鄭南榕自筆の履歴書を見れば、彼が自分の生い立ちを順序よく並べているこ とが分かります。おこなったことのすべては自らの理念を実践することであ り、彼が気にかけたことは、いつも台湾社会の悲しみと一致していました。

彼が生まれたのは二二八事件が発生した１９４７年。幼い時から戒厳令下の 鬱屈とした雰囲気に置かれながらも、彼は絶えずに読書、思考を通じて自分 なりの信念を培ってきました。台湾大学在学中、必修科目の「孫文思想」を 履修拒否したため、卒業証書がもらえませんでしたが、それも気にはしませ んでした。徴兵から除隊後の数年間は就職しましたが、「美麗島事件」と 「林義雄一家惨殺事件」から刺激を受け、反体制の雑誌に寄稿するようにな りました。その後、社会的に言及できない真実をすっぱ抜くために、『自由 時代』シリーズの雑誌社を創設し、関連書籍を出版しました。また更なる良 き台湾社会を作りあげるために、様々な社会運動を呼びかけました。

台湾経済が発展をとげた１９８０年代に入っても、依然として社会は不自由 な状況でした。何か言い間違えただけで即逮捕のうえ投獄され、死刑にされ るケースもありました。国民党政府の限界に挑戦し続ける鄭南榕は、人の言 えぬことを言い、やれない事をやったのです。絶えずに体制にぶつけてこそ、 はじめて制限を突破することができると考えていたからです。

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