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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー・録音師 レオー 美術家
ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト 贾林 大学院博士課程
<われらの商法総則10(商号の譲渡・名板貸し)>
ラジオ収録20200625
1 商号の譲渡
商号=商人の営業上自己を表す名称→ 商号=商人の営業主体性
商号と商人の営業は密接不可分
商号(権)は財産→譲渡可能
商人の営業から切り離して商号だけを譲渡したら?→商人の同一性について一般公衆を誤認させるおそれあり。
商号譲渡→①営業とともに譲渡、②廃業して商号だけを譲渡
「商人の商号は、営業とともにする場合または営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。」(商15条1項)
個人商人の場合の商号の相続→商号登記(商登30条3項)
商号譲渡の効力発生要件→当事者間の意思表示
会社以外の商人の商号譲渡の対抗要件→商号譲渡の登記(商登30条1項・2項、商15条2項)※会社については適用されない(商登34条2項)
2 名板貸し(ないたがし)
名板貸しとは?→商人が自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾すること。
名板貸人(商人)→商号貸与→名板借人(他人)←取引の相手方→名板借人を名板貸人と誤認し、信頼するおそれ
「自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人(会社)は、当該商人(会社)が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。」(商14条、会社9条)
※表示を信頼した相手方の保護←禁反言則、外観法理
<要件>
外観の存在(名板借人が名板貸人の商号を使用していること)
外観作出上の帰責性(名板貸人が名板借人に自己の商号の使用を許諾したこと)
相手方の外観への信頼(相手方が名板借人を名板貸人であると誤認したこと)
<効果>
名板貸人は、名板借人の相手方との取引によって生じた名板借人の債務につき、連帯責任を負う。
※不真正連帯債務
商号使用とは?
商号A→A支店、A出張所 これも商号使用に該当
商号使用の許諾とは?
明示的許諾も黙示的許諾もある
※他人が自己の商号を勝手に使用していることを放置したら?→許諾したことにはならない←阻止義務がないため
判例
スーパーマーケットペットショップ事件(最判平成7・11・30民集49・9・2972)
「スーパーマーケットYの屋上でテナントとしてAがペットショップを経営しており、その店舗の外部にはYの商標を表示した大きな看板が掲げられており、屋上案内版等には「ペットショップ」とだけ記載され、営業主体がYかAかが明らかにされてはおらず、一般客が営業主体をYと誤認するのもやむを得ない外観があり、かつ、YとAとの契約により、AをしてYの統一的営業方針に従わせる等の事情が存在しているときは、Yは商法23条(会社9条)の類推適用により、一般客とAとの取引に関して名板貸人と同様の責任を負う。」
ホテル内マッサージ店事件(大阪高判平成28・10・13金判1512・8)
ホテル内のマッサージ店が施術ミスで顧客に損害を与えた。
顧客がマッサージ店の主体がホテルであると混同誤認させる外観があり、ホテルがその外観作出上帰責性があると主張。→ホテルの責任が認められた。
営業または事業を行うことの許諾とは?
営業・事業の同一性は必ずしも求められない。
異種営業の場合は特段の事情のない限り、名板貸責任は成立しない(最判昭和43・6・13・民集22・6・1171)
しかし→営業・事業の多角化の実情を踏まえると、営業・事業の同一性は第三者の誤認を招く要素の一つではあるが、名板貸責任の要件とすべきではない(多数説)。←相手方の軽過失・重過失の判断要素。
名板貸人が商人でない場合→本条の適用なし
類推適用はありうるか?
<判例>
東京地方裁判所厚生部事件(最判昭和35・10・21民集14・12・2661)
「一般に他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もってその他人のする取引が自己の取引であるかのように見える外形を作り出した物は、商法23条(会社9条)の法理に照らし、この外形を信頼して取引した第三者に対し自ら責めに任ずべきであって、東京地方裁判所が「東京地方裁判所厚生部」という名称を用いてたと取引することを認め、その職員に地方裁判所総務局厚生係に充てた部屋を使用することを認めていた等の事情があるときは、自己の取引であるかのような外形を作り出したと認めるべきである。」
取引によって生じた債務とは?
営業取引によって直接生じた債務
債務不履行によって生じた損害賠償債務
契約解除による現状回復義務
手形行為上の債務
詐欺のような取引的不法行為
相手方の誤認→善意・無重過失
相手方が善意→相手方が名板貸しの事実を知らなかった場合
相手方が名板貸しの事実について善意であったとしても、それを重過失によって知らなかった場合。→悪意と同視
ただし→軽過失によって知らなかった場合は保護される。
相手方の重過失
重過失→ほんのちょっと注意すれば予見できた、または回避できた過失。
→誤認した状況からして相手方が保護に値しないような場合。
→注意義務の著しい懈怠
→営業主体に疑念が生じた(たとえば、名板貸人と名板借人の営業がまったく異なっていたとか、看板は名板貸人の名称を掲げているが、実態は名板借人の営業であり、経理も別であると告げられていたなど)にも関わらず、名板貸人を訪問したり電話で確認するなど、なんらの調査もしなかったような場合。
※民法の代理権授与表示による表見代理(民109条)との比較
表示を信頼した相手方の保護要件→善意・無過失
→軽過失によって知らなかった相手方は保護されない。
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー・録音師 レオー 美術家
ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト 贾林 大学院博士課程
<われらの商法総則10(商号の譲渡・名板貸し)>
ラジオ収録20200625
1 商号の譲渡
商号=商人の営業上自己を表す名称→ 商号=商人の営業主体性
商号と商人の営業は密接不可分
商号(権)は財産→譲渡可能
商人の営業から切り離して商号だけを譲渡したら?→商人の同一性について一般公衆を誤認させるおそれあり。
商号譲渡→①営業とともに譲渡、②廃業して商号だけを譲渡
「商人の商号は、営業とともにする場合または営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。」(商15条1項)
個人商人の場合の商号の相続→商号登記(商登30条3項)
商号譲渡の効力発生要件→当事者間の意思表示
会社以外の商人の商号譲渡の対抗要件→商号譲渡の登記(商登30条1項・2項、商15条2項)※会社については適用されない(商登34条2項)
2 名板貸し(ないたがし)
名板貸しとは?→商人が自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾すること。
名板貸人(商人)→商号貸与→名板借人(他人)←取引の相手方→名板借人を名板貸人と誤認し、信頼するおそれ
「自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人(会社)は、当該商人(会社)が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。」(商14条、会社9条)
※表示を信頼した相手方の保護←禁反言則、外観法理
<要件>
外観の存在(名板借人が名板貸人の商号を使用していること)
外観作出上の帰責性(名板貸人が名板借人に自己の商号の使用を許諾したこと)
相手方の外観への信頼(相手方が名板借人を名板貸人であると誤認したこと)
<効果>
名板貸人は、名板借人の相手方との取引によって生じた名板借人の債務につき、連帯責任を負う。
※不真正連帯債務
商号使用とは?
商号A→A支店、A出張所 これも商号使用に該当
商号使用の許諾とは?
明示的許諾も黙示的許諾もある
※他人が自己の商号を勝手に使用していることを放置したら?→許諾したことにはならない←阻止義務がないため
判例
スーパーマーケットペットショップ事件(最判平成7・11・30民集49・9・2972)
「スーパーマーケットYの屋上でテナントとしてAがペットショップを経営しており、その店舗の外部にはYの商標を表示した大きな看板が掲げられており、屋上案内版等には「ペットショップ」とだけ記載され、営業主体がYかAかが明らかにされてはおらず、一般客が営業主体をYと誤認するのもやむを得ない外観があり、かつ、YとAとの契約により、AをしてYの統一的営業方針に従わせる等の事情が存在しているときは、Yは商法23条(会社9条)の類推適用により、一般客とAとの取引に関して名板貸人と同様の責任を負う。」
ホテル内マッサージ店事件(大阪高判平成28・10・13金判1512・8)
ホテル内のマッサージ店が施術ミスで顧客に損害を与えた。
顧客がマッサージ店の主体がホテルであると混同誤認させる外観があり、ホテルがその外観作出上帰責性があると主張。→ホテルの責任が認められた。
営業または事業を行うことの許諾とは?
営業・事業の同一性は必ずしも求められない。
異種営業の場合は特段の事情のない限り、名板貸責任は成立しない(最判昭和43・6・13・民集22・6・1171)
しかし→営業・事業の多角化の実情を踏まえると、営業・事業の同一性は第三者の誤認を招く要素の一つではあるが、名板貸責任の要件とすべきではない(多数説)。←相手方の軽過失・重過失の判断要素。
名板貸人が商人でない場合→本条の適用なし
類推適用はありうるか?
<判例>
東京地方裁判所厚生部事件(最判昭和35・10・21民集14・12・2661)
「一般に他人に自己の名称、商号等の使用を許し、もってその他人のする取引が自己の取引であるかのように見える外形を作り出した物は、商法23条(会社9条)の法理に照らし、この外形を信頼して取引した第三者に対し自ら責めに任ずべきであって、東京地方裁判所が「東京地方裁判所厚生部」という名称を用いてたと取引することを認め、その職員に地方裁判所総務局厚生係に充てた部屋を使用することを認めていた等の事情があるときは、自己の取引であるかのような外形を作り出したと認めるべきである。」
取引によって生じた債務とは?
営業取引によって直接生じた債務
債務不履行によって生じた損害賠償債務
契約解除による現状回復義務
手形行為上の債務
詐欺のような取引的不法行為
相手方の誤認→善意・無重過失
相手方が善意→相手方が名板貸しの事実を知らなかった場合
相手方が名板貸しの事実について善意であったとしても、それを重過失によって知らなかった場合。→悪意と同視
ただし→軽過失によって知らなかった場合は保護される。
相手方の重過失
重過失→ほんのちょっと注意すれば予見できた、または回避できた過失。
→誤認した状況からして相手方が保護に値しないような場合。
→注意義務の著しい懈怠
→営業主体に疑念が生じた(たとえば、名板貸人と名板借人の営業がまったく異なっていたとか、看板は名板貸人の名称を掲げているが、実態は名板借人の営業であり、経理も別であると告げられていたなど)にも関わらず、名板貸人を訪問したり電話で確認するなど、なんらの調査もしなかったような場合。
※民法の代理権授与表示による表見代理(民109条)との比較
表示を信頼した相手方の保護要件→善意・無過失
→軽過失によって知らなかった相手方は保護されない。