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モンゴルに旅したとき、あるお家で夕食をご馳走になった。食事がはじまるとき、失礼な例えだが、洗面器のような入れ物の中に羊の頭部を煮たものが出されて驚いたことがある。その羊の口には「今まで草原で草を食んでいた」と言わんばかりに緑の草がくわえられていた。
その時、当家の主人が
「まず羊の耳を切って下さい」
というのだ。それは食事がはじまる儀式のようなもので、
「この場の主人はあなたです。」
という意味だそうだが、これと同じ意味を持つのが「牛耳る」という言葉だと聞いたことがある。日本に「羊」という動物が入ってくるのが遅かったため、それまでにいた「牛」を使ったのだというのだが、これもまんざら嘘でもなさそうである。
そして、この時出された羊の煮物こそ「羊羹」だったのだ。「羹」という字は「羊」を「火」で煮て、しかもその「羊」は「大」なるものという合成文字だ。まさに「羹(あつもの)」である。
私は七年間、高野山の宿坊で小坊主時代を過ごしたが、その宿坊での精進料理の中に「旬羹(しゅんかん)」とよばれるものがあった。文字どおり季節の旬の食材を煮炊きした料理である。
日本の「羊羹」には動物性蛋白は全く含まれていないが、たとえば羊の胃袋の中に乳を入れて生まれたチーズ文化が、やがて日本では豆腐などの大豆文化に変化したように、長い歴史のなかでそれぞれの智恵が生かされ、羊を煮たものが小豆を煮た、現在の羊羹に変化したのではないだろうか。
本来、イスラムの人たちは、きびしい環境におかれているからこそ、その地を訪れる人をよろこんで迎え入れ、もてなすことが大好きな人たちなのだ。心温かい人たちで、しかも知恵者なのだ。
私たちは知ると知らざるに関わらず、イスラム圏・羊文化圏から、その多くの智恵や文化を頂いているのだ。
合掌
後に「田舎坊主シリーズ」とつながる第1弾です。
田舎坊主シリーズ
「田舎坊主の合掌」https://amzn.to/3BTVafF
各ネット書店、全国の主要書店で発売中です。
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電子書籍版は
・アマゾン(Amazon Kindleストア)
・ラクテン(楽天Kobo電子書籍ストア)
にて販売されています。
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というのだ。それは食事がはじまる儀式のようなもので、
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そして、この時出された羊の煮物こそ「羊羹」だったのだ。「羹」という字は「羊」を「火」で煮て、しかもその「羊」は「大」なるものという合成文字だ。まさに「羹(あつもの)」である。
私は七年間、高野山の宿坊で小坊主時代を過ごしたが、その宿坊での精進料理の中に「旬羹(しゅんかん)」とよばれるものがあった。文字どおり季節の旬の食材を煮炊きした料理である。
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本来、イスラムの人たちは、きびしい環境におかれているからこそ、その地を訪れる人をよろこんで迎え入れ、もてなすことが大好きな人たちなのだ。心温かい人たちで、しかも知恵者なのだ。
私たちは知ると知らざるに関わらず、イスラム圏・羊文化圏から、その多くの智恵や文化を頂いているのだ。
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