われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの商行為法02 附属商行为 公法人商行为 单/双方商行为


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


パーソナリティー 楠元純一郎  東洋大学教授       

パーソナリティー レオー        美術家            

ゲスト                   松尾欣治   哲学者・大学外部総合評価者




<われらの商行為法02(附属的商行為、公法人の商行為、一方的商行為・双方的商行為)>

ラジオ収録20201003


講師 楠元純一郎(法学者)

録音師 レオー(美術家)

質問者 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)


1 附属的商行為

 前回は、商行為法が適用される対象として、そして、商法総則の商人の概念を確定するものとしての基本的商行為である絶対的商行為、営業的商行為についてお話しました。

 今日は、附属的商行為についてまずお話します。附属的商行為はすでに商人となっている者がする行為であることを前提としております。

附属的商行為とは?

 商人がその営業のためにする行為(商503条1項) ← 商人であることを前提

 「営業のためにする行為」→ 営業行為(絶対的商行為・営業的商行為)ではない。商人の営業遂行に直接必要な行為だけでなく、営業を補助するすべての行為であって、営利性の有無を問わない(長期的には利益につながる)。


 具体例:開業準備行為、店舗・工場・機械の購入または賃借等、商品の運送の委託、営業資金の借入れ、広告・宣伝の依頼、得意先への贈与・接待、商品・店舗への保険の付保。

従業員の雇用については争いがあるものの、判例はこれを肯定(最判昭30・9・29民集9・10・1484)。


 商人の行為はその営業のためにするものと推定(商503条2項)

  →個人商人は自然人であることから、商人としての企業生活もあれば個人的私生活もあるがゆえに、商人の行為が営業行為以外すべて、その営業のためにするものとは限らない。たとえば、個人的に信用の授受をするような場合。


 ただし、商人の営業行為以外の行為はすべて営業のためにするものと推定される。→当事者間でその点で争いがなければ、そのまま「営業のためにするもの」とされ、附属的商行為となる。※推定するとは、一応そのように扱う。→反証があれば覆される。


 よって、次は当事者間でそれを争う側に反証の立証責任がある。(立証責任の転換効)


 会社の場合も同様か?

  会社の代表取締役とて、自然人であるがゆえに、個人的な私生活もある。

  会社の行為に私生活を反映させてもよいのか?


<最判平成20・2・22民集62・2・576>

主文 原判決中被上告人に関する上告人の敗訴部分を破棄する。 前項の部分につき,本件を福岡高等裁判所に差し戻す。 破棄(借主が一応勝訴)・差戻し(最高裁は事実審ではないから、高裁に差し戻して、改めて事実関係について審査せよ)→事実上、貸主Aの敗訴

理由 上告代理人冨山敦,同森田孝久の上告受理申立て理由第7の3について

1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1) 被上告人(最高裁に訴えられた人、貸主A→控訴審で勝訴)は,砂の採取及び販売等を目的とする有限会社法の規定による有限会社であったが,現在,会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律2条 1項に基づき,会社法の規定による株式会社として存続している。Aは,被上告人 の代表取締役である。

(2) 上告人(最高裁に訴えた人(借主))は,平成6年7月26日当時第1審判決別紙1物件目録記載1及び 2の不動産(以下「本件不動産」という。)を所有していた。

(3) 本件不動産には,佐賀地方法務局唐津支局平成6年7月26日受付第86 90号をもって,原因を平成3年5月7日金銭消費貸借平成6年7月26日設定, 債権額を5000万円,債務者を上告人,抵当権者を被上告人とする抵当権(以下 「本件抵当権」という。)の設定登記(以下「本件抵当権設定登記」という。)が されている。 不動産に抵当権が設定されていた→誰かからお金を借りた→抵当権者はお金の貸主A

(4) 本件本訴は,上告人(借主)が被上告人(貸主A)に対し,本件不動産の所有権に基づき,本件抵当権設定登記の抹消登記手続を求める(請求の趣旨)ものである。本件反訴は,被上告人が上告人に対し,主位的請求として,被上告人は平成3年5月7日上告人に1億円を貸し付けたと主張して,残元本9498万4440円及び遅延損害金の支払を求め,

-1-

予備的請求として,被上告人は前同日Bに1億円を貸し付け,上告人がBの債務を 連帯保証したと主張して,主位的請求と同額の金員の支払を求めるものである。被 上告人は,本件抵当権の被担保債権は反訴請求に係る債権であると主張している。

(5) 上告人(借主→あなたAが私にお金を貸した行為は会社の代表取締役としてしたのだから附属的商行為でしょ。だから、旧商法が適用されて、あたなの私に対する貸金返還請求権は商事債権、もうすでに5年が過ぎているので消滅しましたよね!)は,平成17年11月1日の原審第1回口頭弁論期日において,反訴請求に係る債権につき商法522条所定の5年の消滅時効が完成しているとして,これを援用した。 ※債権法改正とそれに伴う商法改正により、現在では、民法も商法も知ったときから5年になっている。それ以前は、民事一般債権の消滅時効は10年、商事債権の消滅時効は5年。商事の迅速性に鑑みて、民法と差を付けていた。改正により、民法が商法に近づいた。民法の商化という。

2 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人の本訴請求(あたなの商事債権は消滅したのだから、私の所有不動産に設定されている抵当権を抹消しなさい)を棄却すべきものとし,被上告人の反訴請求を一部認容した。

被上告人は,平成3年5月7日,上告人又はBに対して,返済期日を平成3年7 月31日として1億円を貸し付けたものであるところ,その借主が上告人であればもちろんのこと,たとえそれがBであるとしても上告人はBの債務を連帯保証したというべきであるから,いずれにせよ上告人は被上告人に対して1億円の債務を負っていたことになり,そして,その残元本は8300万円となっている。

被上告人の代表取締役であるAは,小中学校の同窓であり,C商工会の理事長 (A)と理事(上告人)として親交のあった上告人からの依頼を受け,博多駅前の 土地を整理して転売するために1億円を必要としていたBの資金に充てるため, 「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で,自己が代表取締役を務める有限会社である被上告人において上告人の依頼に応じることとし,上告人が竹馬の友であることを強調して,被上告人の経理担当者をして,被上告人がその取引銀行から融資を受けるための手続をさせ,融資を受けた1億円を被上告人が上告人又はBに貸し付けた(以下,この貸付けを「本件貸付け」という。)ものであるから,本件貸付けは被上告人の営業とは無関係にAの上告人に対する情宜に基づいてされたもの

-2-

とみる余地がある。そうすると,本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債 権に当たるということはできず,上記債権には商法522条が適用されないから, 上告人の消滅時効の主張はその前提を欠く。

したがって,本件抵当権の被担保債権である本件貸付けに係る債権が時効消滅し たということはできないし,また,上告人は被上告人に対する8300万円及び遅 延損害金の支払義務を免れないというべきである。

3 しかしながら,原審(本件貸付けは商行為ではなく、民事行為なので、民法が適用され、民事債権の消滅時効は10年だよ→だからまだ間に合うよ、返してもらえるはず。)の本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとする判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事 業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする 行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条), 会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と 同義と解される。)。

前記事実関係によれば,本件貸付けは会社である被上告人がしたものであるから,本件貸付けは被上告人の商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり, 本件貸付けがAの上告人に対する情宜に基づいてされたもの(それだけでは、商行為性を否定する決め手とはならないよ)とみる余地があるとし ても,それだけでは,1億円の本件貸付けが被上告人の事業と無関係であることの立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しない

-3-

ことは明らかである。 そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。これと異なる原審の判断に は,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

4 以上によれば,論旨は理由があり,原判決中被上告人に関する上告人の敗訴 部分は破棄を免れない。そこで,本件貸付けに係る債権に商法522条の適用があ ることを前提として,同債権が時効消滅したか否かについて更に審理を尽くさせる ために,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。なお,被上告人の反訴 請求には主位的請求と予備的請求とが併合されているのであるから,差戻し後の控 訴審においては,まず,主位的請求の請求原因として主張されている事実,すなわ ち本件貸付けに係る借主が上告人であるか否かを判断する必要があり,これが否定 された場合には,予備的請求に対する判断を行うべきこととなる。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井 功 裁判官 津野 修 裁判官 中川了滋 裁判官 古田 佑紀)

2 公法人の商行為

  公法人が行なう商行為については、法令に別段の定めがある場合を除き、この法律の定めるところによる(商2条)。この法律とは→商法


3 一方的商行為・双方的商行為


  一方的商行為とは→当事者の一方にとってのみ商行為となる行為→双方に商法を適用(商3条1項)→双方に同じ法律を適用しないと矛盾が生じるから。

B2C

   小売業者(商人)と消費者(非商人)

銀行(商人)と預金者(非商人)

保険会社(商人)と保険契約者(非商人)


当事者の一方に2人以上いる場合で、そのうち1人のために商行為となる行為→当事者全員に商法を適用(商3条2項)。


  双方的商行為とは→当事者双方にとって商行為となる行為→もちろん、双方に商法が適用

   B2B

製造業者(商人)と卸売業者(商人)

   卸売業者(商人)と小売業者(商人)

   銀行(商人)と融資先(商人)




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