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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
<LeoNRadio日の出 われらの商行為法05(申込みに対する諾否通知義務、申込みを受けた者の物品保管義務、債務の履行場所・時間、債権の消滅時効)>
ラジオ収録 20201025
講師 楠元純一郎(法学者)
録音師 レオー(美術家)
ゲスト 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
申込みに対する諾否通知義務、申込みを受けた者の物品保管義務、債務の履行場所・時間、債権の消滅時効
申込みに対する諾否通知義務(少なくとも一方が商人の場合)
契約は申込みに対して、承諾しない限り、成立することはない。
たとえ、「返事がなければ承諾したものとみなす」といった予告付きの申込みを受けたとしても同様。
商509条1項→商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知をしなければならない(諾否通知義務)。
商509条2項→諾否通知を怠った場合、申込みの承諾が擬制される。
→承諾したものとみなされる→契約成立
→商行為の迅速性および相手方の継続的取引関係のある商人への信頼の保護
「平常取引をする者」→すでに取引関係にあり、今後もその継続が予想される関係にある者→申込者は商人とは限らない。※米屋がある農家から米を毎年購入しているような関係。
「営業の部類に属する取引」→商人の基本的商行為に限られるか、附属的商行為も含まれるかについては争いあり。
送付物保管義務(少なくとも一方が商人の場合)
商510条本文→商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合に、申込みと同時に受領した物品がある時は、その申込みを拒絶したときでも、その物品を保管する義務を負う。
保管費用は誰が負担するのか?→「申込者の費用を持って」→物品を送付した申込者の負担→たとえば、どんな費用がかかるのか?→たとえば、大量の生鮮食料品の場合、営業所の冷蔵庫に入らない場合→別の倉庫業者に依頼→費用発生→申込者が費用を後に支払わない可能性あり→当該送付物品を売却して、そこから費用を捻出→当該物品の売却では当該費用を賄えない場合?→ただし書を参照。
→商取引においては、申込み者が相手方の承諾を予想して、申込みと同時に物品の全部または一部(サンプル等)を送付することも少なくない→これを保管させること→商取引の迅速性、円滑性、物品を送付した申込み者の商人に対する信頼の保護。
→民法→申込みとともに物品が送付された場合→申込みを拒絶したときであっても、送付物保管義務の規定はない。
もっとも、商510条ただし書→物品の価格が費用を償うのに足らないとき、保管することにより商人に損害が生じる場合には保管義務なし。
物品を送付した申込み者は商人でなくてもよい
送付物品とともに申込みを受け、保管義務を負う者は商人に限られる。
債務の履行場所
債務→売買契約なら→売主の債務:物品の引渡義務、買主の債務:代金支払義務
債務の履行=弁済
民法上の債務の履行場所
民484条1項→特定物(他の物で代替できない物)の引渡し→債権発生時、その物が存在した場所で。
→その他の弁済(引渡しだったら不特定物、引渡し以外の債務、たとえば、代金支払債務もある)→債権者の住所で。
※ 売買だったらこの債権者は売主
債権者の住所で弁済ということなら、買主が売主の住所で代金を支払う。
→持参債務(民商共通)
※ 債権発生時→たとえば、契約の成立時が普通であろうが、場合によって、契約から一定の条件が満たされた場合に、または一定期間経過後に債権・債務が発生する場合がある。
法律行為(契約)と債権発生にズレが生じる場合あり。
いったい、どんな場合?
→停止条件付契約→契約に基づく債権、債務が一定の条件を満たして初めて発生する契約
たとえば、停止条件付贈与契約「あなたが大学に合格したら、自動車を買ってあげるね。」
→始期付契約→契約に基づく債権、債務の発生を先延ばし(先日付)にする契約
商法上の債務の履行場所
商516条→商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。
「その行為の時に」→法律行為→そのほとんどは契約→商事契約(商行為)時
その他の債務の履行→たとえば、代金弁済→債権者の営業所(住所)→持参債務(民商共通)
<特定物の引渡し>
商516条→商行為によって生じた債務における特定物の引渡しの場所は、法律行為時その特定物が存在していた場所で行う。
民484条1項→債権発生当時、その特定物が存在していた場所
※行為時(法律行為時)と債権発生時の違いは?
停止条件債務・始期付債務の場合には行為時と債権発生時がずれる場合がある点
<その他の債務>
商516 条→債権者の現在の営業所(営業所がない場合はその住所)(持参債務)
民484条1項→債権者の現住所(持参債務)
※代金の支払場所→商516条、民484条1項→持参債務が原則→目的物の引渡しは買主の営業所または現住所、代金の支払は売主の営業所または現住所→目的物の引渡しと代金支払が同時履行の場合→民574条→売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
持参債務→代金債務の場合→債務者が債権者のところに出向いて支払う
<無記名債権(債権者が特定されておらず流通する可能性のある、たとえば、回数券)、指図債権(裏書によって債権者が目まぐるしく入れ替わる、たとえば、手形)の弁済→債務者にとって誰が債権者がわからない→民法に規定されたことから、商法当該規定削除>
債務者の現時の営業所、営業所がないときはその住所(取立債務)→無記名債権、指図債権は転々流通するから債務者は弁済時に誰が債務者かわからないため。→民520条の8・18・20
取立債務→代金を債権者が債務者のところに出向いて支払う
債務の履行の時間または履行請求の時間
商520条→削除
法令または慣習により商人の取引時間の定めがある時は、その取引時間に限り、債務の履行をし、またはその履行の請求をすることができる。
→しかし、これは商行為に限らず、幅広く民事取引一般にも妥当する
→改民484条2項→追加
債権の消滅時効
旧商522 条→削除
商行為によって生じた債権の消滅時効は原則として5年
2017年改正前民法167条
債権一般の消滅時効→原則として10年
改民166条1項→債権者が権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年で消滅
二元的時効→知った時→主観的起算点
権利を行使することができる時→客観的起算点
以後、民商共通化
オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」
エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」
作詞作曲 楠元純一郎
編曲 山之内馨
<LeoNRadio日の出 われらの商行為法05(申込みに対する諾否通知義務、申込みを受けた者の物品保管義務、債務の履行場所・時間、債権の消滅時効)>
ラジオ収録 20201025
講師 楠元純一郎(法学者)
録音師 レオー(美術家)
ゲスト 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)
申込みに対する諾否通知義務、申込みを受けた者の物品保管義務、債務の履行場所・時間、債権の消滅時効
申込みに対する諾否通知義務(少なくとも一方が商人の場合)
契約は申込みに対して、承諾しない限り、成立することはない。
たとえ、「返事がなければ承諾したものとみなす」といった予告付きの申込みを受けたとしても同様。
商509条1項→商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく諾否の通知をしなければならない(諾否通知義務)。
商509条2項→諾否通知を怠った場合、申込みの承諾が擬制される。
→承諾したものとみなされる→契約成立
→商行為の迅速性および相手方の継続的取引関係のある商人への信頼の保護
「平常取引をする者」→すでに取引関係にあり、今後もその継続が予想される関係にある者→申込者は商人とは限らない。※米屋がある農家から米を毎年購入しているような関係。
「営業の部類に属する取引」→商人の基本的商行為に限られるか、附属的商行為も含まれるかについては争いあり。
送付物保管義務(少なくとも一方が商人の場合)
商510条本文→商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合に、申込みと同時に受領した物品がある時は、その申込みを拒絶したときでも、その物品を保管する義務を負う。
保管費用は誰が負担するのか?→「申込者の費用を持って」→物品を送付した申込者の負担→たとえば、どんな費用がかかるのか?→たとえば、大量の生鮮食料品の場合、営業所の冷蔵庫に入らない場合→別の倉庫業者に依頼→費用発生→申込者が費用を後に支払わない可能性あり→当該送付物品を売却して、そこから費用を捻出→当該物品の売却では当該費用を賄えない場合?→ただし書を参照。
→商取引においては、申込み者が相手方の承諾を予想して、申込みと同時に物品の全部または一部(サンプル等)を送付することも少なくない→これを保管させること→商取引の迅速性、円滑性、物品を送付した申込み者の商人に対する信頼の保護。
→民法→申込みとともに物品が送付された場合→申込みを拒絶したときであっても、送付物保管義務の規定はない。
もっとも、商510条ただし書→物品の価格が費用を償うのに足らないとき、保管することにより商人に損害が生じる場合には保管義務なし。
物品を送付した申込み者は商人でなくてもよい
送付物品とともに申込みを受け、保管義務を負う者は商人に限られる。
債務の履行場所
債務→売買契約なら→売主の債務:物品の引渡義務、買主の債務:代金支払義務
債務の履行=弁済
民法上の債務の履行場所
民484条1項→特定物(他の物で代替できない物)の引渡し→債権発生時、その物が存在した場所で。
→その他の弁済(引渡しだったら不特定物、引渡し以外の債務、たとえば、代金支払債務もある)→債権者の住所で。
※ 売買だったらこの債権者は売主
債権者の住所で弁済ということなら、買主が売主の住所で代金を支払う。
→持参債務(民商共通)
※ 債権発生時→たとえば、契約の成立時が普通であろうが、場合によって、契約から一定の条件が満たされた場合に、または一定期間経過後に債権・債務が発生する場合がある。
法律行為(契約)と債権発生にズレが生じる場合あり。
いったい、どんな場合?
→停止条件付契約→契約に基づく債権、債務が一定の条件を満たして初めて発生する契約
たとえば、停止条件付贈与契約「あなたが大学に合格したら、自動車を買ってあげるね。」
→始期付契約→契約に基づく債権、債務の発生を先延ばし(先日付)にする契約
商法上の債務の履行場所
商516条→商行為によって生じた債務の履行をすべき場所がその行為の性質又は当事者の意思表示によって定まらないときは、特定物の引渡しはその行為の時にその物が存在した場所において、その他の債務の履行は債権者の現在の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)において、それぞれしなければならない。
「その行為の時に」→法律行為→そのほとんどは契約→商事契約(商行為)時
その他の債務の履行→たとえば、代金弁済→債権者の営業所(住所)→持参債務(民商共通)
<特定物の引渡し>
商516条→商行為によって生じた債務における特定物の引渡しの場所は、法律行為時その特定物が存在していた場所で行う。
民484条1項→債権発生当時、その特定物が存在していた場所
※行為時(法律行為時)と債権発生時の違いは?
停止条件債務・始期付債務の場合には行為時と債権発生時がずれる場合がある点
<その他の債務>
商516 条→債権者の現在の営業所(営業所がない場合はその住所)(持参債務)
民484条1項→債権者の現住所(持参債務)
※代金の支払場所→商516条、民484条1項→持参債務が原則→目的物の引渡しは買主の営業所または現住所、代金の支払は売主の営業所または現住所→目的物の引渡しと代金支払が同時履行の場合→民574条→売買の目的物の引渡しと同時に代金を支払うべきときは、その引渡しの場所において支払わなければならない。
持参債務→代金債務の場合→債務者が債権者のところに出向いて支払う
<無記名債権(債権者が特定されておらず流通する可能性のある、たとえば、回数券)、指図債権(裏書によって債権者が目まぐるしく入れ替わる、たとえば、手形)の弁済→債務者にとって誰が債権者がわからない→民法に規定されたことから、商法当該規定削除>
債務者の現時の営業所、営業所がないときはその住所(取立債務)→無記名債権、指図債権は転々流通するから債務者は弁済時に誰が債務者かわからないため。→民520条の8・18・20
取立債務→代金を債権者が債務者のところに出向いて支払う
債務の履行の時間または履行請求の時間
商520条→削除
法令または慣習により商人の取引時間の定めがある時は、その取引時間に限り、債務の履行をし、またはその履行の請求をすることができる。
→しかし、これは商行為に限らず、幅広く民事取引一般にも妥当する
→改民484条2項→追加
債権の消滅時効
旧商522 条→削除
商行為によって生じた債権の消滅時効は原則として5年
2017年改正前民法167条
債権一般の消滅時効→原則として10年
改民166条1項→債権者が権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年で消滅
二元的時効→知った時→主観的起算点
権利を行使することができる時→客観的起算点
以後、民商共通化