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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー・録音師 レオー 美術家
ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト 贾林 大学院博士課程
<われらの商法総則13(商業使用人(2)、代理商)(最終回)>
ラジオ収録20200716
1 表見支配人
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(商24条、会社13条)。
表見支配人→裁判上の行為を除き、真実の支配人と同一の権限。
本人
代理人(支配人) 相手方
支配人→営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限
表見代理制度→商人は実際には、ある者に支配権(包括的代理権)を与えておらず、登記もしていないが、その者に営業の主任者らしい名称(肩書)がある場合、その外観を信頼した相手方を保護する制度。
同種の規定→表見代表取締役(会社354条)、表見代表執行役(会社421条)
民法上の表見代理の規定(民109条、110条、112条)、使用者責任(民715条)では不十分。→商法、会社法の場合、相手方の軽過失も保護。
表見責任規定の要件
(1) 営業所の実質
営業所の実質があるといえるためには?→支店であっても一定の範囲で本店から離れて独自に営業活動の決定をし、対外的な取引を行う組織が必要。
・表見支配人の規定上の営業所(本店・支店)には、営業所としての実質を備えていなければならない(最判昭和37・5・1民集16・5・1031)。
・営業所の実質があれば、名称は出張所でもよい(最判昭和39・3・10民集18・3・458)
・生命保険会社の支社は、新規契約の募集と第1回保険料徴収の取次ぎがその業務であって、一定の範囲で対外的に独自の事業活動をなすべき従たる事務所としての実質を備えていたことから営業所の実質がなく、その支社長は表見支配人とはいえない(最判昭和37・5・1民集16・5・1031)。
(2) 営業所の主任者たる名称(肩書)<外観の存在>
いかなる名称が営業所の主任者を指すか?
→一般社会通念で判断→支店長、本店営業本部長、営業所長、店長、支社長。
×支店長代理、支店次長 ← 上席の存在を示唆しているため。
(3) 商人による名称の付与(肩書使用許諾)<外観作出上の帰責性>
明示的許諾
黙示的許諾(知っていて放置)←商人には使用人の行為を放置してはならない社会的作為義務あり。
※名板貸人の場合には、知らない人が勝手に自己の商号を使用したとしても、阻止義務なし。
(4) 相手方の善意<相手方の信頼>
表見支配人制度は相手方の信頼を保護する制度であることから、取引時において悪意(表見支配人が真実の支配人ではないことを知っていた→取引につき代理権がないことを知っていた)ならば、相手方は保護されない。
相手方に重過失があった場合は、悪意相当(最判昭和52・10・14民集31・6・825)。
2 ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人←これも実は準表見支配人ではないか?
商人の営業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する(商25条1項)。
前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できない(同条2項)。
ある種類または特定の事項(営業全般ではない)→仕入、販売、貸付等
たとえば、部長、課長、係長、主任等の名称を付与された者
→ 支配人のような広範な包括的代理権はない
しかし、委任された特定の範囲の事項(一部の事項)については包括的代理権あり。
→取引の相手方は、使用人の具体的な代理権について確認する必要がなく、また、商人と当該使用人間の内部で代理権に制限を加えたとしても善意の第三者に対抗できないため取引の円滑・安全に寄与する。
3 物品販売店舗等の使用人
物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人は、その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(商26条)。←使用人の代理権の擬制
代理権がないことを知っていた相手方は保護されない→たとえば、単なる清掃員であることを知っていた場合。
4 代理商の意義
代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でない者)は、取引の代理または媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない(商27条)
代理商は使用人ではない。→商人から独立した者。商人の企業の内部者ではない。
→代理商は、取引の代理を引き受け、または媒介をする業者であることから、独立の商人である(商4条1項、502条11号・12号)
→代理商は、企業の外部において特定商人(平常の営業の部類に属する取引の~)のために営業補助を行う独立の商人。
代理商は特定の商人のために営業の補助(代理、媒介)を行う。
商人と代理商との間→代理商契約→物品販売、損害保険、海上運送、旅行業
→販売代理店、損害保険代理店、海運代理店、旅行代理店など
ただし、代理店と称していても、媒介もあるため、必ずしも代理店
ではないことに注意。
代理商の経済的意義
商人が営業地域を拡大する場合でも、営業所、営業員を置かなくてもよく、各地域の事情(販路等)に知悉した者に営業を任せ、成功報酬だけを支払えば、物件費、人件費のコストを抑制できる。
商人と代理商との法律関係
商人と締約代理商→委任契約(締約代理商は本人である特定商人のために代理行為をする)
商人と媒介代理商→準委任関係(媒介代理商は、特定商人と相手方との契約を媒介する)。※ 媒介とは、仲介、あっせん、勧誘等
本人(特定商人) 特定商人 ← 契約 → 相手方
↓(代理権付与・委任) ↘(準委任) ↑(媒介)
締約代理商 ← 取引 → 相手方 媒介代理商
代理商の義務
通知義務→取引の代理または媒介をした場合の商人に対する通知
競業避止義務→商人の許可なく、自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引、その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役、執行役または業務を執行する社員となることができない(商28条1項)→これに違反→代理商または第三者が得た利益は商人の損害と推定(同条2項)。
通知を受ける権限→目的物検査義務履行後、契約不適合があった場合の相手方からの通知(それにより、相手方は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができる。商526条1項)を受ける権限
代理契約の解除→委任の終了事由に該当する場合(民653条)
契約期間の定めがない場合、原則として2か月前までに解除予告(商30条1項・2項)
代理商の報酬請求権
委任契約の場合、受任者は特約がなければ報酬を請求できない(民648条1項・2項、648条の2第1項)→しかし、代理商は独立の商人→商人の報酬請求権(商512条)
代理商の留置権
代理商が仕事(代理、媒介)をすれば、報酬請求権や費用前払請求権があるが、弁済期が到来したにもかかわらず、代理商にそれが支払われない場合→代理商は、その弁済を受けるまでは、本人のために占有する物または有価証券を留置できる(商31条、会社20条)。
民事留置権(民295条)と異なり、代理商の留置権は、留置権により担保される債権が留置の目的物に関して生じたという牽連性を必要としない。
商人間の留置権(商521条)と異なり、代理商の留置権は、留置の目的物が債務者の所有の物または有価証券である必要はない。
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
パーソナリティー 楠元純一郎 東洋大学教授
パーソナリティー・録音師 レオー 美術家
ゲスト 松尾欣治 哲学者・大学外部総合評価者
ゲスト 張紅 岡山大学教授・弁護士
ゲスト 贾林 大学院博士課程
<われらの商法総則13(商業使用人(2)、代理商)(最終回)>
ラジオ収録20200716
1 表見支配人
商人の営業所の営業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該営業所の営業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(商24条、会社13条)。
表見支配人→裁判上の行為を除き、真実の支配人と同一の権限。
本人
代理人(支配人) 相手方
支配人→営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限
表見代理制度→商人は実際には、ある者に支配権(包括的代理権)を与えておらず、登記もしていないが、その者に営業の主任者らしい名称(肩書)がある場合、その外観を信頼した相手方を保護する制度。
同種の規定→表見代表取締役(会社354条)、表見代表執行役(会社421条)
民法上の表見代理の規定(民109条、110条、112条)、使用者責任(民715条)では不十分。→商法、会社法の場合、相手方の軽過失も保護。
表見責任規定の要件
(1) 営業所の実質
営業所の実質があるといえるためには?→支店であっても一定の範囲で本店から離れて独自に営業活動の決定をし、対外的な取引を行う組織が必要。
・表見支配人の規定上の営業所(本店・支店)には、営業所としての実質を備えていなければならない(最判昭和37・5・1民集16・5・1031)。
・営業所の実質があれば、名称は出張所でもよい(最判昭和39・3・10民集18・3・458)
・生命保険会社の支社は、新規契約の募集と第1回保険料徴収の取次ぎがその業務であって、一定の範囲で対外的に独自の事業活動をなすべき従たる事務所としての実質を備えていたことから営業所の実質がなく、その支社長は表見支配人とはいえない(最判昭和37・5・1民集16・5・1031)。
(2) 営業所の主任者たる名称(肩書)<外観の存在>
いかなる名称が営業所の主任者を指すか?
→一般社会通念で判断→支店長、本店営業本部長、営業所長、店長、支社長。
×支店長代理、支店次長 ← 上席の存在を示唆しているため。
(3) 商人による名称の付与(肩書使用許諾)<外観作出上の帰責性>
明示的許諾
黙示的許諾(知っていて放置)←商人には使用人の行為を放置してはならない社会的作為義務あり。
※名板貸人の場合には、知らない人が勝手に自己の商号を使用したとしても、阻止義務なし。
(4) 相手方の善意<相手方の信頼>
表見支配人制度は相手方の信頼を保護する制度であることから、取引時において悪意(表見支配人が真実の支配人ではないことを知っていた→取引につき代理権がないことを知っていた)ならば、相手方は保護されない。
相手方に重過失があった場合は、悪意相当(最判昭和52・10・14民集31・6・825)。
2 ある種類または特定の事項の委任を受けた使用人←これも実は準表見支配人ではないか?
商人の営業に関するある種類または特定の事項の委任を受けた使用人は、当該事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を有する(商25条1項)。
前項の使用人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できない(同条2項)。
ある種類または特定の事項(営業全般ではない)→仕入、販売、貸付等
たとえば、部長、課長、係長、主任等の名称を付与された者
→ 支配人のような広範な包括的代理権はない
しかし、委任された特定の範囲の事項(一部の事項)については包括的代理権あり。
→取引の相手方は、使用人の具体的な代理権について確認する必要がなく、また、商人と当該使用人間の内部で代理権に制限を加えたとしても善意の第三者に対抗できないため取引の円滑・安全に寄与する。
3 物品販売店舗等の使用人
物品の販売等(販売、賃貸その他これらに類する行為)を目的とする店舗の使用人は、その店舗にある物品の販売等をする権限を有するものとみなす。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない(商26条)。←使用人の代理権の擬制
代理権がないことを知っていた相手方は保護されない→たとえば、単なる清掃員であることを知っていた場合。
4 代理商の意義
代理商(商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理または媒介をする者で、その商人の使用人でない者)は、取引の代理または媒介をしたときは、遅滞なく、商人に対して、その旨の通知を発しなければならない(商27条)
代理商は使用人ではない。→商人から独立した者。商人の企業の内部者ではない。
→代理商は、取引の代理を引き受け、または媒介をする業者であることから、独立の商人である(商4条1項、502条11号・12号)
→代理商は、企業の外部において特定商人(平常の営業の部類に属する取引の~)のために営業補助を行う独立の商人。
代理商は特定の商人のために営業の補助(代理、媒介)を行う。
商人と代理商との間→代理商契約→物品販売、損害保険、海上運送、旅行業
→販売代理店、損害保険代理店、海運代理店、旅行代理店など
ただし、代理店と称していても、媒介もあるため、必ずしも代理店
ではないことに注意。
代理商の経済的意義
商人が営業地域を拡大する場合でも、営業所、営業員を置かなくてもよく、各地域の事情(販路等)に知悉した者に営業を任せ、成功報酬だけを支払えば、物件費、人件費のコストを抑制できる。
商人と代理商との法律関係
商人と締約代理商→委任契約(締約代理商は本人である特定商人のために代理行為をする)
商人と媒介代理商→準委任関係(媒介代理商は、特定商人と相手方との契約を媒介する)。※ 媒介とは、仲介、あっせん、勧誘等
本人(特定商人) 特定商人 ← 契約 → 相手方
↓(代理権付与・委任) ↘(準委任) ↑(媒介)
締約代理商 ← 取引 → 相手方 媒介代理商
代理商の義務
通知義務→取引の代理または媒介をした場合の商人に対する通知
競業避止義務→商人の許可なく、自己または第三者のために商人の営業の部類に属する取引、その商人の営業と同種の事業を行う会社の取締役、執行役または業務を執行する社員となることができない(商28条1項)→これに違反→代理商または第三者が得た利益は商人の損害と推定(同条2項)。
通知を受ける権限→目的物検査義務履行後、契約不適合があった場合の相手方からの通知(それにより、相手方は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除ができる。商526条1項)を受ける権限
代理契約の解除→委任の終了事由に該当する場合(民653条)
契約期間の定めがない場合、原則として2か月前までに解除予告(商30条1項・2項)
代理商の報酬請求権
委任契約の場合、受任者は特約がなければ報酬を請求できない(民648条1項・2項、648条の2第1項)→しかし、代理商は独立の商人→商人の報酬請求権(商512条)
代理商の留置権
代理商が仕事(代理、媒介)をすれば、報酬請求権や費用前払請求権があるが、弁済期が到来したにもかかわらず、代理商にそれが支払われない場合→代理商は、その弁済を受けるまでは、本人のために占有する物または有価証券を留置できる(商31条、会社20条)。
民事留置権(民295条)と異なり、代理商の留置権は、留置権により担保される債権が留置の目的物に関して生じたという牽連性を必要としない。
商人間の留置権(商521条)と異なり、代理商の留置権は、留置の目的物が債務者の所有の物または有価証券である必要はない。