営業その他の活動をその商号等によって表示される他の商人の営業その他の活動であるかのごとく誤認させようとする意図→周知性・著名性は不要。不正競争の目的に限定されない。
<判例>
「不正の目的」は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など不正な活動を行う積極的な意思を有すること」(知財高判平成19・6・13判時2036・117)
「A会社(東京瓦斯株式会社)が東京都中央区に新社屋を建設し、そこに本店を移転する計画をもっていたことは広く世間に知られていたのに、B会社(新光電設株式会社)が同区内において商号を「東京瓦斯株式会社」と変更し、かつ、目的を「石炭瓦斯の製造販売」と変更する旨の登記をし、B会社には石炭瓦斯の製造販売の事業を営むに足る能力も準備もない等の事実があるときは、B会社は不正の目的でA会社の営業と誤認させる商号を使用したものであり、A会社はこれにより利益を害されるおそれがある。」(最判昭和36・9・29民集15・8・2256)
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー・講師 東洋大学教授 楠元純一郎
パーソナリティー・録音師 美術家 レオー
常連ゲスト 哲学者・大学外部総合評価者 松尾欣治
常連ゲスト 岡山大学教授・弁護士 張紅
<われらの商法総則 9 (商号)>
ラジオ収録20200618
1 商号とは
商人が営業において自己を表示するために使用する名称
営業主体である商人を識別するために、文字によって表記される記号
→信用、名声、シンボル(認知・知名度)
屋号も商号に用いられる。
個人商人→自己の氏名でも、商号でも、営業ができ、登記もできる。
会社→商号は登記事項
※ 商号登記で使用できる文字→日本文字(漢字、ひらがな、カタカナ)・ローマ字(アルファベット大文字・小文字)・アラビア数字(算用数字)・一定の記号(「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)(商業登記規則50条、平成14年法務省告示315号)
※ 商標→自己の営業にかかる商品・役務(サービス)について表示する文字、図形、記号など(商標2条1項参照)
※ 営業標→自己の営業を表示するために用いる文字、図形、記号など(不正競争2条1項1号参照)
2 商号の機能
① 商人はその商号を他人に妨害されることなく使用し(商号使用権)、また、他人が同一・類似の商号を使用することを排斥できる(商号専用権)。
② 商号は譲渡したり、その使用を許諾したりすることができる。
③ 商号を信頼する一般公衆を保護する。
3 商号の原則
商号単一の原則→一つの営業につき、複数の商号を用いることはできない。→一つの営業につき一つの商号。→個人商人は営業ごとに複数の商号がもてるが、会社は一つの商号しかもてない。会社の行う営業行為の総体を事業という。
商号選定の自由(商号自由主義)
「商人はその氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。」(商11条1項)
※ 個人商人はその商号を登記することもできる(商11条2項)。
※ 商号真実主義なし←商号と営業の不一致でも構わない(折衷主義)。
商号自由主義の例外 ←一般公衆および他者の権利を保護するため
(1) 一般公衆保護
会社・団体の種類に関する誤認
公序良俗に反する商号
(2) 他者の権利保護
① 不正の目的による商号使用の禁止
「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称または商号を使用してはならない。」(商12条1項、会社8条1項)←商号専用権
→商人ではない者の名称は、この規定では禁止されない。
商号の不正使用によって、営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれのある商人は、その侵害の停止または予防を請求することができる(商12条2項、会社8条2項)
違反の効果
差止請求(商12条2項、会社8条2項)← 「侵害の停止または予防の請求」
損害賠償請求(民709条)
過料(商13条、会社978条3号)
※過料(かりょう・あやまちりょう)は刑事罰ではなくて秩序罰。ちなみに科料(かりょう・とがりょう)は刑事罰。
② 不正競争防止法上の商号使用の禁止
「不正競争」とは
→他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているもの(周知の商品等表示)と同一もしくは類似の商品等を使用し、またはその商品等表示を使用した商品を譲渡等して、他人の商人または営業と混同を生じさせる行為(不正競争2条1項1号)
→自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一もしくは類似のものを使用し、またはその商品等表示を使用した商品を譲渡する行為(不正競争2条1項2号)
※ 商品等表示→人の業務にかかる氏名、商号、商標、標章、商品の容器もしくは包装その他の商品または営業を表示するもの(不正競争2条1項1号)
周知性(エリアが狭い)<著名性(エリアが広い)
<判例>
ある地域(神奈川県横浜市)で周知性のある「勝烈庵」というトンカツ料理店があり、
「かつれつ庵」という表示で料理店を営んだ者に対し、神奈川県鎌倉市では「かつれつ庵」の使用の差止めを認めたが、静岡県富士市でのそれについては差止めを認めなかったケースがある(横浜地判昭和58・12・9無体集15・3・802)。
※周知性はある限られた地域でのみ認められるもの
違反の効果
差止請求(不正競争3条)
損害賠償請求(不正競争4条)
損害額推定規定(不正競争5条)
営業上の信頼回復措置命令(不正競争14条)
刑事罰(不正競争21条1項1号・2号)
4 商号権(財産権)
① 商号使用権→他人の商号専用権によって排斥されない限り、他人により妨害を受けずに商号を使用できる権利。
商号先使用権者→周知・著名な商品等表示と同一・類似の商号を使用する者→不正競争防止法上の差止・損害賠償責任を免れる。
② 商号専用権
「不正の目的」→他の商人の商号または名称を自己の商号または名称として使用するなどにより、一般人をして自己の営業その他の活動をその商号等によって表示される他の商人の営業その他の活動であるかのごとく誤認させようとする意図→周知性・著名性は不要。不正競争の目的に限定されない。
<判例>
「不正の目的」は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など不正な活動を行う積極的な意思を有すること」(知財高判平成19・6・13判時2036・117)
「A会社(東京瓦斯株式会社)が東京都中央区に新社屋を建設し、そこに本店を移転する計画をもっていたことは広く世間に知られていたのに、B会社(新光電設株式会社)が同区内において商号を「東京瓦斯株式会社」と変更し、かつ、目的を「石炭瓦斯の製造販売」と変更する旨の登記をし、B会社には石炭瓦斯の製造販売の事業を営むに足る能力も準備もない等の事実があるときは、B会社は不正の目的でA会社の営業と誤認させる商号を使用したものであり、A会社はこれにより利益を害されるおそれがある。」(最判昭和36・9・29民集15・8・2256)