われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの商行为法10 匿名組合・仲立人・問屋


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨


<LeoNRadio日の出 われらの商行為法10(匿名組合・仲立人・問屋)>

ラジオ収録 20201213


講師 楠元純一郎(法学者)

録音師 レオー(美術家)

ゲスト 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)

jialin(大学院博士課程)


<匿名組合(とくめいくみあい)>

実務ではTK(ティーケイ)と呼ばれることが多い。

SPCで用いられることも多い

出資を受けてビルを一棟買う→営業者が入居者を募集→賃貸料の一部を出資者に分配する仕組み(スキーム)


商535条→当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって効力を生ずる契約。


匿名組合契約→諾成・有償・双務契約

組合→複数人が組合を構成

民法上の組合→各組合員に業務執行権、法人格なし

商法上の組合→匿名組合→営業者に業務執行権、法人格なし


営業に関する権利義務→すべて営業者に帰属し、匿名組合員には帰属しない。


         (出資財産は営業者に帰属)

  匿名組合員  →出資→   営業者   ←商行為(営業)→  取引の相手方

         ←配当←

 (有限責任)        (無限責任)

出資額以上、責任なし  営業上負った債務につき


※ 匿名組合には法人格がなく、それがあれば、合資会社に類似。

        会社法上の会社→合名会社、合資会社、合同会社、株式会社

    合資会社(会社)は法人であるが、匿名組合は非法人

    合資会社の社員の責任→有限責任社員、無限責任社員

  匿名組合の匿名組合員は有限責任で、営業に関する権利・義務は無限責任を負う営業者にある。


  民法上の組合は、組合員全員が無限責任で、かつ営業に関する権利義務も組合員全員にある。



  匿名組合員の権利義務

   出資義務

    出資→金銭その他の財産→金銭、現物(動産・不動産・有価証券・無体財産権) 信用・労務出資

   営業請求権

    匿名組合契約に従って、営業者に営業を営むことを請求→営業がなされなければ→匿名組合員は利益の分配を受けることができない。営業者が営業をしてくれなければ、匿名組合員は出資をした意味がない。

   損失填補義務(配当金を受け取る場合)

    出資が損失によって減少したとき→その損失を填補した後でなければ、利益の配当を請求することができない(商538条)。→匿名組合員は損失を分担する→出資がプラスになるまでは、配当を受けることができない。

   「損失」→営業年度における営業による財産の減少額

   「填補」→出資額から分担損失額を減じること

   利益分配請求権

    匿名組合員が営業者に対して、その営業から生じる利益を分配するよう請求できる。

    匿名組合員が複数いる場合→分配についての別段の定めがなければ→各匿名組合員の出資割合に応じて

   損失填補義務

    損失を補填しなければ配当を分配できない→配当を受けるには損失を填補しなければならない。

   貸借対照表の閲覧等ならびに業務および財産状況に関する調査権(営業検査権)

    重要な事由がある場合→匿名組合員は裁判所の許可を得て→営業者の検査

   出資価額返還請求権

    匿名組合契約を終了→匿名組合員は営業者から出資を返還してもらう。

  営業者の権利義務

   出資請求権

   業務執行義務

   善管注意義務

    営業者は匿名組合員から委任または準委任を受けたい受任者


匿名組合契約の終了

 存続期間を定めた場合の期間満了

 契約の一般的な終了原因


 存続期間を定めなかった場合

  →契約解除→6ヶ月前の予告→営業年度の終了時に契約の解除(商540条1項)

   ただし、やむを得ない事由があるときは当事者はいつでも契約の解除ができる(商540条2項)。

 その他の終了原因

  →匿名組合の目的である事業の成功または成功の不能

   営業者の死亡、

   後見開始の審判を受けたこと、

   営業者または匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたこと


 営業者→出資の価値の返還→匿名組合員

     もし、出資が損失によって減少していたら?→残額を返還すれば足りる(商542 条)


仲立人


<仲立人>=商事仲立人(商行為法上の仲立人)


仲立人とは

 →他人間の商行為(他人間で商行為がなされる→他人のうちのいずれか一方にとって商行為であること=B2C,B2B)の媒介(他人間の法律行為の成立に向けて尽力する事実行為=仲立に関する行為→営業的商行為)をすることを業とする者(商543条)


仲立に関する行為→営業的商行為(商502条11号)


自己の名で商行為を業としてなす者→固有の商人(商4条2項)

商事仲立人は商人である(◯)

民事仲立人は商人である(◯)なぜ?→仲立に関する行為は営業的商行為であるし、それを自己の名で反復継続すれば商人であるから。

民事仲立人には商行為法543条以下の規定が適用される(×)


媒介(ばいかい)→他人間の法律行為の成立に向けて尽力(斡旋・仲介・勧誘)する事実行為


            法律行為(AかBのいずれかにとって商行為)

       他人A←ーーーーーーーーーーー→他人B

               ↑

               |(媒介)=事実行為=商行為

               |    →他人間を引き合わせる、見本の提示→契約

              仲立人C


媒介をする者

  媒介代理商→特定の商人のために媒介をする独立の商人 

     ※代理商(締約代理商・媒介代理商)→特定商人のために不特定多数の相手方(顧客)を紹介

  仲立人  →不特定多数の他人のために媒介する独立の商人



仲立人の例

  旅行業者

  宅地建物取引業者(宅建業者)→宅地・建物の売買や賃貸等の取引を媒介する者(商事仲立人・民事仲立人)

  海運仲立業者→海上物品運送契約等の締結を媒介する者

  金融商品仲介業者

  外国為替ブローカー

  結婚紹介業者(民事仲立人)


「他人間の商行為」→他人のうち、いずれか一方にとって商行為


             B2B B2C

  他人(商人)←ーーーー法律行為ーーー→他人(商人または非商人)

               ↑

               |(媒介)

               |

             仲立人(商事仲立人)(商人)



                                       C2C

      他人(非商人)←ーー不動産の売買・賃貸契約ーー→他人(非商人)

               ↑

               |(媒介)

               |

             宅建業者(民事仲立人)(商人) 


               C2C

        非商人←ーーー結婚ーーー→非商人

                ↑

                |(媒介)

                |

             結婚紹介業者(民事仲立人)(商人)



「媒介をする」→仲介、斡旋、勧誘等の事実行為


「業とする」→他人間の仲立を引き受けること(営業的商行為)を反復継続して行う。


仲立契約の法的性質→事実行為の委託→準委任契約(民656条)←委任契約の規定が準用


<仲立人の義務>


 善管注意義務

   他人←ーーー準委任契約ーーー→仲立人

         (仲立契約)

(委任(委託)者)       (受任(受託)者)

        ←ーーーーーーー善管注意義務(民644条)(一般的な義務)


当事者のために給付を受けることの制限

第五百四十四条 仲立人は、その媒介により成立させた行為について、当事者のために支払その他の給付を受けることができない。ただし、当事者の別段の意思表示又は別段の慣習があるときは、この限りでない。


 見本保管義務(商545条)

 (見本保管義務)

第五百四十五条 仲立人がその媒介に係る行為について見本を受け取ったときは、その行為が完了するまで、これを保管しなければならない。


 媒介の際に示された見本とは異なる商品が引き渡されたなど、後々、当事者間で紛争が生じた場合に備え、仲立人に証拠を保全させる趣旨。


 結約書の交付義務(商546条1項)

(結約書の交付義務等)

第五百四十六条 当事者間において媒介に係る行為が成立したときは、仲立人は、遅滞なく、次に掲げる事項を記載した書面(以下この章において「結約書」という。)を作成し、かつ、署名し、又は記名押印した後、これを各当事者に交付しなければならない。一 各当事者の氏名又は名称

二 当該行為の年月日及びその要領


当事者間の後日の紛争を予防し、証拠を保存させる趣旨。


 帳簿記載義務(商547条)

(帳簿記載義務等)

第五百四十七条 仲立人は、その帳簿に前条第一項各号に掲げる事項を記載しなければならない。

2 当事者は、いつでも、仲立人がその媒介により当該当事者のために成立させた行為について、前項の帳簿の謄本の交付を請求することができる。


 仲立人の媒介によって他人間で成立した契約について証拠を保全させる趣旨。


 当事者の氏名等の黙秘義務(商548条)

(当事者の氏名等を相手方に示さない場合)

第五百四十八条 当事者がその氏名又は名称を相手方に示してはならない旨を仲立人に命じたときは、仲立人は、結約書及び前条第二項の謄本に(原本はOK)その氏名又は名称を記載することができない。


   当事者にとって相手方にその氏名・名称を知らせない方が交渉上有利な場合があるから。


介入義務(商549条)

第五百四十九条 仲立人は、当事者の一方の氏名又は名称をその相手方に示さなかったときは、当該相手方に対して自ら履行をする責任を負う。


仲立人が黙秘義務を負っている場合において、当事者の一方が契約の履行をしない場合、仲立人自らが履行の責任を負うことによって、相手方の信頼を保護する趣旨


<仲立人の権利>

 報酬請求権

(報酬請求権)

第五百十二条 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。

 仲立人の受ける相当な報酬=仲立料 仲立人が報酬を受ける特別の要件 (仲立人の報酬)第五百五十条 仲立人は、第五百四十六条の手続(仲立に成功→成約(仲立の成功)→結約書の作成・交付)を終了した後でなければ、報酬を請求することができない。

  契約の成立、効力の発生、結約書の作成・交付が終了してはじめて、報酬を請求できる→成功報酬

2 仲立人の報酬は、当事者双方が等しい割合で負担する。

  委託者でない相手方に対しても、公平に利益を図るべきであり、媒介の利益が委託者でない相手方に対しても及んでいるから。


  民事仲立人は、商事仲立人ではないため、商法550条が適用されない。

  民事仲立人は、商人ではあることには変わりがないため、商512条(一般的な報酬請求権)は適用を受ける。


  →民事仲立人は、委託を受けていない相手方に対して報酬(商512条)を請求できるか?


   判例(最判昭44・6・26民集23・7・12649

  非商人間の媒介をする民事仲立人である宅地建物取引業者が相手方である売主との間で委託または事務管理を行なう旨の明示または黙示の仲介契約の成立を肯定すべき事実関係を認められない限りは、委託者(買主)ではない売主に対して商512条を根拠に報酬を請求できない。

  →委託者でない者に対しては、民事仲立人は報酬を請求できない。



問屋(といや)

 →問屋(とんや)のことではない。問屋(とんや)は卸売業者のこと。


問屋とは→「自己の名をもって他人のために物品の販売または買入れをすることを業とする者」(商551条)

「他人のために物品の販売または買入れをすること」→取次ぎ→営業的商行為(商502条11号)

問屋→固有の商人(商4条1項)

ここでいう物品→有価証券も含む(最判昭32・5・30民集11・5・854)

金融商品取引業者(証券会社)、商品先物取引業者は問屋の典型


「自己の名をもって」→自己の名義で→自己に法律効果が帰属

「他人のために」→他人の計算で→問屋の委託者の損益で→他人である委託者に経済効果が帰属


準問屋→自己の名をもって他人のために「販売または買入れ以外の行為」をすることを業とする者(商558条)


          委託者(他人)(経済効果)

            ↑

(問屋契約 ) |

                ↓

            問屋←ーー売買(販売または買入れ)ーー→第三者

             (法律行為)

             (法律効果)



問屋の内部関係(問屋の委託者に対する義務)

 委任契約(民643条)(商552条2項) → 法律行為の委託→委任 ※実は準用ではなく適用

 代理に関する規定の準用(商552条2項)→ 問屋の行為(取次ぎ)→代理とは似て非なるもの


                                                 問屋はエル(L)字


                                                委託者(他人)(経済効果)

                                                            ↑

                                          (問屋契約 )   委任|

                                                                ↓

                                                             問屋←ーー売買(販売または買入れ)ーー→第三者 

 代理は三角形                                               (法律行為)

    本人                                                          (法律効果)

    ↑ ↖︎                 

    |   ↖️(法律効果)

  委任|     ↘︎

    ↓       ↘︎

   代理人←ーーーー→相手方(第三者)

      (法律行為)


  問題点

   問屋が買い入れた物品の所有権は委託者ではなく問屋に帰属すること

   →問屋が破産した場合、問屋が買い入れた物品は破産財団を構成し、問屋の一般債権者のための責任財産を構成?

   しかし、委託者には取戻権がある(破62条)

   判例(最判昭43・7・11民集22・7・1313)

    →問屋の「権利は委託者の計算において取得されたもので、これにつき実質的利益を有する者は委託者であり、かつ、問屋はその性質上、自己の名においてではあるが、他人のために物品の販売または買入をなすを業とするものであることにかんがみれば、問屋の債権者は問屋が委託者の実行としてした売買により取得した権利についてまでも自己の債権の一般的担保として期待すべきではないといわなければならない。」


  問屋の委託者に対する善管注意義務→具体化→説明義務

  問屋の委託者に対する通知義務→取引の代理または媒介をしたときは、遅滞なく、委託者に対して、その旨の通知を発しなければならない(商557条・27条)

  問屋の指値遵守義務→問屋は委託者の指示に従うことを要し、委託者が販売価格・買入価格を指定した場合には、その指示(指値)に従わねばならない。

  問屋が指値より低い価格で販売をし、または高い価格で買入れをした場合において、自らその差額を負担するときは、その晩倍または買入れは、委託者に対してその効力を生ずる(商554条)

  問屋の履行担保責任→問屋は委託者のためにした販売または買入れにつき相手方がその債務を履行しないときに、別段の意思表示または別段の慣習がない限り、自らその履行をする責任を負う(商553条)


  顧客(委託者)

    ↑

    | ↓ある株式の買い注文

    ↓

  証券会社A(問屋)←ーーーーーーーー株式の買入れーーーーーーーーー→証券会社B

               (ブローカリング=取次業務)


  (履行担保責任)                     (債務不履行=株式を引き渡さない)

  (Bに代わってAが履行をする)

  (Aは別の証券会社から株式を買ってきて顧客に渡す)

     |

     |

      ↓

   自己売買(ディーリング)


  証券会社の業務

     ①ブローカリング業務(株式の売買の取次ぎ)→手数料ビジネス→株式の売買の損益に関するリスクはない。この場合の証券会社は胴元。

     ②ディーリング業務(自己売買=自己資金で株式を売買)※ブラックジャック→トランプを配る人はディーラーであり、カジノのお金(自己資金)で自己責任で客と勝負している。

     ③アンダーライティング業務(株式・社債の引受け→証券会社の営業部隊が時間をかけて分売)


問屋の内部関係(問屋の委託者に対する権利)

 報酬請求権 → もともと委任契約は民法上、原則として無償(民648条1項)

    しかし、問屋は商人→商人が営業の範囲内で他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる(商512条)

  報酬請求権→委託売買手数料

  費用償還請求権(費用を立て替えた場合の権利)(民650条、商513条2項)

  留置権(委託者に対する)→委託者が手数料や立て替え費用を払ってくれない場合、その弁済がなされるまで、証券会社は預かった証券を引き渡さないことができる(商557条、31条)

   被担保債権→報酬請求権、費用償還請求権、利息請求権

   弁済期が到来していること

   委託者のために問屋が占有する物品または有価証券を留置できる。

   ※商人間の留置権(商行為により債権者の占有に帰したものに限る。債務者の所有する物または有価証券であることを要する。)に関する規定は準用しない。

    →問屋の留置権(商行為により問屋の占有に帰したことを要しない。委託者のために問屋の占有する物または有価証券に限らない。)←代理商の留置権を準用

    問屋の顧客は商人とは限らないから。

  介入権→問屋が顧客の注文(取次の委託)を受けたときは、自ら買主または売主となることができる(商555条)→この場合でも、問屋は手数料を請求することができる。



供託権・競売権

  問屋が買入れの委託を受けた場合において、委託者が買い入れた物品の受領を拒み、またはこれを受領することができないとき→問屋は、供託・競売をすることができる(商556条)


問屋の外部関係

 第三者(相手方は委託者に対し、直接義務の履行を請求できないし、委託者に対する抗弁をもって、問屋に対抗することもできない。→問屋の外部関係において、委託者と第三者は関係を有しない。


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われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎By Leo_楠元纯一郎