われらの法学 レオンラジオ 楠元純一郎

われらの商行为法11 運送営業


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オープニングソング「水魚の交わり(魚水情)」

エンディングソング「バイオバイオバイオ(遺伝子の舟)」

作詞作曲 楠元純一郎

編曲 山之内馨



<LeoNRadio日の出 われらの商行為法11(運送営業)>

ラジオ収録 20210116


運送営業

 運送とは→物品または旅客を場所的に移動させること(距離の差の克服)

 商法→社会において必需的な運送の重要性を考慮し、運送契約当事者間(荷送人と運送人)の利益を調整することが目的

 運送契約=請負契約

 物品運送と旅客運送

 物流(ロジスティックス)関係法→運送営業、運送取扱営業、倉庫営業


 運送人の定義→陸上運送、海上運送または航空運送の引受けをすること業とする者(商569条1号)

       →実際の運送を第三者(下請運送人)に委託する者も運送人に含まれる。


 運送人=自己の名で、運送に関する行為(営業的商行為・商502条4号)を業として行う者=商人


 陸上運送→陸上における物品または旅客の運送(商569条2号)

      商法第2編第8章の運送営業→陸上運送(物品運送・旅客運送)

  陸上→地理上の陸上および地中

  旅客→自然人


 海上運送→商684条に規定する船舶による物品または旅客の運送(商569条3号)

  船舶→①商行為をする目的で航海の用に供する船舶→航海船・商船

     ②商行為をする目的でもっぱら湖川、港湾その他の海以外の水域において航行の用に供する船舶(非航海船)

     →それ以外の船舶には陸上運送に関する法令が適用(ただし、端舟、櫓櫂をもってする舟を除く)


  海上物品運送で船積港または陸揚港が日本国外にあるもの→国際海上物品運送法が適用

                 いずれも日本国内の場合→海商法が適用


 航空運送→航空法2条1項に規定する航空機による物品または旅客の運送(商569条4号)

  航空機→人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼飛行機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器

     →適用法→航空法、1929年ワルソー条約、1955年ハーグ改正ワルソー条約、1999年モントリオール条約→航空運送約款


物品運送

 物品運送契約の意義→運送人が荷送人からある物品を受け取り、これを運送して荷受人に引き渡すことを約し、荷送人がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによって、その効力を生ずる(商570条)


   荷送人←物品運送契約→運送人→荷受人

                  (または、船荷証券の所持人等)



 物品運送契約の性質

  運送の委託(申込み)→承諾→諾成契約

  有償契約

  請負契約(民632条)


 運送契約当事者の権利・義務

  荷送人の義務

送り状の交付義務(商571条1項)→運送人の請求により所定の事項(運送品の種類、運送品の容積・重量・包み、個品の数、運送品の記号、荷造りの種類、荷送人および荷受人の氏名または名称、発送地、到達地)を記載した書面

   危険物に関する通知義務→荷送人は、運送品が引火性、爆発性その他の危険性を有するものであるときは、その引渡しの前に、運送人に対し、その旨および当該運送品の品名、性質その他の当該運送品の安全な運送に必要な情報を通知しなければならない(商572条)

    通知義務違反の効果→荷送人の運送人に対する損害賠償責任(過失責任)


  運送人の権利

   運送という仕事を完成したとき、報酬(運送賃等)請求権(商512条)

    →特約があれば、前払請求も可。

    →運送品が不可抗力によって滅失・損傷したとき→運送人は運送賃を請求することができない。

      →不可抗力→当事者双方の責めに帰することができない事由で、一般に、当該事業の外部から生じた出来事で、事業者が通常必要と認められる予防方法を尽くしても防止できない危害

    →運送品がその性質もしくは瑕疵または荷送人の過失によって滅失・損傷したとき→運送人は運送賃の全額を請求することができる。

   立替費用請求権→保険料、倉庫保管料、包装費等

   留置権→運送人は運送品に関して受け取るべき運送賃、付随の費用および立替金についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる(商574条)→留置物と被担保債権との間に個別的牽連関係が必要

   運輸の先取特権→旅客または荷物の運送賃および付随の費用に関し、運送人の占有する荷物について(民318条)


  運送人の損害賠償責任

   民法上→運送という債務の本旨に従った履行をしないときまたは債務の履行が不能であるとき→債務不履行→運送人(債務者)は荷送人等(債権者)に対して損害賠償を負う(民415条)

   ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。←過失責任


   商法上→運送人は、運送品の受取から引渡しまでの間にその運送品が滅失し、もしくは損傷し、もしくはその滅失もしくは損傷の原因が生じ、または運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管および引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、この限りでない(運送契約上の債務不履行責任=商575条)←過失責任

   民法と商法の損害賠償責任規定はほぼ同様、商法は単に民法を明確化したにすぎない。


    運送人は、運送人の受取りから引渡しまでの間にその運送品が滅失もしくは損傷し、もしくはその滅失もしくは損傷の原因が生じ、または運送品が延着したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負う(商575条本文)

    ただし、運送人がその運送品の受取、運送、保管および引渡しについて注意を怠らなかったことを証明したときは、損害賠償の責任を免れる(商575条ただし書)→過失推定責任


 商法の特則

   損害賠償の額→通常損害に限られ、しかも、損害賠償額が定型化(民416条は通常損害・特別損害)


    ①運送品の滅失・損傷の場合→大量の運送品を扱う運送営業の性質から、特別の事情によって生じた損害は除外(民416条2項の不適用)、通常損害に対しての場合における損害賠償額は、その引渡しがされるべき地および時における運送品の市場価格によって定めることとし、市場価格がないときは、その引渡しがされるべき地および時における同種類で同一の品質の物品の正常な価格によって定める(商576条1項ただし書)。


   民法上の債務不履行に基づく損害賠償責任における損害の範囲は広い

    →民416条→①通常損害、②予見可能な特別損害

    しかし、商法の場合、


 運送品の滅失・損傷のために支払うことを要しなくなった運送賃その他の費用は損害賠償の額から控除(商576条2項)。


  →損害賠償額の定型化→運送人の故意または重大な過失によって運送品の滅失または損傷が生じたときは適用しない(商576条3項)。→業界保護のため、ある程度、運送人が過大な責任を負うことのないよう商法は配慮しているが、故意・重過失ある運送人まで保護する必要はない。


    ②運送品の延着の場合→民法の一般原則に従って責任を負う(民416条→通常損害・予見可能な特別損害)→すべての損害を賠償する責任を負う。


   高価品の特則

    貨幣、有価証券、その他の高価品→荷送人がその種類および価額を通知した場合を除き、運送人はその滅失、損傷または延着によって生じた損害を賠償する責任を負わない(商577条)。

     通知がない場合→運送人は免責(運送契約上の特則)→なぜか?→運送人は予期せず、過大な責任を負ってしまいかねないから。

      →もし通知があれば、運送人は、①より慎重に運送したであろうし、②場合によっては、運送の引受けを拒むこともできたであろうし、③そのようにリスクを伴う運送とわかっていれば、運送賃を引き上げたであろうし、また、④保険にも付保したであろうから。→だから、免責されて当然。


   ただし、運送人の不法行為責任は別か?(高価品の特則はあくまでも運送契約上の責任規定の特則だから)


 高価品の通知はないものの、運送人の使用人が高価品と知ってそれを盗取した場合→不法行為責任(民709条)および使用者責任(民715条)は適用可能。←請求権競合説 ※法条競合説は少数説


平成30(2018)年の商法改正(商法制定以来120年ぶりの初めての運送法関係の大改正)

→商法の運送人の責任を減免する規定(損害賠償額の定型化、高価品の特則、責任の消滅に関する規定)→原則として、運送人に対する不法行為責任の請求にも適用(商587条本文)


 高価品→容積・重量の割に著しく高価な物品→小さくて軽いのにたいへん高価→ダイヤモンド



 運送人の責任の特別消滅事由(商584条)

   荷受人が運送品の損傷、一部滅失について異議をとどめずに運送品を受け取ったとき

     →運送人の責任は消滅(商584条1項本文)

      →ただし、直ちに発見することができない損傷、一部滅失について→引渡しの日から2週間以内に通知しなければならず、通知がなければ運送人の責任は消滅(同項ただし書)→もちろん、運送人が悪意でない限り(商584条2項)。

      なぜか?→大量の運送品を低廉な運賃で反復して取り扱う運送人にとっては、運送品の状態に関する証拠を長期にわたって保全することは困難だから、荷受人に速やかに異議を述べることを求め、運送人に調査の便を与えるため。


    責任の消滅(除斥期間)

     引渡しがされた日(全部滅失の場合は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないとき→消滅(商585条1項)


荷受人の法的地位(権利・義務)

 荷受人→運送契約の当事者ではない。しかし→運送品が到達地に到達した場合、または運送品の全部が滅失した場合→物品運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得する(商581条1項)。


    →運送品を受け取ったとき、荷送人によりまだ運送賃等が支払われていない場合→運送人に対して運送賃等を支払う義務を負う(商581条3項)。→荷送人の義務と荷受人の義務との関係→不真正連帯債務


複合運送

 →陸上運送、海上運送、航空運送のうち、2以上の運送を1つの運送契約で引き受ける場合

   <コンテナの普及による>


相次運送

 →1個の運送について複数の運送企業が運送の実行に関与する場合

    ①下請運送

    ②部分運送

    ③同一運送

    ④連帯運送


旅客運送

 旅客運送契約→運送人が旅客を運送することを約し、相手方がその結果に対してその運送賃を支払うことを約することによってその効力を生ずる(商589条)


 旅客運送人の損害賠償責任→運送人が運送に関して注意を怠らなかったことを証明した場合を除き、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責任を負う(商590条)


  損害賠償の範囲→民416条

   ただし、旅客運送約款の特約で損害賠償責任の減免を定めることができる。

しかし、旅客の生命または身体の侵害による運送人の損害賠償責任を減免する特約は無効(商591条1項)。


 旅客の手荷物に関する運送人の責任

  (1)引渡しを受けた手荷物の滅失・損傷→物品運送契約における運送人と同一の責任を負う(商592条1項)→過失推定責任(運送人側に無過失の立証責任があり)<例えば、飛行機の貨物室>

  (2)引渡しを受けていない手荷物(携行品)の滅失・損傷→運送人は故意・過失がある場合を除き、運送人は免責(過失責任)→この場合の立証責任は、旅客側にあり。<例えば、飛行機の客室に携行>




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